ネルネとデート(2)
(公園デート)
さて、俺とロクコはネルネとワタルのデートをそっと見守るわけだが。
「あら。おはようケーマ。もう朝ごはんタイム終わったわよ」
俺が起きた時、二人は公園に向かっているところだった。
「おはよ。公園デートだろ? 間に合ってよかったよ」
「すでに前哨戦があったのよ。まずはネルネの勝ちね、ワタルは早速タジタジよ」
「なるほど?」
デートって勝ち負けのある行為だったっけ? と思いつつも詳しくはツッコまないことにした。
「にしても初手で眼鏡をかけてくるとか、ネルネはやる気ね……!」
「……眼鏡だとやる気なのか?」
「ええ。ワタルの好みに合わせてのオシャレよ。ワタル、ネルネが眼鏡かけてる姿好きらしいわ」
いつの間にかイチカと情報収集していたらしい。
確かにそういう点調べてるあたり、本気っぽさはあるけれど。
「ね。ケーマは私が眼鏡かけてたら好き?」
「まぁかけててもかけてなくても。普段かけてないならかけたら新鮮かもな」
「じゃあ逆にケーマにかけさせてみるのもよさそうね。……似合うと思うのよね!」
俺の視力は別に悪くないのだが。伊達眼鏡くらいならいいぞ。
それはさておき。
「やる気ということは、ネルネはワタルの告白を受ける方向なのかな」
「それは断るかもしれないわね。最後にいい思い出を……みたいな? そんな可能性もあるわ」
したり顔でそう語るロクコだが、つまりは良く分かっていないらしい。
まぁ分かってたら俺とのデートの前にワタルとネルネにデートさせる、とかしないだろうしな。俺も良く分からんけど。
と、二人が公園に着いた。レオナとも一緒に見守る約束をしているので、俺たちは実際に公園に出向いて覗くことにした。はい【転移】っと。
* * *
僕らは公園についた。散歩道にちょっとした広場、ベンチもある。
「さてワタルさんー、ロクコ様の作られた公園を隅々まで堪能しましょうー」
「散策ですね。僕もお手伝いしましたが、あの森が見事に切り拓かれて」
僕も依頼を受けて手伝ったが、元々は深い森だった。最初に大技を使って大まかな平地を作ったっけ。
「ほほうー! どんな魔法を使ったんですかー?」
「魔法も使いましたが、ハク様から授かった聖剣エアを使っての広範囲制圧用の全力斬りですね」
「……魔法ではなくー?」
「魔法は調整に少々」
「やはり土系ですかねー? それとも植物を操るタイプー?」
ネルネさん、やっぱり魔法の方に興味が強い……これはレオナさんの魔法はどうあがいても強敵だろうなぁ……
ちょうど道の隣にテニスコートくらいの広さの土むき出しの空き地がある。
ここは魔国を参考に作った魔法の修練場だそうだ。
ターゲットとして、この村の特産品でもある鉄製の的が置いてある。
「よし、ちょっと僕の使える魔法を見せましょう!」
「おー! ワタルさんのー、ちょっといーとこみーてみーたいー?」
修練場に入り、的に向かって立つ。
……どういう魔法を使おうか。
「さすがに修練場が壊れかねない強力すぎる魔法は使えませんよね」
「むー。確かに公園の設備を壊してしまうのは困りますねー」
うーん。と頬に手を当てて『困りましたねー』のポーズをするネルネさん。
見栄えのいいけど威力の小さい魔法……うーん。
「お困りのようね」
「っ、レオナさん!?」
「あらー、こんにちわー?」
修練場に、スッとレオナさんが現れた。気付かなかった……!
いや、勝負のこともあるからどこからか見ているとは思ってたけど、この僕の認識をすり抜けてこんな近くまで!
「今日は特別に、私が結界を張ってあげるわ。その中ならどんな魔法も使い放題よ?」
「おおー、レオナさん太っ腹ー! さすがですー!」
「ええ。ここで魔法を披露できなかったからネルネさんに振られた、なんて、そんなつまらない言い訳されたくないもの。存分に披露して頂戴?」
にまにまと楽しそうなレオナさん。
「……本当に大丈夫なんですか? こう見えて僕、それなりに強さには自信がありますよ」
「そうね、心配なら最初は弱い魔法から試したら? 大丈夫、もし私の結界魔法が破れて修練場が壊れちゃっても、私が責任をもってケーマさん達に謝った上で、一人で直してあげるわ」
溢れる自信。そして、レオナさんは『結界魔法』と言った。
それを聞いて眼鏡をチャキッと直すネルネさん。
これは……勝負だ。僕の魔法が強いか、レオナさんの結界魔法が強いか。
より強い魔法である方が、ネルネさんの気を惹くことができる……!!
「……分かりました、受けて立ちます!」
こうして僕とレオナさんの戦いが始まった――
「――【サンダーピラー】!!」
雷を放つ塔が地面から現れ、結界に無数の雷を放つ。
……が、結界はそれを受け止め、修練場の壁は焦げ目ひとつつかなかった。
「すごいですワタルさんー! ピラー系ですねー!」
「くぅ、結界が硬すぎる……ッ! どうなってるんですか!?」
「ふふふ。結界魔法にはちょっと自信があるの。私の勇者スキルが関係していると言っておくわね」
「さては魔法系、もしくは補助系の勇者スキルを!?」
なんてこった、僕の【超幸運】では戦闘補助の勇者スキルがかかっている結界には対抗できないということ……!
僕はがっくりと肩を落とし項垂れました。負けた……!
「ふふふー、何してるんですかワタルさんー?」
「いやその……うう、すみません。僕の魔法では、レオナさんの結界を破壊することはできないようです……!」
僕が負けを認めると、ネルネさんはこてりと首をかしげました。
「んんー? 私はワタルさんの魔法がたくさん見れてー、たいへん満足ですよー?」
「……喜んでもらえたならむしろ勝ちなんでしょうか?」
「そもそも勝負だったのでー? ワタルさんの魔法を見せてもらう話だったと思いますがー?」
言われてみれば、別にレオナさんとは魔法勝負をしようとかは一言も言っていない。
「多彩な魔法を見せていただきー、ありがとうございますー!」
満面の笑みでそう言うネルネさん。
……うん。そういうとこ好き。改めてそう思った。
(だんぼるのコミカライズ更新してましたー
リンクは活動報告にはっときました!)