表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

578/622

ギガプラント


 お茶会の現場からアンブロシアを持ち帰った俺。


「おお! あったのか、アンブロシアが!」

「へぇ、こんなに。……依頼分は余裕だな」

「ご主人様! こんなにあるなら1個くらい食ってええよなッ!? なッッ!?」


 おうおう、食べろ食べろ。ひとつくらい問題ないよ。


「うま。ジューシーやなぁ! なんかこう、力がみなぎる感じやね」

「……俺らも食ってみるか? ムゾー?」

「ああウゾー。半分ずつ食べるか」


 ついでに俺も一つ食べてみる。……普通に梨っぽいな。甘くて美味い。

 少し栄養ドリンクのような薬っぽい風味もある。……風邪薬のシロップみたいな?


 ウゾームゾーもごくりと飲み込んだ。


「ご馳走さん。身体に染渡るなぁ」

「ちなみにアンブロシアの他に何かあったのか? 不可解な気配の正体は知りたい」


 ムゾーの発言にどうこたえたものか一瞬だけ考える。


「……ドリアードかなんかの、植物の精霊がいたな。そいつにアンブロシアを貰ったんだ」

「ドリアード! なるほど、納得した」

「交渉でアンブロシアを貰えるもんなのか。すごいな」


 まぁ大体本当の事だ。219番も元は植物系モンスターで、ダンジョンコアだから精霊みたいなもんだ。実際イッテツとかは精霊だし。嘘じゃあない。


「で、アッチは行き止まりだ。こっちに行こうか」

「む、そうか。了解した」


 219番からおススメされたボス部屋へと向かう。


「……なにやら今度は強敵の気配があるな」

「うん、まぁそれほど強くないらしいぞ?」

「む、知っているのか?」

「アイヴィジャイアントより少し強いくらいだから勝てるらしいぞ。精霊曰く」


 そして精霊と言い訳にしたのがここで生きてくる。

 じゃなきゃ「何で知ってるんだ?」ってなるところだったもの。別に言わないでボス部屋に突っ込んでもいいんだけどさ。


 そして、部屋はとても広く――中には、ツタのもじゃもじゃした巨大な球があった。ウチの宿よりデカい。正面にはぱぁっと大輪の花が咲いていた。直径4mはありそうな巨大な赤い花。おしべとめしべと合わせて、まるでパラポラアンテナのように見えた。

 ……あれがボスか?


「あ、あれは……ギガプラント!」

「知っているのかムゾー!」

「ああ。あいつはギガプラント。あれで一個の生命体――いや。あいつは内部に植物モンスターを内蔵しているからそうでもないか? まぁとにかくデカいモンスターだ」


 ギガプラント。植物モンスターを産み出してくる巨大な植物。

 それは植物(プラント)工場(プラント)、というダブルミーニング、いや、植物を育てる植木鉢(プランター)も含めたらトリプルミーニングなモンスターだった。

 それらは語源的に同じなわけだが……異世界でも同じなのかな? まぁそれは今はいい。


 問題は、まさに工場の如くその内部から植物兵士(ソルジャープランツ)やら、自爆草(クレイモア)砲戦花(ホウセンカ)やらウォーカクタスにアイヴィージャイアントといった植物モンスター達を産み出してくるということだ。


「……とりまきの無限湧き、ってことか」

「そうなるな」


 と、ギガプラントがこちらに気が付いたのかぐぉんと稼働音のような唸りが聞こえた。


 ……倒していいようなことを言っていたし、倒してみるか……まぁ、死にそうになったとしても【超変身】がある。いざとなったら全員【収納】にぶち込んで逃げればいい。

 さすがにロクコの手前、逃がしてくれる、と思いたい。


「逃げるかムゾー」

「そうだなウゾー」


 んん?


「え、だってこの先に用があるわけでもないし。な、ムゾー?」

「だな、ウゾー。アンブロシアも十分あるしな。戦う理由がないだろ?」

「……お、おう。確かに」


 俺達がそう言ったのが聞こえたのか、ギガプラントはびくんと焦ったように花を咲かせる。そしてそれが一瞬でしおれたかと思えば、そこにはアンブロシアが生っていた。

 なんとなくギガプラントが得意げにそれを見せつけているように見える。


「……あ、ほら。なんか報酬を用意してくれたぞ?」

「いや十分あるし。な、ムゾー?」

「欲をかくとロクなことにならないぞ? 引き際が肝心だな。ウゾー」

「……ウチはあれ食べたいけどー?」


 イチカの意見は無視された。


「命あってだからな……」

「ここで無茶をするようなら俺達は生きてないさ。いやまぁ、魔国(あっち)では無茶をさせられたわけだが……同僚の支援が(あつ)かったしな」

「大変だったんだなぁ」


 まぁ俺も倒すとまでは言っていないし、219番も倒せとは言っていなかった。

 危ない危ない。無駄に働いてしまうところだったぜ……!!


