百合という少女
ガヤガヤとにぎやかな声が聞こえる。夜だというのに妙に明るい街並みには、多くの人が行きかっている。
妖しい光が瞬いているからなのか、大人の雰囲気が漂っている。そんな街の一軒の店の中から一人の少女が外を眺めていた。
「はぁ……毎日嫌になるわね……」
齢15,6といったところだろうか……。この街には不釣り合いなほど若く、この街にふさわしいほど美しく、この街と正反対なほど幼い少女だった。
彼女の名前は百合。この場所に住み込みで働いている。
「百合。お仕事ですよ」
百合の背中にふすまの隙間から声がかかる。
なんだ、ゆっくりできるのも少しだけなのね。などと思いながら百合は一つ息を吐いた。そのため息は妖艶で、見たものを魅了するような、それでいてどこか冷たいものだった。
スーッと開いた戸の奥には一人の男性が立っていた。
百合は彼の名など知。
一つ事実なのは彼が百合の「客」であるということだけだ。
「お待ちしておりました」
そう言って百合は畳に手を付け頭を下げる。もちろん待っていたなどという言葉は嘘だ。名前も顔も知らない人間を待っているはずなどない。
「君が百合さんかな?」
「はい。今日お相手を努めます、百合です。よろしくお願いします」
顔を上げた彼女の顔には笑顔が咲いていた。先ほどまで外を眺めていた時にはなかった温かさがある。
いくら自分の望んでいるものと現実がかけ離れていようと、目の前の人の『相手』になる。それが彼女の「仕事」であるから
ここは吉原
彼女はここで毎日のように「仕事」をさせられている
もう、元の生活に戻ることなどあきらめていた
彼に会うまでは……。
できるだけ妖艶な雰囲気を出せるように頑張ろうとしましたけど、短い序章だと上手いこといきませんね……
より良い文章を目指していきますのでよろしくお願いします。
アドバイスなどお待ちしております。