第4食「健康ごはん03:一汁三菜」
今回は和食に焦点を合わせてみました。
和食を一話で語る事なんて全然無理ですから、まずはさらっとさわりだけみたいな感じです。
日本の家庭料理の基本。
それは一汁三菜。
汁物一つ、メインの食材一つ、野菜などの付け合せ2つ。それにご飯。
この献立は、見栄え良く、作り過ぎを防止し、栄養のバランスを取るのに最適です。
古くは「本膳料理」に端を発したとされ、それ以前の平安時代から原型はあったというものらしいです。近年、日本のこの食事はユネスコの無形文化財にも指定されて、世界の財産となってしまいました。
でもまあ、正直面倒臭いと思う時も少なくないんですよね。丼物とかに比べたら洗う食器も増えるし、一品一品メニューを考えなきゃいけないわけですから。だから洋食とか丼、麺類などに傾倒することも少なくないです。ただ、バランスを考える際にはとても役に立つ、というのもあって、結局は和食の一汁三菜に戻ってきたりします。
典型的なのは
主菜:魚の干物、煮物、刺身など、魚を主にする動物性たんぱく。焼き物、煮物などの鶏料理、明治以後では獣肉も主菜にあがる機会が増えました。
副菜1:お浸し、煮物などの調理した野菜。冷や奴、納豆、茶碗蒸しなどの小鉢。
副菜2:佃煮などの常備菜、酢の物など。
汁物:味噌汁、お吸い物など。
という感じでしょうか。これに常備菜などを足して一十五菜にすることもあります。
なお、このカウントには香の物は含まないのが普通とされています。まあ、実際には香の物も含めて三菜、なんていうのも少なくはないんですけどね。
あと、ご飯が炊き込みご飯や丼物の場合、それ自体を一菜とカウントする場合もあります。
主菜とするか副菜とするかは微妙なところですが、動物性たんぱく主体ならば主菜扱いになるかな? また、ご飯ではなくうどん、そばなどの麺類が主食の場合、汁物の麺類なら一汁に数え、肉類が入って居たら主菜、菜っ葉などが有るなら副菜に数える。というのもあります。つまり、にしん蕎麦に菜っ葉とかまぼこを入れたら、それだけで一汁三菜の代わりという訳です。お手軽ですね。
(この写真では、乗っている青菜は薬味のネギだけなので本当は微妙かも)
変則的な一汁三菜ではなく、ごく普通の一汁三菜の場合、簡単に作るなら、ご飯は炊くとして、
主菜=干物で、オーブントースターにクッキングシートを敷いて焼く。火力が強いなら上にアルミホイルを被せる。
副菜1=冷奴、納豆などの大豆加工品が簡単ですね。冷凍食品で茹で野菜などもあるので、解凍してだしを掛ければお浸しに。あとは既に切ってある刺身こんにゃくなどもお手軽です。
副菜2=佃煮のパックや塩辛を買ってきておいて出す、お漬物を切って並べるなどで良いでしょう。
汁物=最近はいいインスタントが有りますねー、無添加にしたいならそういうのもあちこちから安く出る時代です。
という事で、徹底的に手抜きできます。ただし、手抜きをするとそれだけコストに跳ね返ってきます。そこら辺はトレードオフですね。
器がたくさん汚れるのが面倒、という方。ワンウェイの使い捨て容器を使う、という手が有りますよ。
ちょっとだけ手間かけていいなら、あらかじめ仕切りの入ったプレートにおかずを乗せれば、食器は汁とご飯とプレートの3つだけ。
逆に、手間を惜しまないなら、前の晩からご飯は浸け置きしたいですね。夏になって暑くなると傷みやすいので注意が必要ですが……。忙しい時には無洗米でもいいと思いますが、米のとぎ汁はいろいろと使えますし、糠には結構栄養も含まれていますので、出来れば自分でお米を研いだほうが良いなと思います。
お米のとぎ汁の代表的な使い方は大根、里芋などを下茹でにする時に使うやり方でしょうか。大根の時は大根の雑味を抑え茹であがりを軟らかくします、里芋はぬめりを抑えて茹でやすくします。類する野菜を茹でるときにもいろいろと使えます。
もう一つは干物を戻すときに使うやり方です。特に鰊の本乾という、カッチカチに干した鰊を戻すときには不可欠です。干物と米のとぎ汁を一緒にジップロックに入れて冷蔵庫で1~2日置いておくと、干物の脂を抑え、柔らかく戻ります。
という風に、いろいろ使える米のとぎ汁が手に入らないのはちょっと勿体ないですね。
汁もののだしは、炒り子で取るならこれも前の晩から。良い炒り子なら丸ごと使う方が味が深いですが、ちょっとお安いのを使うなら、大きめの物を使い、頭を取って、魚を三枚に下ろす感じに背中から割って、内臓と骨を取り除きましょう。そして使う数は一人だいたい軽くひとつかみ、3~7匹(大きさによって加減してください)ですね。昆布一人4cm角位と、料理酒ひとり小さじ1を、一人前250mlの水に漬けこんでおき、翌朝、中火にかけて、沸騰する前に昆布を取り出し、沸騰させたらあくを取りながら2~3分茹でます(これでお酒のアルコールも飛びます)。火から降ろして1分ほどで炒り子を取り出して、後は好きな具を入れて煮て(根菜は薄切りにするか、下茹でしておきましょう)、最後に御味噌を入れて、お好みでねぎや石蓴などを散らせばお味噌汁の出来上がりです。
