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エチゴヤ


 ワタルの案内でパヴェーラにいるワコークと取引のある商人の元に向かう。

 ゴーレムに馬車を引かせていたので結構目立っていたが、ワタルが御者台に来たので何の問題もなく進む。ちょっと変わった馬車だけど、まぁ勇者のだしな……という感じでスルーされるのだ。


「あ、ここですね。ワコーク商会です」

「そのまんまじゃん」

「国の名前を背負っているだけあってちゃんとした商会ですよ」


 外見的には、パヴェーラの他の建物同様に白い四角い建物で、看板だけ『ワコーク商会』とデカデカ書かれている。


「意外と地味な見た目だな」

「基本的には小売りとかしてないので、これで十分だそうですよ」

「なるほど」


 ワタルは前々から特別に小売りしてもらっていたらしいが。勇者特権の一つだな。


「鰹節――正確にはカツオではないですが……鰹節とか昆布とかですね。そして、こちらからは少量ですがゴレーヌ村のダンジョンで獲れた米を卸してます」

「へぇ、米を?」

「ワコークは米の入手が国を挙げての悲願でしたからね。かなり高く売らせてもらいました。ケーマさんへの借金返済にも大助かりでしたよ!」

「あれ? でもワタルにも結構高く売ってたよな……アレより高く売れるのか」

「ええまあ……あっ! 僕の交渉あってのことですからね!? 販路割り込まないでくださいよ!?」


 まぁいいけどね。今のところ金に困ってないし。



 店の中に入ると、そこには金髪で浴衣を着た男が居た。

 浴衣はともかく、そこ、黒髪じゃないんだな……とは一瞬思ったけど、黒髪は珍しいんだった。


「おお、ワタル様! いらっしゃいませ!」

「や。お久しぶりです。今日はかねての約束通り、ワコークへ運んでもらおうと思いまして。あ、こちらは同行する連れです」

「ええ、ええ。かの御方から伺っていますとも。しかしお連れ様にも黒髪の方がいらっしゃるとは素晴らしい!」


 商人はニコニコと俺達を、いや、俺を見る。


「こちらはケーマさんです。ゴレーヌ村の村長ですよ」

「! あのゴレーヌ村のですか、これはこれは! ワコーク商会のエチゴヤです、どうぞよろしくお願いします、ケーマ様。それにお連れの方々も」

「あ、はい。よろしく」


 挨拶しながら握手を交わしていく。

 エチゴヤて。越後屋か? ワコークのエチゴヤ……


「いやぁ、流石商人って名前ですよね! ケーマさんもそう思いますよね?」

「うん? そうなのか。元ネタがあるなら説明してくれよワタル」

「おや? ケーマ様は勇者様ではないのですか? その御髪(おぐし)、見事なニホン黒だと思いましたが」


 ニホン黒。曰く、日本人の黒髪の色を指しての誉め言葉的な表現らしい。ワコークでの。


「ああ、親が日本人でな。遺伝だよ」

「そうでしたか! それはそれは。あ、ちなみに我々ワコーク人も、祖先が勇者なのですよ」

「まぁワコークの祖先の人は欧米の方だったらしいですけどね」


 日本好きのアメリカ人で、異世界に来て日本にもう行けないと嘆きつつ『和国』を自分で作っちゃったらしい。なんという日本オタク。


「尚、アニメとかより時代劇の方が好きな人だったみたいで、話を聞くにワコークは江戸っぽさが凄いそうです!」

「うん、まぁ江戸っぽさと言われても困るが? それで、船にはいつ出るんだ?」

「ワタル様待ちでしたので、すぐ行きましょう。話は船上でたっぷりできますし」

「あ。そうなんですね。お待たせしてしまいまして」

「いえいえ! ワタル様は特別なお客様ですからね、この程度当然ですとも!」


 というわけで早速船に向かう。

 港にあるワコーク商会の木造船は、なんとなく他の船と異なり和風な感じがする。


 船に乗り込むために板を準備するエチゴヤを見つつ、船を観察する。

 ……他の船が『樽』だとすれば、ワコーク商会の船は『桶』みたいな感じだ。


「……先頭とかが地味で特徴的だな? シンプルというか、ザ・木材っていうか」

弁材船(べざいせん)とか千石船(せんごくぶね)とか呼ばれる和船ですね。こちらは船に竜骨が無いつくりになっていて、お尻に水押板という大きな舵がついているのが特徴です。あと底が平らなので浅瀬に強いという特性もあります」

「ほぉー」


 また、板材にエルダートレントを使ってるので強度は抜群らしい。

 そうそらんじるワタルを、ネルネが褒める。


「おおー、ワタルさんー、おふねに詳しいですねー?」

「フフフ、実は日本史とか得意科目でして。まぁ異世界だと全然活用する場がありませんでしたが!」


 そういやワタルは高校生の時にこっちに召喚されたんだったな。


「ちなみにー、船に関連する魔道具とかはー?」

「あ、こちらの船ですが実は風や水の魔道具を使って航行するんですよ。風がある時は魔石節約に帆を使ってるそうです」

「おおー、それもっと詳しくー」

「ワタルー、ネルネー、早く乗らないと置いてくわよ?」

「あ、待ってくださいロクコさん! ネルネさん、詳しいところは乗ってから話しましょう!」


 話している間に板が置かれていた。一足先に船に乗り込んでいたロクコを追いかけ、俺達も乗船する。

 と、かくして俺達はワコークへ向けて出港した。


(ストーリーはのんびり進行ですが、コミカライズのお知らせとかしたのか忘れたのでしておきますね。

 現在58・59話が無料公開してますわ!

 

 https://comic-gardo.com/episode/3269754496561202804 


 というかKADOKAWA系列のが落ちててニコニコ静画の方のがみれないのだがー!!

 コメント付きで見れるダンぼるがぁー!! がんばれニコニコー!!)

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新作、コミカライズお嬢様ですわー!!
TsDDXVyH
― 新着の感想 ―
ワタル待ちしてた船をワタルを置いて出港させようとするロクコつえーな まあ、実質ワタル抜きでも何とかなりそうではあるか
[一言] 頑張れニコニコー!!
[一言] いまだに地味に主人公にジャブを放ち続けるワタル
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