なんやかんやして一週間。
ワタルをどうにかしようとしていた連中は、なんやかんや壊滅した。
……なんやかんや、という点については、なんやかんや1週間くらいかかったので俺とロクコは宿でのんびりしたり、神社に散歩に行ったり、食べ歩きしたり、村の様子を聞きに【収納】ダンジョンでソトと会ったりした。
なんでも「せっかく四天王がいるので、色々働かせてます! パパとママが帰ってきたらビックリしちゃう凄い物作ってます!」とのこと。
得意げな顔をしていて具体的には教えてくれなかった。まぁ子供の隠し事をそっと見守るのも親の務め、なんだろうか? 詳しくは聞かずに帰った時の楽しみにしておくことにしたが……ちょっと不安なのは気のせいだろうか。
きっと気のせいじゃないんだろうな。多分。
変な銅像とか建ってたら打ち壊すのも吝かではない。
さて、謎の裏組織を謎のままに壊滅させたワタルは、ネルネに「よくできましたー」とナデナデデレデレしつつされつつ「あっ、そういえば」とこちらに声をかけてきた。
「ケーマさん、ワコークのミカドが謁見させてくれるらしいんですけど、行きます?」
「え? 嫌だけど?」
「結構名誉なことらしいんですけど」
「嫌だけど?」
「ケーマさんも行きましょうよ」
「行ってらっしゃい。おにぎりでもお土産に持っていってやれよ」
「断るのは断るので結構問題になりますけど」
「俺みたいな礼儀も知らない平民がお偉いさんの前に出るのはあまりにも畏れ多くてな」
「ケーマさん男爵とかじゃありませんでしたっけ?」
「貴族の礼儀とか一切知らないから平民と変わらねぇっての。Sランク冒険者の勇者様と一緒にするなよ」
まったく。俺がなんかやらかしたら外交問題になるぞ。
……
はっ!? そうか、外交問題になったら今回の功績と引き換えてもらえば……チャラ!?
「気が変わった。外交問題を起こしに会いに行こうか。今回の功績が打ち消せる程度に程々の外交問題を」
「なるほどそう来ましたか」
外交問題を起こすのが嫌なら俺を誘えない。俺を誘えば外交問題を起こす。どっちに転んでも俺の勝利……!
しかしワタルは一切躊躇することなく俺を連れていくことにしたようだ。
「じゃ、行きましょうか」
「……」
「ネルネさんとロクコさんもご一緒にどうぞ」
「え? 私たちもいいの?」
「ええ。どうぞお連れくださいとのことで。あ、魔法のスクロールいただけるそうですよ」
「ふむー。ではー、ご一緒させてくださいなー」
うん、なんでネルネ特効の誘い文句を……
もしやワタルも自分の功績を投げ捨てようっていうのか?
ともあれ、俺達はミカドに謁見することになった。
ミカドへの謁見に際して、一応身嗜みを整えるべきなのだが――
ここはあえて!! ジャージで行く!!
「ダンジョン産の服ですよね。冒険者としては礼装ですよ」
「え、そうなの?」
「そうなんですよ。よほど露出が高いとかなら別ですが、ビキニアーマーまでは許容範囲だそうです」
それもうアウトな方を探す方が難しいレベルの話じゃないか?
「一般人がビキニアーマー着ていたら問題になるかもしれませんが、なにせケーマさんはヤマタノオロチを2回倒した英雄なので。ええ」
「ぐぬぬ……!? 手ごわいな……」
さすがにビキニアーマーは着たくない。男のビキニアーマーとか誰得なんだよ。
というわけでワタルの引く人力車に乗ってミカドのいる屋敷へと向かう俺達である。
わざわざ首都に行ったりする必要があるのかと思ったのだが、どうもこの町に来ているらしい。
「結構気さくな方でしてね」
「へぇ。面識あるんだな」
「前にお米を納品して以来の国賓扱いですよ。あ、先日の組織はその関係で僕を狙っていたみたいでして」
「お、おう。それはそれで大変だな」
「まったくです。ケーマさんがいてくれて助かりましたよ」
ワタルがそう言うってことは、やはり色々と【超幸運】が働いていたんだろうな。
……もしかして、このミカドへの謁見も……?
可能性は高いなぁ。
ワタルの人力車に3人で乗りつつ雑談していると、すぐにミカドの居る屋敷へとたどり着いた。
神社か何かかと見紛うほどの、大きな木造瓦屋根の平屋敷。街中にこれだけの屋敷を持っていてしかしそれが別荘として使っているというのは権力と財力の表れと言えるだろう。
屋敷の正門前には金髪のちょんまげ頭な門番が2人立っており、ワタルが人力車を引いているのをみてギョッとした表情を浮かべていた。
「ワタル様!? こちらで用意した迎えはどうされました!?」
「ああ、僕が走った方が早かったので」
「その、車に乗っている方々は……?」
「事前に言っておいた同行者です。問題ありませんよね?」
「ええと、も、問題はありませんが。……あの、後ろの方々? ワタル様とはどのようなご関係で?」
恐る恐るこちらを探ってくる門番。
「恋人ですねー」
「大金を貸してる関係かな」
「ワタルはうちの宿の常連客ね」
「……???」
「ケーマさんとロクコさんはお友達です! あ、ネルネさんは恋人ですけどね」
「は、はぁ。……ええと。ワタル様? お金にお困りでしたら工面していただけると思いますよ?」
「ああ。大丈夫です。借金も僕とケーマさんの大事な絆。手出し無用ですよ?」
俺は別に一括で支払ってもらってもいいんだが?
「あ。引き役交代しますよ。車はこちらで置き場まで運びますのでワタル様もどうかこの辺で」
「いえいえ、ここまできたら最後までやらないと気持ち悪いんで」
「いやいやいや、大切なお客様にそこまでさせて見ているだけでは我々の首が飛びますから」
「いえいえいえいえ。こうして声をかけてくださいましたし、僕がきちんと証言しますんで」
「いやいやいやいやいや……」
「いえいえいえいえいえいえ……」
……どうでもいいから早く降り場まで行ってくれないかな?
(多分この隙に色々した結果、数話前のソトサイドの状況になります)
(以下お知らせ)
『あとはご自由にどうぞ ∼チュートリアルで神様がラスボスを倒しちゃったので私は好き放題生きていく∼』のコミカライズがニコニコ静画に上陸しました。
公開ページ→ https://manga.nicovideo.jp/comic/70890
塗り忘れか? みたいな修正から漏れたのとか、今のうちにみといた方が良いですわよ。
コメントも宜しく!!