 んじゃ、帰るかぁ。と、引き返そうとしたときだった。


 ギガプラントの体からもぞりとラッパ銃のような筒状の花弁をもった花型モンスター砲戦花ホウセンカが何個も咲き乱れ、種を飛ばして俺達を攻撃してきた。

 わぁ、陸上戦艦っぽい。俺は無詠唱で壁を作って種を防いだ。


「うおっと。ありがとうケーマさん。急いで離れよう」

「あれ。今詠唱したか?」

「したぞ、ストーンウォールってな」


 まぁ実際は【ストーンパイル】なんだけど。改変して壁にしてある。


「じゃ、帰るか。道は覚えてるなムゾー?」

「ああ。もちろんだウゾー」

「せやなー、アンブロシアが新鮮なうちに納品しよかー……ご主人様、パッといってパッとアレ倒して追加のアンブロシア手に入らん?」

「無茶言うなよ。さすがに俺一人じゃなぁ」


 本気を出せば行けるだろうけど、ウゾームゾーに、そして219番にそれを見せる気もない。

 219番からはロクコにカッコいいところを見せなくていいのかとか言われそうだと思ったけど、別にロクコだって俺が戦うところ見たいわけでもないだろう。むしろ見ているのなら腹を抱えて上機嫌に笑うさ。

 今更敵を前に逃げ出したところで嫌われることはないと分かっている。


 だって、俺達のダンジョン防衛じゃないんだから。本気を出す理由がない。

 俺が本気で戦うのは、眠りを妨げられた時と、ロクコを守る時だけでいい。



 そんなわけで、219番の期待を裏切って悪いが、俺達は尻尾巻いて逃げ出した。

 ダンジョンから出るまで、それなりに妨害はあったものの普通に脱出した。

 おつかれー。

(以下お知らせ)

 コミカライズの更新がありましたー。

 隔週更新だと一回伝え忘れると連続になるな…!


 カクヨムコン9向け新作、無事10万字超えたので宣伝しときますわ。

  ↓ ↓ ↓

 いつかお嬢様になりたい系ダンジョン配信者が本物のお嬢様になるまで

 https://kakuyomu.jp/works/16817330667768391252


 HPが現金! ダンジョン攻略で報酬ゲット!

 そんな預金残高が賭けるVRダンジョンゲーム(合法)の、お嬢様志望配信者のお話です!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ版 絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 12巻、2025/07/25発売!
(連載ページ→コミックガルド版
だんぼるコミカライズ版11
だんぼるコミカライズ版1 だんぼるコミカライズ版2 だんぼるコミカライズ版3 だんぼるコミカライズ版4 だんぼるコミカライズ版5 だんぼるコミカライズ版6 だんぼるコミカライズ版7 だんぼるコミカライズ版8 だんぼるコミカライズ版9 だんぼるコミカライズ版10 だんぼるコミカライズ版11

【完結】絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 全17巻、発売中!
だんぼる1 だんぼる2 だんぼる3 だんぼる4 だんぼる5 だんぼる6 だんぼる7 だんぼる8 だんぼる9 だんぼる10 だんぼる11 だんぼる12 だんぼる13 だんぼる14 だんぼる15 だんぼる16 だんぼる17

異世界ぬいぐるみ無双、全2巻発売中。こちらもよろしくね。
N-Starの「異世界ぬいぐるみ無双 ~俺のスキルが『人形使い』~」【完結】

「あとはご自由にどうぞ!」の書影です! Ixy先生の書いたカリーナちゃんだぁ!!!
1588.jpg 1657.jpg 1837.jpg

コミカライズ版はこちら! 2巻出るよ!
9784758086806.jpg


新作、コミカライズお嬢様ですわー!!
TsDDXVyH
― 新着の感想 ―
[一言] 砲戦花とか遊戯王にあるよね(笑)。
[一言] ギガプラントが生み出せる植物モンスターの条件は何だろうか?他の植物の花粉があればそれを生み出せれるのかな?
[良い点] やだ、カッコイイ···それなんてフラグ? [一言] 見せてもらおうか。ロクコを護る時のケーマの性能(強さ)とやらを! てゆーか、ロクコさんがケーマのちょっと良いとこ見てみたいとか思ったなら…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