諦めました。 2
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どのくらい、走り続けただろう。
もともと体力がある方では無いし、建物が広すぎるせいか、出口らしきものに辿り着けない。
そして、何よりも、
(後ろを振り返るのが怖い...)
あの人はいったい誰なんだ。
ここは何処なんだ?
…疑問は浮かんでくるが、思考がまとまらず、
どうしたら良いか分からない。
(だめだ、もう走れない)
わたしは窓に手を着いて、呼吸を整える。
外は暗く、月明かりも無いため、周りがどうなっているかはわからない。
しかし、ガラスの冷たさが混乱した頭を少しだけ落ち着かせてくれる。
窓には、疲れた自分の顔がうつっている。
深呼吸してからもう一度外を覗き込むと、
ここが建物の3階であろう、という事がわかった。
(出口は無いにしても階段はある…よね)
おでこを窓ガラスにくっつけ、考えてみる。
最悪、窓から飛び降りる事になるか。
そんなことを考えていると、
背後に、ふっと影が落ちた。
真後ろに、『その人』はいるのだろう。
(おかしい、足音がしなかった、なんで、)
わたしが口を開く前に、その人は話をはじめた。
『質問に答えようか?俺はアルヴァー。
さっきも言ったけど、君をずっと探していたんだよ。
…逃げ惑う君の姿を見ていたいけど、もう夜も更けて
冷える。部屋に行こう?』
わたしは思い切り振り返りながら叫ぶ。
「ここは何処なんですか!!私の家に帰して下さい!
......帰してくれないなら、自分で帰りますから!」
『自分の家?...ダメ、せっかく見つけたのに許すはずが無いじゃないか。それに、夜間は危ないから外に出られないようにしてあるよ。明日になったら好きなだけ探検していいから』
そう言いながら、私の手を取って歩き出す。
振りほどこうとしたが、頭がぼーっとしてしまい、身体の自由が聞かない。
気がつくと、とある部屋の中だった。
彼の姿は無い。
扉に駆け寄って開けようとしたが、取っ手が回らない。
(鍵穴が無い...)
他の出入口を探すが、見当たらない。
部屋の中には、アンティーク調の家具とベッド。
ドレッサー等も有り、すべて豪奢な物のようだ。
(新手の脱出ゲーム...?夢であって欲しい!)
周囲に人の気配は全く無い。ひとまず、安心そうだ。
緊張が一気に溶けてどっと身体の重さを感じる。
ベッドに浅く腰掛けると、眠気が襲ってきた。
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