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レイとキヌエのおしゃべり。


 『踊る人形亭』、従業員休憩室。

 そこに、レイとキヌエの二人がのんびりと休憩し、おしゃべりしていた。


「……なんか、最近恋愛の話がすごいですね、キヌエ」

「そうですね」


 話題はここ最近の恋愛ブームについてだった。


 衣食住が満ち足りており、安全にもなった。

 そうなれば、今度は恋愛に発展するのは生物として当然の流れ。


 もっとも、レイ達はDPで生まれるダンジョンモンスターなので、この流れからは外れる存在だ。

 ……ネルネだけは勇者ワタルとお付き合いを始めたが。


「マスターとロクコ様はもちろん、ネルネがワタルと付き合うことになりましたし……ソト様も、以前ほどは靴下を強請(ねだ)ってこなくなりました」

「私達のお姫様も『春』ってやつですか。ふむ」


 ソトが幸せで何より、と頷くレイ。と、そこから踏み込んでふと考える。


「キヌエ。ニク先輩も、そういえば婚約者いますよね」

「そうですね。マイオドール様がいらっしゃいます」

「ナリキンとロクファに至っては夫婦ですよね」

「はい。マスターにそう定められてますし、本人達もそのつもりでしょう」


 そう、よく考えると結構そういう関係の話は多かった。


「……いいなぁ。私も恋人とか欲しくなってきます」

「え? ちょっとまってください。私とレイは恋人ではなかったんですか?」

「え?」


 首をかしげるキヌエ。


「……わ、私達、いつの間にそのような仲に!?」

「冗談ですよ。冗談」

「あ、そうですよね。びっくりしました」


 うふふ、とレイをからかい楽し気に笑うキヌエ。

 キヌエってそういう冗談言うんだ、とレイは少し驚いた。


「シルキーズは……恋人とかいませんよね?」

「私達シルキーは、家事全般を愛しているので、しいて言えば宿や村長邸が恋人です」

「まさかの建築物。しかも重婚」

「身体の隅々までこの手で洗ってあげたくなりますね。ぽっ」


 頬に手を当て顔を赤らめてみせるキヌエ。


「イチカ先輩は……まぁ食事が恋人ですよね」

「食事のたびに新たな出会いと失恋を繰り返す、恋多き女ですか」

「すごい悪女ですね、恋した相手を食い殺してますよ」

「私の産んだ子を……!」

「そうかキヌエがお母さん」


 料理を作っているので母親。料理を食べるイチカに対して――まぁうん、別に何も思うところはない。

 どころか、いつも美味しく食べてくれてありがとうございますとまで思っている。


「あ、そういえばイチカ先輩にプロポーズされたことはあります」

「キヌエ、それに何と答えたのですか!?」

「これからも良い同僚でいましょう、と答えましたが? イチカ先輩も冗談で言ってましたし」

「ですよね」


 食事目当ての、たいして色っぽくもない話だ。


「レイはどうなんですか?」

「私はマスターに忠誠を誓ってますから」

「それは私やネルネも同じです。教会で良い人いませんか?」

「と言っても、サキュバスたちしかいませんよ。仕事が恋人です」


 そしてサキュバスたちにとって、色恋は食事とほぼ同義でもあるため、逆に色っぽい話にまでは発展しないようだ。

 とはいえ、普通の食べ物だけでも生きていけるので嗜好品みたいなものなのだが。


「どうにせよ、私達にそれらしい相手はいないということですねぇ」

「そうなりますね。ああ、じゃあやっぱり私と付き合いますか、レイ?」

「今更キヌエと恋人と言われてもピンとこないのでやめときます」


 かといって、適当な村人を選んで恋人にする、なんてこともできない。

 ダンジョンの事情を知らない一般人と恋人になっても害悪にしかならないからだ。


「キヌエ。ネルネはいい相手を見つけましたね……」

「ええ、身体が一番ニンゲンに近いのもありますけど、マスターが公認した相手というのが。……レイも公認していただける相手がいればよいのですが」

「……マスターの愛妾を目指しますか?」

「マスターにはロクコ様とニク先輩がいらっしゃいますよ、レイ」

「ならやめときます。マスターに請われたら別ですが」


 そもそもマスターであるケーマに抱いている感情は恋愛ではなく敬愛だ。


「いいことを思いつきました。恋人を創りましょう」

「……んん? キヌエ、それはどういう?」

「DPですよ。私達には給料としてDPが支給されているでしょう?」


 ふむ、とレイは頷いた。


「自分と価値観の合う相手を――自分で作る、というわけですか。なるほど」

「ちなみに私は食材につぎ込んでいるので500DPほどしかありません」

「ゴブリンなら25体彼氏にできますね、おめでとうございます」

「ふふ、ありがとうございます? で、レイはいかほど貯めていますか?」

「しばしお待ちを」


 レイはメニューを開いて自分の貯蓄を確認する。

 ……2万DPほど溜まっていた。


「2万ありますね」

「わぁ、私達がそれぞれ1万から1万5000DP程度ですよね? 十分溜まっているじゃないですか」

「……確かに!」


 このDPは自由に使っていいDPとして支給されている。

 つまり、彼氏をDPで作ってもいい――と、解釈することもできるのだ!


「では吸血鬼の恋人を作ってみましょうか!」

「攻撃力はどうするんですか?」

「もちろん、私の理想の恋人なので――攻撃力はちゃんとある方向で!」


 レイ的にはなんやかんや活用しているとはいえ、攻撃力0にコンプレックスがある。

 恋人にはしっかり攻撃力を確保して守ってもらいたい所存。


 と、理想のパラメータを盛り込んでいくレイだったが――


「……めっちゃDPかかるんですが?」

「なるほど。攻撃力があるとこんなにかかるんですね……」


 レイと同じ耐性、性能、スキル構成で普通に攻撃力があると――100万DPを軽く超えていた。


「だから私は攻撃力0だったんですね……く、世知辛い!!」

「DP、貯めるしかありませんね」

「一人じゃ貯めきれる気がしません。キヌエも一緒に貯めましょう!」

「あ、私は宿と村長邸とダンジョンが恋人なので大丈夫です」

「三股ぁ!」


 果たしてレイに春は来るのか――来なくても誰も困らない気がするが。


(だんぼる、コミカライズの方が更新されてました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] モンスター娘たちは恋愛とかには全く興味ないのかと思ってたけどダンジョンの秘密があるから一般人とそういう関係になれないだけで恋愛そのものには興味があるみたいなのは今まで見えなかった人間味のよ…
[良い点] ネルネは兎も角、特定の相手が居ない人-女性型の魔物は全部ケーマの恋人でいいのでは?大本のロクコの旦那だし [気になる点] 全寝具使用すると実際どうなるか
[一言] 世知辛い… こういう日常の風景大好きです!
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