告白。
ワタルがフラれた後告白されて、晴れてネルネと恋人関係となった。
ついでにレオナにも一泡吹かせた形になる。さすがうちの子、やるじゃん。これはご褒美をあげなきゃいけないな。
「まさかネルネの方から告白するとは意外だったな」
「そこまでやれとは言ってなかったんだけど、ネルネにも案外脈があったのねぇ」
『伝説の大樹』前で手をつなぐ二人を見て、ロクコはどこか満足げに頷いた。
「さて、そんじゃお祝いにいくか」
「そうね!」
と、ワタル達に向かって歩いていく。ネルネと話していたレオナも「ぐぬぬ」とか言いながらどこか満足げだ。
ワタルはこちらに気付いていたのだろう。近づいたら手を振ってきた。もちろん片手はネルネと繋いだままで。
「よう、おめでとうワタル。……というか、いきなりプロポーズはないだろ。そりゃ断られるわ。段階を踏め、段階を」
「あ、ども。……いや、はい。ええ、そうですね。ちょっと先走り過ぎました」
「全くよ。私とケーマくらいの仲ならともかく。プロポーズするにしても内容を考えなさいよ、ちゃんとネルネの事考えたの?」
「お、お騒がせしました?」
ぺこりと頭を下げるワタル。
「ですよねー。ワタルさんはー、どうして家なんてー?」
「いやその。この世界で一般的に好まれるプロポーズということで。この世界に合わせた感じで」
「ワタルさんが好きになった人はー、この世界の一般的な人なんですかー?」
「そうでした……違いますね。すみませんでしたネルネさん!」
次はちゃんと私好みのプロポーズしてくださいねー、と腕をつっつくネルネ。
うん、距離感が近い気がする。これが恋人の距離感……!
「でもまぁ、無茶な告白は断られるけど妥当ならOKがもらえるってことでちょうどいい例かもしれないわね。ねぇケーマ?」
「そうだな。あるいは女側からの告白、とかいう形もあり得る……」
「あら。ケーマから告白してキスする約束でしょ。それは少し困るわね。ケーマ、成功率上げて頂戴。私はプロポーズでいいわよ」
と、ワタル達を押しのけて『伝説の大樹』の前に立つロクコ。
……今しろと!?
「デートしてからって話じゃ……」
「なによ、デートは今日してきたでしょう?」
「ん?……ん!?」
思わずワタルの方を見ると、ワタルはこくりと頷きやがった。
「こちらも見ていましたが、ボートで膝枕とかしてましたね。デートでは?」
「しかもー、ロクコ様の手作りサンドイッチも食べてましたねー?」
「間違いなくデートですね。むしろ羨ましい、僕もネルネさんの手作り食べたい……」
「食べたいならー、今度トマトでも植えますかー」
「手作りってそこから!?」
覗き見デートっていいのかそれ。デートにカウントしても。
「さぁ、どうぞケーマ?」
「いや、その、ワタルやらレオナも見てるし……」
「ワタルもネルネも、私たちに見られてるの承知で告白したのよ?」
「そりゃそうだけどもぉ!!」
ちらりとレオナを見ると、やはりニマニマ笑ってみていた。
オマエはそういう奴だよな、知ってた。
「武士の情けよ。茶化さないでおいてあげるわ……!」
「そんならせめて姿も見えない場所に隠れてくれないかな」
「そうですよ、パパ達の告白を隠れて観察しましょう。ね、レオナさん!」
「げぇソトちゃん!? まいたと思ったのに! あ、あ、まって、服引っ張らないで」
突然現れたソトがレオナを引っ張っていった。いたのかソト。
どうしたもんかなぁソトについては……と頭を抱えたくなる。
……しかしこの様子を見ると、案外ソトならレオナを抑え込めるのかもしれない。
「じゃあ僕らも隠れてますね。いきましょうかネルネさん」
「お、おう?」
「ロクコ様ー、お幸せにー?」
「ありがとうネルネ」
そしてワタルとネルネも茂みの方に隠れた。
……こうして残されたのは俺とロクコだ。茂みに4人ほど隠れてるけど。
日は落ちて、もうすぐ夜と言う時間。赤から紺の星空に変わりつつある空模様。
改めて周りを見れば、『伝説の大樹』の周りが光の魔道具でライトアップされている。
雰囲気はバッチリというやつか、これが。
「ケーマ。……いつでもいいわよ?」
ロクコが口に人差し指を当てながら笑う。
唇をぺろりと舐めてみせ、こちらを誘ってくる。
……オーケー、覚悟を決めよう。
「あー、その。なんだ。あんまり気の利いたことは言えないけど」
「うん」
「………………好き、だ。結婚して夫婦になってくれ」
「……うん?」
首をかしげるロクコ。
「私たち、もう夫婦でしょう? もっと上ないの?」
「え?」
「え、じゃないわよ。指輪まで貰ってて、娘までいるんだから今更でしょ?」
「……と言われても。この世界には夫婦より上とかあるのか? しらんぞ」
「なかったら作ればいいじゃない、オフトン教で」
何それ、超夫婦とか?
「私は、ケーマと、もっとちゅーとかしたいのよ! ほら、そういう関係!」
「……夫婦じゃね?」
「ならなんで私はケーマにちゅーされてないのよ」
えぇ……な、なんでだろうね?
「まさか、夫婦だと思ってたのは私だけだった……とか?」
「あー、その……そうかもしれん」
「娘まで居るのに! ケーマのへたれ! ワタル以下!」
おい、そこでワタルが聞いてるんだぞ??
「はぁー、まぁそれならそれでいいわ。ちゃんと夫婦になったら、ちゅーとかしてくれるのよね?」
「そ、そうだな? うん。ハクさんにも認められたわけだし」
「そうね。じゃあこれからは夫婦なわけだから……ね?」
……心なしか、いや確実に距離を詰められている。
「……ん」
そっと顎を上げるようにして、こちらを見上げてくるロクコ。
「……キス、していいか?」
「ん」
蕩けた瞳で、こくん、と頷くロクコ。
俺がロクコの肩を掴むと、ロクコはそっと目を閉じた。
……
や、柔らかい……
そう思った次の瞬間。
ロクコの口から挿し込まれたにゅるっとした感覚に、俺は思わず距離を取った。
「!? ろ、ロクコ? いきなり舌はその!」
「え? これからは解禁でしょ? するにきまってるじゃないの」
「いやまって! 心の準備が! ていうか見られてるから、見られてるから、ワタルとかに!!」
「うるさい口ね。私が、どれだけ、我慢したと思ってるのかしら?」
肉食獣を思わせる笑み。
ひぃ。
その後、俺は「せめて、せめてお家で!」と【転移】で村長邸に帰ることには成功した。
(新作、公式情報でたぞー。
『あとはご自由にどうぞ!~チュートリアルで神様がラスボス倒しちゃったので、私は好き放題生きていく~』
https://gcnovels.jp/book/1588
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Web版とはちょっとタイトルが変わってたりするのよ。間違い探しレベルだけどね!
そして内容もだんぼるレベルで変わってます。ハイ)