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ヤマタノオロチ討伐



 そして俺とワタルは、ヤマタノオロチの出たという村にまでやってきた。


 江戸時代の農村といった印象だ。木造建築と土壁の家がちらほらあり、畑が広がっている。モンスター被害を少しでも抑えるためか簡素な柵がある。


 が、その柵が大きな何かを引きずって潰されたように一部ひしゃげており、その先には家屋の燃えた跡もある。

 柵の壊れ具合から、丁度馬車くらいの大きさだと思われる。……全体では象くらいだろうか?


「これがヤマタノオロチの跡ですかね?」

「結構大きい……いや、ヤマタノオロチの普通の大きさは分からないけど」

「うーん、僕の見立てだと、ヒュドラより二回りくらい大きいですね」


 それから村長に話を聞くと、やはりそこがヤマタノオロチの被害があった場所だった。

 曰く、ヤマタノオロチは家屋を襲い、そこにあった食糧を食べて帰っていったらしい。家の住人は丁度出かけていたので無事だったとか。

 そして、それから何回か柵を直したものの、潰されているらしい。


 今は壊された家屋に食料を貢ぎ物のように置いて凌いでいたんだとか……


 それ餌付けしてね? 色々と逆効果じゃないかな。それでも人的被害が出るよりはマシだし、根本的解決――勇者到着までの時間稼ぎ、ってことなら正解か。


「ケーマさんも戦ってくれますよね?」

「俺ただの付き添いだから何もする義務ねぇよな、ワタル?」

「後ろからあのビーム打つだけでいいんで!」


 【エレメンタルショット】な。一応俺の切り札の一つなんだぞ。それだけで倒せちゃったらどうするんだよ。勇者ただ来ただけになっちまうぞ。


「で、これからどうするんだ? 山に探しに行くか、それともここで待ち伏せするか」


 大きな物体が引きずられたような跡は、森へ、山へと続いていた。目標がデカいだけに、追跡も簡単だろう。


「ケーマさんはどっちが良いと思います?」

「貢ぎ物に毒入れて帰るか。早く帰って観光再開したくない?」

「わかりました、山に探しに行く方ですね」


 僕も早くネルネさんとデートしたいので。と、ワタルと共に山に入ることになった。俺は別に留守番で良かったんだけどね……



 と、山に入っていく。巨体が通った跡で、木や草が相応に押しのけられていた。


「さて、どこまで行くことになるのやら」

「歩き疲れたし俺は帰っていいかな」

「背負いますので乗ってください。こんなこともあろうかと背負子(しょいこ)を借りています」


 用意周到だな。前にイグニを倒しにツィーア山に登った時を思い出すぜ。


「後ろの警戒は任せますよ!」

「急に振り向いて俺を盾にしたりするなよ、俺はか弱いんだからな」

「はっはっはっ、ご冗談を。ロクコさんからあの毛布借りてるんですよね?」


 チッ、バレてたか。『神の毛布』があれば鉄壁だ。十分盾足りえるよな。

 ついでに状態異常もすぐ治るので酔いも起きない。



 そんなわけで、俺はワタルに背負われて、森の中をガンガン運ばれていく。


「お、それっぽい洞窟がありますよ」

「ふむ」

「入りますねー」

「躊躇しろよ!?」

「え? する理由がありませんが? ケーマさんも居ますし」


 ワタルの俺に対する信用は一体なんなのか。

 ちょっと勇者を飼いならし過ぎたのかもしれんな……?


「おっと」


 と、そこでワタルが急に足を止めた。俺はがつんっと背中側に叩きつけられる。

 毛布の効果で痛くもないが少しびっくりした。


「急に止まるなよ! 俺を背負ってるの忘れたのか?」

「あ、すみません。それと大声は止めた方がいいですよ」

「あん?」


 振り向くと、そこは部屋になっていて、巨大な蛇――しかも8つの頭を持つ、ヤマタノオロチが居た。

 ……どうやらこの洞窟は巣穴だったらしい。不思議と明るいあたり、もしかしてここはダンジョンでもあるのだろうか。


「このまま埋めるってのはアリでしょうか?」

「蛇だし、掘って出てくるだろ。倒した方が良いんじゃないか? まぁ俺はここで見てるからがんばれ」

「いやいや、こういうのは魔法使いがまず一撃入れてそれから剣士が突撃でしょう」


 それもそうか。と、ワタルの背から降りて、部屋の外から狙いを付ける。


「――【エレメンタルバースト】」


 ヤマタノオロチに光の帯が向かう。


 おっと、気付いてこちらを向いたぞ。

 おおっと、胴体に大穴が空いたぞ。

 ……おおっと、倒れたぞ。

 …………


「よし、今だ! いけワタル!」

「いやもう倒してますよね?」

「いいから行けよ。ここで行かなかったら俺だけで倒したことになっちまうだろ」

「いやいやいや」


 くそう。ヤマタノオロチとか大層な名前しといて一撃とか予想外にも程があるだろ!

 おかげでまたワタルに功績を押し付けられない!


「ていうか今のヤバいですね。僕でも避けきれそうにないんですが」

「ああ。まぁショットの方がこれを制御するために作ったやつだからな」


 尚、消費魔力は同じである。気持ちショットの方が多いかもしれない。


「……ともあれ、これで一件落着ですね?」

「かなぁ。あっさり終わりすぎな気がするぞ。ほら、ツガイだとか親子だとかそういうのあるんじゃないか? な?」

「あるといいですねぇ」


 あったら次はワタルにやらせようと思ったのだが、結局ワタルは何もすることなく終わってしまった。

 ヒュドラの方が回復してくるし毒まき散らすしで強かった可能性すらあるな。



 と、こっそりDPカタログを開いてヤマタノオロチについて調べてみると、今倒したやつは多分幼体だった模様。

 1年かけて育てれば超回復力に高防御力、高攻撃力の凄いモンスターになるはずだったらしい。

 成体は10倍の価格だったので、ケチって幼体を出したに違いない。


 ……それでも結構なDPがかかるため、きっとここのダンジョンコアは泣いていい。



(以下お知らせ)

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新作、コミカライズお嬢様ですわー!!
TsDDXVyH
― 新着の感想 ―
[一言] 650番…かな?
[一言] 空想科学読本によれば、八岐大蛇さんは全長20m以上で8つの頭があるヒュドラですから(笑)
[良い点] あっさりしすぎた討伐依頼終了が何ともケイマらしいと言うべきかそれとも? 物語として深みが出ないと嘆くべきなのか? 難しいところですね。 [一言] 日本的な光景と日本的なモンスターはいいの…
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