お味噌の量は、使う種類で様々で難しいですね。分からない時は少しずつ足して、味見をしながら調整するのが良いです。お味噌を入れる際は網状の味噌漉しに入れて、上から専用のお玉や、すりこぎで濾し出します。
お味噌汁に入れる油揚げは、オーブントースターで4分ほど焼くか、両端に鉄串を挿して直火で炙りましょう。程よくあぶっていくと、脂がじゅわっと出てきます。これをキッチンペーパーに挟んで適度に油切をすれば、カロリーを落とせます(ペーパーをケチると油でやけどをするので注意してください)。あとは適当な大きさに切ってお味噌汁に入れましょう。
お味噌汁の具は実に様々です。
代表は、大豆製品、葱、菜っ葉、茸、海藻、根菜類でしょうか。
次点は、魚介類、肉、豆類、瓜類、さつま揚げ、納豆、卵などです。
地域の変わり種としては、揚げ物、海獣、洋野菜、麺類、地衣類、柑橘類、チーズ、大福等々。殆どなんでも入れます。それは、味噌という優秀な調味料の為せる業でしょうか。
ただし、私が冒険して、唯一みそ汁の具として駄目だったものが有ります。それは「皮蛋」。駄目です、最悪な生臭さが前面に出てきます。恐らくは皮蛋に微量に含まれるアンモニア等の臭気成分が悪さをするのでしょう。その他も、中華系の発酵・変性食材は避けたほうがよいかもしれません。
近年言われていることですが、すべてをお膳に出してしまう日本式の食べ方では、一品一品に集中できない、食べているうちに他の器が冷めてしまう。等の問題がある、ついつい脂っこいものなどに先に箸が行ってしまい、栄養の吸収の問題から肥満に繋がってしまう……などなど、いくつかの問題が指摘されるようになっています。それを改善する方法としては、懐石料理の様に一品ずつ出すという手が有ります。これは、割とほかの料理では当たり前の手法で、日本の一汁三菜も未来を見据えて変わっていく必要がるのかもしれないと思っています。
手を抜き過ぎず、手間をかけ過ぎず、という点でまとめると、こんな朝食が典型でしょうか。
味噌汁のだしは炒り子と昆布、ご飯は漬け置き、蕪は皮をむいて米のとぎ汁で下茹でして、あとは葉の部分と一緒にみそ汁の具。ここまでに手間を集中して、西京漬けの鮭はクッキングシートを敷いたオーブンで焼いて、下に大葉を敷いただけ、切り身で売ってある刺身こんにゃく(写真のは柚子味なので黄色)は水晒しして添付の味噌を掛けただけ、納豆は混ぜただけ。という感じです。
そうそう、ご飯を盛りつけるときにテクニックが有ります。まず、炊けたご飯に真っ直ぐしゃもじを入れたら、すくってひっくり返します。これを全体が均等にふっくら空気を含むまで4、5回繰り返しましょう、炊けたままより断然おいしいです。
また、お茶碗に盛る時も、おしゃもじの全体を使うのではなく、全体の1/4位の先端に軽くとり、ご飯茶碗にふわっと乗せる感覚で、3~5回くらいで盛り付けると、お米が立って美味しそうに見えますし、お箸で食べるときにご飯がまとまり過ぎず、丁度いい感じで食べることが出来ます。また、このやり方だと、実際の量より見た目にたくさん食べた気になるので、過食も防ぐことが出来ます。
ダイエット向けの食事、とよく言われますが、偏ったダイエットはリバウンドをして失敗の元です。日本古来からの和食は、適切な盛り付けで食べることで、炭水化物、蛋白質、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどのバランスが取れ、脂分も少なく、肥満の元と言われるグリセミックインデックス、所謂GI値も適度に調整でき、カロリーも控えることが出来ます。また、一汁三菜、一汁五菜は彩り的にもバランスを作りやすく、食事を華やかに出来ます。
よく、食事は肉中心でガッツリガッツリ、というのが好きなお方もおられますが、肉食中心だと体臭も強くなり、便秘になりがちにもなります。また、脂の多い肉を食べていると、当然中性脂肪過多や、肥満などにも一直線となります。日本食の欠点と言えば、筆頭は塩分の摂り過ぎですが、これは保存の為や調味料に塩分が多いのが主要因であり、1~2品を鮮度の良い素材にして、味噌汁もやたらと塩味の濃い物を避ければ、塩分の使用量を下げることが出来ます。日本食の価値は今、世界中にも認められる程です。
一汁三菜はまた、ガッツリの一品料理を食べるよりも、コストも下げられます。食材を多めに買って小分けで組み合わせを変えることで、一食当たりのコストを下げて、目先を変えてご飯を楽しめます。
この連載では、今後もたびたびとこの一汁三菜にまつわるレシピやストーリーを取り上げていく予定です。宜しければ、お付き合い頂けるとありがたく存じます。
さて、次回もゆるっと行きます。
次回はプログラミングとご飯!