おにくおいしいです。
後出しではあったが、情報料は払うとしよう。
レオナといえどゆっくり休む権利はある。それを守るのもオフトン教教祖の役目だ。事が済んだら1日はソトをこちらで引き取ると約束した。
『なんかこう、悪だくみとかはするなよ? そういうことされたら二度と引き取れなくなっちまう』
『趣味で錬金術するくらいは許して頂戴。私はかき混ぜられるよりかき混ぜる方が好きなのよ』
『俺達や村に迷惑が掛からないならいいよ。そこは約束してくれ』
『わかったわ』
さて、それはそうと蘇生の術をなんとか……
……
レオナ、蘇生魔法使えるんじゃねぇの?
『なぁレオナ。お前って死者蘇生できる? ダンジョン関係じゃない人間の』
『できるけど、私の方法は混沌の権能を使うから真似できないわよ』
できんのかよ。っていうかなんだよ混沌の権能って……そういや混沌神だったなお前。
『そうだ。蘇生魔法、【リザレクション】のスクロールでも作ってあげるわ。これでお茶濁せないかしら? ただこれ、実際は死体にも少しだけ効果のある回復魔法ってだけの代物で、前提として魂がないと生き返らないのよね』
『太っ腹だなぁ。報酬は計1週間の自由でいいか?』
『交渉成立ね。でも連続1週間で頼むわよ、合計7日だと結局自由時間が……あと本来は【転移】と同様に儀式魔法だけど、ケーマさんならギリ使えるでしょ』
ちなみにカタログでちらっと見たら『リザレクションのスクロール』、2億DPだった。レオナからソトを一週間離すだけで貰えるのは破格すぎる。
【超錬金】で何でも作れるから、DPに頓着しないんだろうな。混沌神と呼ばれるのは伊達じゃない。
「ナリキン。初代聖女から【リザレクション】を教えてもらえることになった。今回に使えるかわからんが、お前も習得しとけ、魔力は足りるかわからんが」
「……マスター。俺はどこをどう驚いたらいいんでしょうか? もはや驚愕を通り越しまして、ええと、そろそろ3周しそうです」
その肩をポンッと叩くロクファ。
「良いことを教えてあげるわナリキン。多分あなたも聖王国の民衆からそう思われてるわ」
「なんと!? 自覚は全くないのですが……なるほど。そういう感覚なのですな」
俺もわりとお前にそういう感覚だからお相子だよね。マスターの威厳的に言わないでおくけど。
ホントなんで教皇になりかけてんのか……
と、部屋に誰かがやってくる気配がした。
足音が部屋の前に止まり、ノック。
「ナリキン様、こちらにいらっしゃると聞いたのですが」
「アルカ殿ですか。どうぞ」
俺達に目配せしてからナリキンが訪問してきたアルカを呼び入れる。
「ナリキン様。私の方で死者の蘇生について少し調べてみて分かったことがあり情報を共有しておこうかと」
「おお! ありがたいですな。こちらも丁度調べていたところです」
「そうでしたか、お役に立てればよいのですが」
そう言ってアルカは古そうな巻物を取り出した。
呪文のスクロールではなく、単なる記録帳のようだ。
「この記録によると、かつては蘇生の儀式魔法があったそうです。伝説級で使い手はほぼおらず、莫大な消費から呪文口伝による伝承もできずに絶えたとのことです」
「なるほど。そのような魔法が……調べてみましょう。ああ、こちらは先ほど【リザレクション】という魔法の習得に目途が立ったところでしてな」
「……」
「む?」
ナリキン、多分アルカが言ってるのってその【リザレクション】のことだぞ。
もうちょっと手心を……いやいいか。相手アルカだし。
「い、いえ、その。さすがナリキン様ですね」
「? はい」
「聖女アルカ。それはそうと、いい加減我々を解放はできないのか?」
「キョウ様、それは……ええと、申し訳ありません」
俺が愚痴のように『さっさと解放しろ』と伝えると、しずしずと謝る聖女。
まぁ権限はないから仕方ないよね。実際テロリストなわけだし。
「ですが、コボルトちゃんにも良い餌を用意しましたので。こちら、ナリキン様ご要望のミノタウロスステーキです。皆さんの分もありますよ、どうぞ」
【収納】からステーキを取り出し、テーブルに置く聖女。
ナリキンの注文通りソースたっぷりでタマネギ抜き。焼きたてですぐ【収納】にいれたのだろう、脂がパチパチと跳ねていた。焼いた肉のいい匂いが部屋に広がった。
コボルトの分はペット用の深いエサ皿に入っている。床に置くべきかテーブルに置くべきか少し迷い、一応テーブルに置いてナリキンに任せた。
「あら、美味しそうね」
「おいおい、いいのか? 光神教ってのは、聖職者でも生臭なんだな」
「? 倒した敵の肉は可能な限り食べるモノですよ。あ、コボルトちゃん以外にはタマネギ入りのソースもあります、お好みでどうぞ」
……そうか、肉を食べるのは生臭坊主とかいうのは日本の感覚か。そういや多夫多妻制だしな光神教。皮肉にもなってなかった。
あとこの聖女、ウチの宿でもお金使いまくって放蕩してたっけな。
「わんっ!」
と、ニク憑依中コボルトがステーキを前に嬉しそうに鳴いた。尻尾がぶんぶんしている。
ステーキを置いたテーブルに座り、ナプキンを首につけ、ナイフとフォークを構える。
ちらっと俺を見てきた。
「待て、待てだぞ」
「……じゅるる」
「……」
「……くぅん」
「よし!」
「わんっ!」
フォークで肉を突き刺し、ナイフを使わず一口でがぶっと口に収めた。
待ったことで程よく冷めており火傷することなくはぐはぐと噛めている模様。
「ほう。妙に文化的なコボルトですね。それにキョウ様のいう事をよく聞いている。躾が良く出来ているようで。ナイフは意味がなかったようですが」
「かわいいでしょ? さ、私達も食べましょうか」
ロクファもステーキを食べ始める。
「はぐっ!? くぅん……」
「あら、先に食べ始めちゃったのを気にしてる? 良いのよ、ふふふ」
油とソースのついた口元を拭いてあげつつ、撫でるロクファ。もふもふ。
「あら、キョウは食べないの?」
「……ああ。毒が入っててもおかしくないしな。全滅しないように俺は自前の食料を食べとくよ」
全員がすんなり食べるのも逆に怪しいだろう、と俺は【収納】からサンドイッチを出してモグモグと食べる。うん、キヌエさんのサンドイッチは美味しいなぁ。
聖女アルカをちらっと確認するが、別段気を悪くしたりはしていない模様。
「ではキョウ様の分はコボルトちゃんにあげましょうか。今食べなくても、【収納】に入れておけば温かいままですからね」
「わん!」
「ふふ、可愛い」
コボルトが聖女に尻尾を振っている。……お肉美味しかったらしい。
……これはNTRというやつかも……なんてな。帰ったら本体の方にハンバーガー食わせてやるから待ってろよ?





































