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諦めました。  作者: コトリ
3/20

諦めました。 3

[ 3 ]


焼けた、木の爆ぜる音と。

頬に感じる熱風と火の粉。


誰かの叫び声と、誰かを呼ぶ声。


( ああ、またこの夢か)


たまに見る、火事の夢。

燃え盛る火の海に佇む私は、

何と言うか、何故か落ち着いた気分である。


理由は、これが夢だと分かっているからと、

もう一つは…


(夢… え、夢!?)



ばちっと目を開ける。

部屋の窓からは、日が差し込んでいる。

(まさか、あれから寝ちゃったの!?)


わたしは、そのまま眠ってしまったらしい。

ベッドの上で、倒れる様に寝ていたためか、

スカートはしわくちゃだった。


(こんな得体の知れない場所で気絶?しちゃうなんて…

信じられない。…何とかして帰らないと…)


(......そうだ、スマホだ!あの時は動転してて…思いつかなかったけど。)


ポケットを探ると、愛用のスマホがあった。

電源は入っており、思わず安堵の溜息がでる。


警察に通報しようとしたその時、わたしは気付いてしまった。

(え…電波がない)


どうして。どうして。室内だから?

(外に出なきゃ!)

部屋の扉に駆け寄ろうとした、その瞬間、


とんとんとん、とノックの音が響いた。


「......弥生様。入ってもよろしいでしょうか?」


男性の声だ。…驚きすぎて、ベッドにへたり込んでしまう。返事をするどころではない。


「...いらっしゃるようですね。申し訳ありませんが、

失礼致します。」

声の主は、扉を開けて滑るように中に入ってきた。


(執事?っぽい服だ。って、え、なに、)

恐らく男性であろうその人は、ドラマでしか見たことがないが、ヨーロッパの執事の様な格好をしていた。


しかし、その人は、首から上が無い。

わたしが固まったまま何も発言出来ずにいると、

執事の様な人は一礼して話し始めた。


「驚かせてしまい申し訳ありません。主からの命で、

あなたをお迎えにあがりました。

…お好きな服に着替えて、朝食にお連れするようにと。」


「主って、昨日のアルヴァーって人ですか?

お願いです、私を自分の家に帰してもらえるように言ってくれませんか!?」


(何普通に話しちゃってんの私!?だめだ、混乱しすぎて思考がまとまらない!)


「申し訳ありませんが、それだけは致し兼ねます。

…そちらのクローゼットに着替えがございます。

私は外に控えておりますので。」


執事の様な人は、一礼して出て行った。



(一体何なんだ、本当に…私の名前も知っていたし。)

妖怪…なんだろうか。少なくとも、人間では無いだろう。


わたしは頭をふりながら立ち上がり、もう一度スマホを覗き込む。

相変わらず電波が入っていないため、電源を落とした。




➡︎ 4

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