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諦めました。  作者: コトリ
14/20

諦めました。【象牙の塔4】

青いアネモネの花言葉は、

「あなたを信じて待つ」


…攻略されパート、始まります。

[ 14 ] -象牙の塔4-



名残り惜しいが、そろそろ戻ろう。

塔の中に戻り、自室への通路を進む。


外は程なく日没した様子で、通路の明かりが自動的に点灯した。


(…今日は、色々収穫があったな。

それにしても、あの庭園はすごい綺麗だった。…また、行こう。)


夕食まで、休もう。

私は自室に到着するとすぐに、ソファに座り込んだ。


しばらく休んでいると、ノックの音と共に、

静かな声がかかる。


「弥生様。夕食のご用意ができました。

…主がお待ちです。」

もう、そんな時間か。私は返信をするとすぐに、部屋から出た。


執事は一礼すると、私を連れ立って歩き出した。歩きながら、私に語りかける。


「弥生様。庭園を復元して頂いたのですね。

…主が、とても喜んでおられます。

本来なら、あの庭園に案内したいとおっしゃっていましたから。」


「あの。本当に夜は外出してはダメなんですか?あそこはとても穏やかで、魔物が出るなんて考えられません。

…夜でも、あそこに行ってみたいです。」


執事は、珍しく饒舌に返事をする。

「庭園を気に入って頂けて主もさぞお喜びでしょう。

…ですが、まだ許可することは出来ません。

万が一、お怪我をされたら主はとても悲しまれるでしょう。

夜間の環境を安定させるために、主は尽力しています。

…すべては貴女の為なのです、弥生様。」


「は、はい…。わかりました。」

わたしの為、とは。いったい何故だろう。

執事に何と返答したら良いか分からずに、

ぎこちなく答えた。


程なくして食堂に到着した。

彼は、中でわたしを待っているのだろう。

少し、緊張する。


食堂に入ると、彼はすぐにこちらに来た。

『弥生。…待っていたよ。

庭園を復元してくれたんだね。とても嬉しいよ…みて、花をとってきたんだ。

君に、似合うと思ってね』


彼は花瓶から青いアネモネを1輪抜き取ると、私の髪にそっと差した。


『…ああ、よく似合っているよ。』

彼は満足気に微笑んだ。


彼の整った顔が目の前にある。

わたしは、恥ずかしさのあまり俯いてしまった。

「あの。わたし…自分でも、どうして庭園が戻ったのかわからないんです。

何にも…してないし。」

口から出る言葉はたどたどしい。


そんなわたしを、彼はくるりと振り向かせる。

『話は食べながらにしよう?せっかくの料理が覚めてしまうから…今日のメインは、ローストビーフにしたんだ。』


テーブルの上には、ご馳走が並んでいた。



➡︎ 15 -象牙の塔5-

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