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告白の後日譚



 教会の地下。牢屋にも思える冷たい部屋に、犬耳の褐色少女と魔女見習いが居た。


「告白作戦ー、上手くいきましたよー」

「おお! そうですか、それは重畳(ちょうじょう)

「はいー、ロクコ様の面目を保ちー、勇者ワタルを手中に収めー、マスターからもお褒めの言葉をいただきましてー。最上の結果でしたー」

「くふ、くふふ。レオナ様の負け惜しみの笑顔、この目で見たかったですねぇ」


 二人は企みが成功して、お互いに笑顔を浮かべた。


 この寝具しか置いてない殺風景な地下室は、トイの部屋だ。

 レオナへの反抗を命令されケーマに押し付けられた元レオナの部下、ニクの姉妹。国ひとつを手玉に取っていた実績のある策士だ。


 ここから『憑依』を駆使し、ゴレーヌ村に居ながらにして聖王国に出張中のナリキン達をサポートするのが、ケーマに頼まれたトイの仕事。

 今は10番コア――光神教の教皇が消えたことで、新教皇を選出するための選挙で色々と工作をしているらしい。


 だがトイの目的は『ケーマ達の陣営への協力』ではない。あくまで『レオナの妨害』の一環で、その過程でケーマ達を手伝っているに過ぎない。



 つまり、もっと直接的にレオナを妨害できる状況なら、トイは喜んで協力するのだ。



「いやー、トイさんに相談して正解でしたねー? 私から告白とかー、目からうろこ的なー?」

「くふふふ、ええ。ええ。私に相談したのは正しい判断でした。レオナ様の足を引っ張るのは私の使命ですから」


 とはいえ、レオナの前に直接姿を現せば警戒するだろう。

 ゆえに、トイは相談に来たネルネに策を授けた。そして見事、レオナの足を引っ張るのに成功したのである。


「もっとも、そのために私に相談したネルネさんの判断。見事でした」

「マスターやロクコ様はレオナ様の監視下にありましたからねー。下手に相談するとデート前に条件が追加されかねませんでしたからー」

「ソト様をけしかけて注意を引いたのも大変素晴らしい。主君の娘の恋心をも利用する、見事な奸臣です」

「人聞きの悪いことを言わないでくださいー。ソト様についてはノータッチですー」

「おや。そうでしたか? てっきりソト様を私に相談に来させたのもネルネさんかと」


 ふむ、とトイは頷いた。


「ソト様がー? どのような相談をー?」

「レオナ様の好む下着と靴下がどのようなものかを聞いてきましたので、エッチなレースのものをお勧めしておきました」

「へぇー。レオナ様はそれが好きなのでー?」

「自身がそういうものを好んで着けていますし、嫌いではないでしょう。私としては、まだ手を出されていないというのが驚きですが」


 ふーむ。とネルネは顎に手を当てる。


「まぁー、ソト様の恋も実るといいですねー?」

「ええ。ソト様であれば、レオナ様をたっぷり振り回してくださるでしょう。期待大です」

「おやー? いいのでー? レオナ様が幸せになってしまうかもですよー?」

「私が命じられたのはレオナ様の足を引っ張ることだけで、幸せになる分には純粋にお祝いするだけですよ。幸せに溺死して何もできなくなってくれれば最上かと。そしてソト様にはそれができる素養があります」


