ダンジョン攻略:ボス戦
広い石造りの部屋に、白黒のドラゴンが鎮座している。
ロクコの好きな構図だな、と思いつつ、その脅威を改めて観察する。
光と闇。二つの属性を持つそのドラゴンは、魔力が溢れていた。
おそらく俺の【エレメンタルバースト】を弾いたのも魔力壁によるものだろう。魔国でもそういうテクニックを持っているヤツは居た。
だが、完全に効かないわけではない。連打すれば弾き切れなくなるだろう。
今回でキョウの、それもネルネの姿を借りたこの見た目は最後。であれば、もう最後の最後にやりたい放題しても構うまい。
「ジャッジメントレイ!! ジャッジメントレイ!! ジャッジメントレイ!!」
「!? キョウ様いきなりとばしすぎでは!?」
俺の【エレメンタルバースト】連射に思わず聖女アルカが口を出す。
「ここがラストだ! いいからさっさと倒せ、俺は止まらねぇぞ!! ジャッジメントレイ!!」
「は、はいっ! ナリキン様、行きましょう!」
「うむっ! キョウ殿の援護を無駄にしない……どころか、このままではキョウ殿に全部もっていかれてしまうからな!!」
『頑張ってくださいナリキン様!』
『聖女様、キョウ様に負けるなー!』
『いっけーキョウちゃーーーん! 聖女を抜いて第一婦人になるんだー!』
ならねぇからな!?
と、無茶苦茶に配信越しに声援を受ける。ちなみにカメラは一旦設置型になっている。本気戦闘中のナリキンにくっついていても危ないし、一人称視点だと酔うし見辛いし。
「行くぞっ、はぁあ!! ナリキン斬りッ!!」
『うぉお! 出た! ナリキン斬り!』
『首にこれは大ダメージ!』
ただの振り下ろしである。ガキンッ、首筋、手のひらサイズの硬い鱗に少しだけヒビが入る程度。いや、2属性ドラゴン相手に攻撃が通るのはそれはそれで凄いのかもしれない。
……まぁ赤く塗ったリザードマンくらいなら普通に潰せる威力ではある。
(名前は配信で公募されたものである)
「くっ、さすがドラゴン、硬い!!」
「スイッチしてください、はぁっ!」
ナリキンの入れたヒビにむけ、聖女アルカが的確に槍を突き出した。鱗がバキリと割れ、ぱらぱらと落ちた。
「――ォォオッ!」
「やりましたかっ!」
「いや、まて! 回復している!」
淡い光が割れた鱗にかぶさると、その鱗は綺麗に生えて治っていた。
「光属性は伊達じゃない、ってことか」
「! 来ます!」
コォッ、とドラゴンの口に、闇の玉が現れる。
「今度は闇か……っ!?」
黒い玉そこから黒い小さな槍のような弾が大量に降り注いできた!
バスバスバスバス、と石畳の床に突き刺さる。……? 刺さっただけで、何も起きない?
「……こけおどしかしら」
「危ないぞアルカ! キョウ殿、ジャッジメントレイで薙ぎ払ってくだされ!!」
「お、おう! ジャッジメントレイ!」
ナリキンに言われた通りジャッジメントレイ、もとい【エレメンタルバースト】を床を薙ぐように撃つ。ナリキンと聖女アルカは跳んで避けつつ――大爆発が起きた。
黒い玉のような空間が突き刺さっていた黒槍から発現している。
「ぬぉお!? な、なんだ一体!?」
「これはグラヴィティボム……闇属性王級です! まさかこの量が全部!?」
グラヴィティボム。重力で相手を押しつぶして殺す魔法である。
と、とんでもないなコイツ!?
「! キョウ殿、口を狙って!」
「エレ、ジャッジメントレイ!!」
ナリキンの言葉にまたドラゴンが闇色の玉を口に作っていることに気付き迎撃する。
バチンッ、と口の玉が弾けるように相殺・霧散し、ドラゴンは口を引いた。
「はぁー、こりゃ気が抜けねぇな」
「長期戦になってしまいそうだ。ドラゴンの倒し方か……うーむ、アルカ殿、何か知らんか?」
「……先ほどみたく呼び捨ててくれていいのですよ? ドラゴンには逆鱗と呼ばれる弱点があります。そこを一刺しすれば……あるいは?」
ドラゴンといえば逆鱗、有名な話だ。そこは弱点で、触られると怒るような部位。
「ええい、とにかく俺は攻撃し続ける! あの闇爆弾のブレスも妨害するからとにかくそっちは任せる!」
「了解した。いくぞアルカ殿!」
「……先ほどみたく呼び捨ててくれていいのですよ?」
「いいからさっさとドラゴンを殺ってこい! ちゃんと殺せたらナリキンに呼び捨てぐらいさせてやるッ!」
「あら。言いましたね? うふふ。楽しみが一つできました」
【エレメンタルバースト】以外も混ぜるべきだろうか……
……いや、【エレメンタルバースト】じゃないとMPが足りなくなりかねないな。ジャッジメントレイのように偽装できるのも大事な要素だし。
ファイアボールとかより早くて強い。他の魔法を使う理由がない。
ともかく、魔法で殴り続ける。
ドラゴンはうまいこと角度をつけて受け、弾き飛ばすように受け流している。が、その分ナリキン達の攻撃までは回避しきれず受けるがままになっている。
「……これ、キョウ様の攻撃が一番効くということですね」
「ならばいっそ、これは俺達でキョウ殿の攻撃を避けられないようにアシストするべきじゃないか?」
「では私は左に行きます。ナリキン様は右へ!」
「承った!」
ドラゴンを挟み込むようにナリキンと聖女が動く。
ドラゴンは一匹、頭は1つ。正面からの俺も含めて3方向からの攻めには対応しきれず、正面の俺を見据えている。
「はぁああ!! ナリキン斬り!!」
「地の鎖よ、かの者を縛り付けよ――【ロックバインド】!!」
左右からの攻撃を翼でうけながらも、まだこちらの攻撃を首をうまく動かし弾いて受け流す。
「キョウ殿、懐!」
「チッ、魔法使いに無茶を言いやがる!」
俺は走る。走りながらも【エレメンタルバースト】を撃ち、ドラゴンとの距離が詰まるにつれてその角度はどんどんと『撃つ』より『撃ち上げる』になり、ついにはドラゴンのアゴをカチ上げた。
そしてぐわんと伸びた綺麗な白い喉。その中に、分かりにくいが一枚だけ逆向きについた鱗があった。
「ナリキン様、ハンマーピッケルを使います! とどめを!」
「ああ押し込む! やれ!」
横から聖女がとびかかり、喉元の逆鱗にガチンッとピッケルを当てた。
勢いが小さい。ヒビすら入らない一撃。しかし。
「うぉおおお!! ナリキン斬りぃいッ!!!」
ピッケルの反対側の平らなハンマー部分をナリキンが剣で強引に押し込む。
バキン、ずぶり、とピッケルは喉に深く食い込んだ。
「ゴッァ――」
「おまけだ!! トライ・ジャッジメントレイ!!」
俺はさらに3本の【エレメンタルバースト】を同時に放ち、ドラゴンの喉をデカデカと貫いた。
それはもはや喉を引きちぎり、ドラゴンの首を弾き飛ばすことになった。






































