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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで【コミカライズ13巻 03/25 発売!】  作者: 鬼影スパナ
ゴタゴタ編

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最後の試練:配信開始



「……ここが、例のダンジョンか」


 ナリキンは洞窟の入り口に立っていた。丘に突然に現れている洞窟だ。

 聖女の入った箱を【収納】からそっと取り出す。地面に置いて箱を開けると、胸の前で手を組み、安らかに目を閉じている聖女がいた。


「着きましたよ」

「…………」

「アルカ殿?」

「…………」

「寝たフリですかな?」

「死んだフリです」


 なるほど、棺桶に憧れていると言っていたものな、とナリキンは納得する。

 そもそも聖女の体感では一瞬での到着になっているはずであるので、もうしばらく堪能したいのだろう。


「では引き摺って進みますかな? もう少し死んでいて構いませんぞ」

「折角なので我儘を言わせてください。蘇生は口付けでお願いします。勇者様の伝えた子供向けの物語に、そのような話がありまして……」

「おお。神殿の古文書部屋にありましたな。確か……シンデルナでしたかな?」

「それは別の話で、名前も少し違うかと」


 死んだフリしたままの聖女からツッコミが入った。

 ついでに聖女の知る物語について説明してもらう。


「雪の姫が、王子の口づけで蘇生するのですよ」

「なるほど。……では王子を探してこなければいけませんな」

「おやおや、ここに一人いるじゃありませんかナリキン様。教皇候補、ということは、今は皇子といっても良いでしょう?」

「ははは。では引き摺りますぞ。まず入口に下り階段がありますので相当乱暴に揺れるかと思います。お覚悟を」

「ドキドキしますね……!」


 結果、ダンジョン入口の階段を降りたところで、聖女アルカは自ら箱から出てきた。


「……憧れは憧れのままで良いですね。首が折れるかと思いました」

「そもそも棺桶の中身は死んでいる前提なので、快適性は考慮されないのでしょうな」

「勉強になりました。……吸血鬼のベッドとしての棺桶なら、あるいは?」


 ナリキンの知る吸血鬼は朝日差し込む部屋のオフトンで寝起きしているが、それは言わない方が良いだろう。



 さて。それではいよいよダンジョン攻略である。

 ダンジョンは配信最初と同じような洞窟であった。


「それでは配信を始めます。準備はよろしいかな?」

「ええ。……あら?」

「ん? 何か?」

「……ええ、傷が。傷が無くなっているのです」


 と、聖女アルカは洞窟の壁を撫でる。


「アルカ殿の傷がですかな……?」

「いえ。初配信の時にあったはずの壁の傷です。間違いなくここなのですが、ここにあったはずなのですが。覚えていませんか?」

「……覚えていませんな??」


 むしろなぜそんな傷などを覚えているのだろう。ナリキンは勿論忘れていた、どころか、最初から気付いていなかった。


「私、記憶系のスキルを持っておりまして……ナリキン様。この洞窟、微妙に色々と違います。間違いありません!」

「……まぁ、ダンジョンですしな。そういう事もあるでしょう」

「ぐぬ、確かに……でも、間違いなくあの初配信の、あの場所に違いありませんね! あの傷以外は、そう、このアングル! ナリキン様、そこに立ってください……そう!! そのポーズ! ああ、あの伝説の始まりそのものです!」


 何かに打ちひしがれて感動している聖女。

 ナリキンには分からない。その気持ちが。……リビングアーマーだから人間の心が分からないのだろうか……?


「……あの配信魔道具は記録も残らないはずですが、よく覚えていますなぁ」

「ええ、ナリキン様の試練のその初シーン。忘れるはずがありません」

「ま、まぁ、時間も経ちましたし色々とダンジョンが変わっている可能性もありますので……」

「ハッ、そうですね。記憶が鮮明なうちに絵画に残しておかねばいけませんよね。……芸術系の技能習得はやったことが無いのだけれど、頑張りますね」

「う、うむ? では、そろそろ配信開始ということで」


 ナリキンが魔道具を起動させる。通信された映像が、聖王国はクロマクの町、中央広場に映し出された。

 同時に、その広場に集まる人々の様子もナリキンの方に映し出される。


「うむ。皆の者、見ているか? 聞こえているか? 俺は今、ダンジョンに戻ってきたぞ」

『ナリキン様! ナリキン様の配信が始まったぞー! 聞こえておりまーーーす!』

『聖女様もご一緒だ! 聖女様ーーーー!!』

『きゃーー! 素敵ーーー!!』


 こちらの声が届いているようで、あちらの声も届く。第一の試練であったあの配信が、戻ってきた。


「こちらでは、このように映し出されるのですね。ふふ、感激です」

「うむ。ちなみにあちらでは今回、より大きな画面に映るようになっているからな。ピンと張った白い布に映し出す機能があるのだ、そちらは機能してるかね?」

『はい! しております!!』

「うむうむ。では、今回は洞窟エリアを散歩していこうか。道も分かっているし、明日には次のエリアまで進もう」


 ダンジョン配信をしながら、ダンジョンを歩いていく。

 事前に教えてもらっている情報からして、洞窟エリアはメインではない。さっさと環境部屋の森林エリアに行けとも言われている。


「あ。ナリキン様。あちら見ていっても良いでしょうか? 配信では通らなかった道ですよね」

「アルカ殿。散歩するとは言いましたが、向かう先は奥ですので……」

「ですが、宝箱があるかもしれませんよね?」

「配信もしているので、あまり寄り道は」

「違う道も見てみたい、と、思われるのでは? どうですか皆さん」


 聖女の質問に、配信を見ている民たちは……聖女に肯定的だった。


『確かに見てみたいです!』

『お願いしますナリキン様! 右の方見せてください!』

『どうか! どうかお願いします! 聖女様のお願いを聞いてあげてください!』

「むぅ……! 分かった、分かった分かった。そこまで言うなら行こうじゃないか。ただの行き止まりでも文句を言うなよ?」

「まぁ! ありがとうございます! では行きましょうナリキン様!」


 そういうことになった。

 ……ゴブリンが2匹ほど控えており、他には何もない行き止まりであったが。


「満足したかね? では先に行こうか」

「待ってください、あちらのルートから行きませんか? ね?」

「……これは、前回より攻略に時間がかかってしまいそうだが。皆、早くダンジョンの奥が見たいのでは? なあ?」


 民達に問いかけるナリキン。


『もっと配信が見たいので、聖女様に賛成です』


 ……そういうことに、なった。

 これは苦労しそうである。


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(連載ページ→コミックガルド版
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デジタルダンジョン攻略系お嬢様もコミック連載中ですわー!!
TsDDXVyH
― 新着の感想 ―
マップ埋まってないのにゴールの雰囲気感じたらそりゃ逆走よ 完全踏破せんとアイテム逃す
ダンジョン側と聖女側まじで水と油やねw
ダンジョンが国是な教国のお国柄かな?実際にダンジョン討伐に行ける人ばかりではないだろうから擬似体験したい欲求が強いのかもしれない。 逆にダンジョンに慣れてる層はさっさと深層に行けと思ってるかもね。参考…
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