 独特な価値観ですねぇ、とネルネは自分を棚に上げてほほ笑んだ。


  * * *


 ロクコにとって用済みになったので、公園は一般公開されることとなった。

 尚、公園の名前は『勇者ワタル告白記念公園』である。


「……どうしてそうなったんですかケーマさん!?」

「勇者のネームバリューがな。まぁいいだろ別に。あ、ワタルの銅像も作って置いといたから」

「肖像権とかそういうの! 異世界だからってそういうの疎かにしたらよくないと思うんですよね!?」

「許可はネルネに貰った」

「ならしかたないですね……」


 村長の執務室までやってきたものの、あっさり文句を取り下げるワタル。おう、早速尻に敷かれておるわ。

 もちろん銅像は【クリエイトゴーレム】で作った。公園の看板も併せて。


「あれから三日で銅像を用意するとか……事前に準備してたんですか?」

「スキルって便利だよな、特にレオナのやつ」

「ああ勇者スキルいくつかお持ちらしいですもんね。それなら不思議はないか」


 俺は、嘘は言ってないよ。スキルって便利だよねぇ。


「ソトちゃん経由で頼まれたら断れないでしょうし。レオナさんはソトちゃんにたじたじでしたもんね、さすがケーマさんの娘」


 と、一人納得するワタル。

 俺としては娘が悪い女にハマるのは、その、本当にどうにかしたいんだがどうしようもないんだよな……


「あれ。そういや今更なんだが、ソトとは面識あったっけ? 紹介したことなかったよな」

「ケーマさんの娘ですよね? 村に来た時に何度か遊んでますよ。普通に本人から自己紹介されましたし」


 ニクと模擬戦するのをソトが観戦したりしてるらしい。

 いつの間に。……いや俺が寝てる間か。そうか。


 で、ニクや村民の態度からも、ソトが俺の娘であることは周知の事実だと把握。

 その上、一応ハクさんにも聞いて「ああソトちゃん? ええ、ロクコちゃんとケーマさんの娘よ」と普通に流されたので特に気にする内容ではないんだなと認識していたようだ。


「てっきり『いつの間に娘が!』とか言ってくるかと思ったよ」

「ニクちゃんの例がありますし。訳ありなら聞くのも悪いかなって」


 その割に俺の事を勇者だと疑って探り入れまくってくるよなお前。



「そんなことよりケーマさん。【転移】が使えるんですね? それも個人で」

「……そうか、そういや見られてたか」

「ええ、それはもうバッチリと」


 【転移】は、本来儀式魔法。個人で使えるような魔法ではない。しかしロクコに追い詰められた俺はうっかりワタル達が見てる前で宿まで転移してしまったのである。


「……まぁ、黙っててくれ。あれはちょっとした裏技だな。ロクコが関わってる、それ以上は言えん。今回のはさすがにハクさんに文句言われるだろうな……はぁ、気が重い」

「ロクコさんが?……ふむ。ハク様の妹ですし、いざという時に逃げられるように習得させられている、ということですか。そしてそれを実用するための手段も与えられている……?」


 俺はワタルの推測に無言で頷いた。

 うん、いい想像力だね! 辻褄があってるよ。という気持ちを込めて。

 俺の気持ちはきっと伝わったはずだ(棒)


 ……詠唱が聞こえなかったのは距離が遠かったから、とかで納得してくれるだろうか。


「でもまさか二人きりになりたいからと【転移】するとは……昨晩、もとい先日はお楽しみでしたね」

「うるせぇ、ワタルの方はどうなんだよ。ネルネとはあれからキスのひとつでもしたのか?」

「ええ!? あー、ええと、まぁ、その。……なんといいますか? 裸にひん剥かれたりはしました。はい、一方的に……」


 勇者の身体について調べさせて欲しいからと、容赦なく「恋人なのでー、いいですよねー?」で押し切って全身のほくろの数まで調べられたり、少し採血されたりしたそうだ。


 ワタル、尻に敷かれるどころじゃなくね? ネルネもなにやってんの。

 今更なんだが、ネルネのどこがそんなにいいのか分からないんだが。……いやよそう。(たで)食う虫も好き好きと言うしな。


「……この話はこのくらいにしておこうか」

「そう、ですね?」


 なんか気まずくて、俺とワタルは話を切り上げた。




「助けてケーマさん! ソトちゃんが私を堕としてくるの!!」


 と、そこにレオナが半泣きで執務室に駆け込んできた。


 俺の娘が、俺の勝てない邪神を泣かせてる件。

 なんだろうね、このダンジョンの女は勇者特効でも付いてんのかね。


(ガルドコミックの方でコミカライズ更新ありましたー。

 あとニコニコ静画の方も地味に更新されてて、コメント見ながら読むの楽しい。みんなもっとコメントしていいのよ()

 https://seiga.nicovideo.jp/comic/40236


 そして、11月20日発売の新作「あとはご自由にどうぞ!」なんですが、カクヨムのサポーター限定で店舗特典SSのリクエストを募集中です。

 https://kakuyomu.jp/works/16817330650606750225

 とりあえず10/9までで、案がなければ私の案で普通に書きますわね。)


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(連載ページ→コミックガルド版
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新作、コミカライズお嬢様ですわー!!
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― 新着の感想 ―
[気になる点] トイを預かってることに関してはレオナには話したのかな?レオナを警戒するのは分かるけど事情を話しとかないといざという時にトイが裏切る原因になりかねないから口裏を合わせておいた方が良いんじ…
[一言] 実質勇者陣営 vs ダンジョン陣営…! 勝敗は勇者陣営の三連敗ですけど… 流石ダンジョンみんな肉食系だ!
[一言] ネルネは何事もなかったらそのうちスズキを素材にしてたのかな? ソトちゃんのサキュバス適正は親以上かも レオナさんは242話ですでにケーマに娘を下さいみたいなこと言ってるから。
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