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順調。

 部屋増やしてほしいっていってたからツルハシやったら怒ってた。げせぬ。

 空間があらかじめあいていると、その分DP節約できるんだけどなぁ。

 そして相変わらずやることがなく3日が経過した。

 ちなみに山賊はぶつくさ言いながらツルハシで部屋を掘っていた。掘り出した土や石についてはダンジョンの外に捨てていたようだが、途中からダンジョン側でお宝として回収してやった。1DPにもならなかったが、手伝ってやったことで調子をよくしたのかばっちり拡張してくれそうだ。実に単純なやつらだ。


「ん? なんか近づいてきたわ?」


 ロクコがぽつりとつぶやいた。


「山賊じゃないのか?」

「違う感じ。たぶん冒険者かな。山賊たちも気づいたみたい、迎え撃つみたいよ?」

「そうか……十中八九、この前の冒険者が帰ってこなかった件の調査かな」


 唐突だが、ちょうどいい機会だ。俺が考えている山賊殲滅計画について、ロクコに話しておくことにした。

 話しておけば余計なことはしないだろうし。


「わざわざ調査に来てるんだ、こいつらは前に来た冒険者より確実に腕が上な奴らだろう。前のより使えないやつを送り込んで帰ってこなかったらただの無駄だからな」


 山賊からしてみれば、このすっかり最初と様変わりした『ただの洞窟』を見せて帰すわけにはいかない。だから、この冒険者は殺すしかない。

 そして、この冒険者を殺した場合は、さらにその調査なりなんなりで次が来る。

 ……もちろん、用意される冒険者はどんどん強くなる。


 いつまでもつかは分からないが、いずれは山賊が負けるだろう。


 そう、これこそが俺が考えた山賊殲滅計画の全貌だった。

 で、その時まで山賊にこの拠点を放棄させないのが俺の仕事ってわけだ。


 ん? 何もしてないで寝ているだけだろって? いやいやそんなことはない。

 山賊は食糧を得るためにちょくちょく狩りもしており、仕留めた獲物の一部をダンジョンに貢いでくれている。(内臓とか骨といった山賊が食べない部位だが、一応DPにはなる)その見返りとして、洞窟内で効率よく戦える案を箱に書いて教えたりしているのだ。

 もちろん山賊でも冒険者でもダンジョン内で死ねばDPは美味しくいただきますってなもんで一番おいしいのは俺たちダンジョン側である。


 ……ちくしょう、働きたくねぇ……!


 とはいっても、貢物のDPをもらって適当に山賊にエサをやるだけの簡単なお仕事だからまだ良いんだけどね。


「おお……ケーマ、すごいわね! そんなこと考えてたなんて!」

「ああ。ちなみにあのゴブリン部屋な、あれは実はダミーの『ただの洞窟』にするつもりなんだ。 さらに、いざとなればそっちにコアを移して、山賊のことをしらばっくれて『え? 山賊? うちのダンジョンは関係ありませんよ?』ってな」

「へぇ、そうなのねぇ……てっきり侵入者が居たらダンジョンコアからしかモンスター出せないのを忘れてたのかと思ってたわ」


 あ、それは忘れてた。


「と、そろそろ冒険者くるわよ」

「おう、せっかくだから見ておくか」


  *


「お頭ぁ、冒険者が来たぞ」

「おう、予想通りだな、迎え撃つぞ」

「予想?」

「ああ、剣の入っていた箱に、数日以内に冒険者が襲ってくるから守ってね、って書いてあっただろう」


 ちなみに山賊の親分はこのところ字を勉強して、簡単な文なら読めるようになっていた。

 ダンジョンからの手紙(箱なので正しくは手箱?)は簡単な文で書かれてるため、山賊の親分でも読めていた。

 まぁ、ダンジョンからの手紙を読むために勉強してるわけだし読めて当然だ……と山賊の親分は自分の頭の良さを自慢に思っていた。

 このダンジョンを拠点にしてから特に俺は賢くなった気がする、と自負していた。

 ダンジョンから離れたら馬鹿に戻ってしまうかもしれない、とも。



「……そうだな、新入りを使うぞ。うまく殺せたら幹部入りだっつっとけ」

「わかった。俺らは?」

「新入りがしくじったら疲労した冒険者を片付ける。うまくいけばそれでよしだ」


 実際、ダンジョンからはいくつもの戦法を授けてもらっていた。

 新入りを使い、使えないヤツを早めにつぶしておく。これもダンジョンに教えてもらった戦法のひとつだ。


 雨風をしのげ、おたからを溜めこめる拠点がある。それは、山賊としてのステータスである。

 当然拠点がバレたら危ないわけだが、来たやつを片っ端から消していけばバレないだろう……ダンジョンからの手紙にもそう書いてあり、山賊の親分もきっとそうだろうと考えていたからだ。


 ダンジョンの部屋の入り口から入って、死角となる部屋の隅……まぁ、狭いから詰めても左右合わせてせいぜい7,8人が控えるので限界だった。ここに新入りが待ち構えている。

 新入り以外の山賊はダンジョンに増築してもらった左右の部屋への通路で控えてる。いつでも支援攻撃ができるように、だ。


「あれ? ここってすぐそこにダンジョンコアあるんじゃなかったっけ」


 それが、3人組冒険者の一人目の最後の言葉だった。

 新入りのひとりが無防備に顔を出した冒険者に向かって剣を振りかぶって襲い掛かる。


「くらえやぁあ!」


 切れ味の悪い錆びた剣をうまいこと防具の無い首にたたきつけ、首の骨を折って一撃で仕留めることができた。

 やった新入り、あれはチンピラだったか? やたら粋がっていてうるさかった記憶がある。

 一撃入れるまでは黙って動けといっておいたのだが、初めて人を殺そうとしたチンピラには難しかったか。が、初撃で冒険者を一人仕留められた。これは幸運といってもいい成果だ。


