諦めました。【象牙の塔4】
青いアネモネの花言葉は、
「あなたを信じて待つ」
…攻略されパート、始まります。
[ 14 ] -象牙の塔4-
名残り惜しいが、そろそろ戻ろう。
塔の中に戻り、自室への通路を進む。
外は程なく日没した様子で、通路の明かりが自動的に点灯した。
(…今日は、色々収穫があったな。
それにしても、あの庭園はすごい綺麗だった。…また、行こう。)
夕食まで、休もう。
私は自室に到着するとすぐに、ソファに座り込んだ。
しばらく休んでいると、ノックの音と共に、
静かな声がかかる。
「弥生様。夕食のご用意ができました。
…主がお待ちです。」
もう、そんな時間か。私は返信をするとすぐに、部屋から出た。
執事は一礼すると、私を連れ立って歩き出した。歩きながら、私に語りかける。
「弥生様。庭園を復元して頂いたのですね。
…主が、とても喜んでおられます。
本来なら、あの庭園に案内したいとおっしゃっていましたから。」
「あの。本当に夜は外出してはダメなんですか?あそこはとても穏やかで、魔物が出るなんて考えられません。
…夜でも、あそこに行ってみたいです。」
執事は、珍しく饒舌に返事をする。
「庭園を気に入って頂けて主もさぞお喜びでしょう。
…ですが、まだ許可することは出来ません。
万が一、お怪我をされたら主はとても悲しまれるでしょう。
夜間の環境を安定させるために、主は尽力しています。
…すべては貴女の為なのです、弥生様。」
「は、はい…。わかりました。」
わたしの為、とは。いったい何故だろう。
執事に何と返答したら良いか分からずに、
ぎこちなく答えた。
程なくして食堂に到着した。
彼は、中でわたしを待っているのだろう。
少し、緊張する。
食堂に入ると、彼はすぐにこちらに来た。
『弥生。…待っていたよ。
庭園を復元してくれたんだね。とても嬉しいよ…みて、花をとってきたんだ。
君に、似合うと思ってね』
彼は花瓶から青いアネモネを1輪抜き取ると、私の髪にそっと差した。
『…ああ、よく似合っているよ。』
彼は満足気に微笑んだ。
彼の整った顔が目の前にある。
わたしは、恥ずかしさのあまり俯いてしまった。
「あの。わたし…自分でも、どうして庭園が戻ったのかわからないんです。
何にも…してないし。」
口から出る言葉はたどたどしい。
そんなわたしを、彼はくるりと振り向かせる。
『話は食べながらにしよう?せっかくの料理が覚めてしまうから…今日のメインは、ローストビーフにしたんだ。』
テーブルの上には、ご馳走が並んでいた。
➡︎ 15 -象牙の塔5-




