6.エピローグ
嵐山、と表札がかかった家の片隅から、少女の声がする。
「うーん、と……」
自室の鏡を見ながら、奈々は慣れないセーラー服に袖を通す。
「これでどう?」
「おー、良い感じだな」
カンナはまじまじとその姿を眺めてから、率直なコメントをよこした。
「馬子にも衣装とは、このことだな?」
「う、うるさいな……」
「褒めてんだぜー。にしてもお前、また背が伸びたんじゃねえか?」
「この前測ったら、一七〇センチだった……」
「……デカいな。胸はからきしなのに」
カンナのセクハラ発言を受け、奈々は顔を真っ赤にした。
「ば、バカ!」
景光を討ち倒した後のこと。
三宅の取り計らいで、奈々は高校に通うことになった。
なにぶん久々のことで、学校という場所がずいぶん新鮮なものに思える日々だ。これまで一度も着たことのなかった制服も、なんだか物珍しい。
「おいおい、そろそろ出た方がいいぜ」
「ありがと! じゃあ行ってきます。留守番よろしくね」
「おう!」
慌てて準備をし、鞄を持って玄関の扉を開けた。
そこにいたのは、光彦と千里だ。
入学手続きの都合もあり学年は二つ違うが、三人は同じ高校へ通っている。
「やーっと出てきた」
「よーし、行こうぜ!」
奈々は笑って答え、二人とともに駆けだした。
「うん!」
彼女はもう、一人ではないのだ。