「へ、へへへっ! これで俺が幹部だ!」

「ベニス?! ちぃ、山賊かっ! 『スラッシュ』!」

「へ? ごべっ」


 冒険者……剣士の反撃で、新入りの首が半分まで切り落とされた。これは流石に高位の回復魔法を今すぐかけなければ助からないレベル――つまりこいつはもう助からない。不意打ちもクリティカルだったからお相子か。よく手入れされているのか切れ味のいい剣……いや、剣士の腕もいいのだろう、なにせスキルをつかっていた。チンピラがどさりと崩れ落ちる。

 おとなしく死体が倒れ終わるのを見ている間抜けはいなかったが、山賊の新入りたちより冒険者のほうが行動が早かった。


「くそ、スキル持ちか! 畳みかけろ、数で押せ!……ッグ、あぼっ」


 後ろにいた冒険者が放った矢は傷んだレザーアーマーを貫通し、新入りの胸に突き刺さってあっさりと絶命させる。一撃で倒せたと思わなかったのか、頭にもう一本矢が刺さる。高威力の早撃ち。命中精度も高い。後衛の冒険者による弓使いスキルの攻撃か? だが弓使いなら近づけば無力化できると相場が決まっている。通路に陣取っていて動かないあたり、実戦慣れしていないのだろうか。仲間をおいて逃げるわけにはいかない、とでも思っているのか。

 そこからは泥仕合だった。1人欠けたにもかかわらず、良い連携だった。どうやら冒険者は新入りより強かったらしい。スキル攻撃ができる時点でそれは明らか、だが、数には勝てなかった。剣士は囲まれ、弓使いも死体を盾に接近され、倒れた。


 結果的に新入りのうちやたら粋がっていた5人と引き換えに、冒険者3人を始末できた。

 生き残った上で冒険者にトドメをさした新入り……まぁ、その3人のうち2人は返り討ちにされて、1人しか生き残っていないが。運よく冒険者を殺しつつ生き残った元傭兵の新人は、約束通り幹部にしてやるつもりだった。


「これから新人をガンガン増やすからな……まとめ役にちょうどいいだろ。

 生き残ったのは元傭兵と犯罪奴隷か……チンピラはだめだなぁ。

 ……さて、これで部屋ぁ増えるかねぇ? 頼むぜぇ、愛しのダンジョンちゃんよ」


 そして、箱が出てきた。

 書かれていた内容は、『おつかれさま! へや ふやすから そとでてて』だった。

 箱の中身はありがたいことに食糧が詰まっていた。山賊の親分も今まで見たことが無い、甘い匂いのするパンも入っていた。メロンという高級果実の匂いに似ている。……親分は偶然にも、かつて一度だけ、その匂いを嗅いだことがあった。自身が山賊に身をやつす一因として――まぁ、詳しくは語るまい。


 そのパンについては、新幹部に褒美として渡して毒見させたところ、すごい勢いで食べ始め、「こんな甘くて美味いパンを食ったのは初めてだ! これからもお頭に忠誠を誓おう!」とまで言ってきた。

 それは仲間に入ってきたときより真剣な表情で、苦笑せざるを得なかった。


  *


 思ってたより冒険者は馬鹿だったようだ。

 違和感を覚えて斥候役が警戒すれば、山賊の奇襲も防げたかもしれない。

 それとも、所詮『ただの洞窟』だと油断していたのか。奇襲があってもゴブリン程度なら問題ないとタカをくくっていたのか。

 道中でよっぽど危険が増しててここではなにもないだろう、と考えていたとか?

 ……新人が迷子になって遭難したんだろう、っていう考えだったのかもしれないな。

 いずれにせよ、新人が帰ってこなかった時点でもっと警戒するべきだったのに、それを怠ったのが悪い。


「いやぁ、だいぶおいしいわね! なんか山賊がいいやつに見えてきたわ。最近はダンジョンコアも踏まれないし!」

「犯罪者だけどな」


 まぁいい、今回1900ちょい増えて、DPは2951DPになった。……大体山賊が5人で1000、冒険者は3人で900ってとこか。5人分の固定収入は減るが、十分な見返りだろう。


「……要望通り部屋増やしてやるか。左の方はさらにまっすぐ部屋を伸ばそうとツルハシで頑張ってくれてるから、こっちは左右の部屋からそれぞれ奥へ向かって1つずつ伸ばそう。片方は牢屋にしてもいいかもな。……ああそうだ、食糧をサービスしてやろう。メロンパンとか、こっちの世界で食わせたらどうなるのか興味があるな」

「めろんぱん? 何それ。DPメニューにそんなのあるの?」

「あるぞ?」


 俺は『菓子パン詰め合わせ(15DP)』『惣菜パン詰め合わせ(15DP)』『野菜・干し肉セット(15DP)』を『箱(5DP)』にいれ、山賊にダンジョンの外へ出ているようにとメッセージを書き加えさせてダンジョン内へ送り込んだ。


 部屋を増やすのに630DP使うから、残りは2271DP。

 ……10000DPにはまだまだ遠いなぁ。



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