表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

553/622

神の手


「……へー、そうなんですか!」

「……そうなんですよー。意外でしょ?」


 応接室からワイワイとはしゃぐ会話が聞こえてくる。2人で会話しているようだ。

 しかしその声色は、一人分である。


「入るぞ……ソト、いや、ソトか? ちょっとまて。なんでソトが2人いるんだ?」


 扉を開けてはいると、そこにはソトが二人いた。

 片方は、間違いない。俺の娘のソトだ。だがもう一人は。オレンジ色の瞳をした、俺の娘によく似た存在だった。


「あ、パパ! 見てください、私ですよ、私! 思わず会いに来ちゃいました!」

「あ、パパ! カリニソトです。ソトちゃんって呼んで下さ……紛らわしいからカリちゃんでもいいですよ?」


 ニコッと笑うその顔は、全くの瓜二つ。一卵性の双子といっても差し支えないだろう。

 そしてそう考えると俺の中で違和感がスッと落ち着いていく。


「……カリニソト、お前も俺の娘なわけか」

「はい、時空神カリニソト。私は間違いなく『増田桂馬』の娘です」


 言いながら二人のソトは親し気に手をつないで笑顔だった。

 時空神。つまりそれは――


「未来のソトってことか?」

「そうとも言えますし、違うとも言えます。時空の外側に居るのが私なので!」

「うーん、まぁソトではあるのか。よくわからんが大出世したんだな」

「えへへ、褒められた」

「パパ、この私も私のようですよ、驚きですね!」


 うん、2人のうちどっちが喋ってるか咄嗟に判断つかなくなるなぁ。

 と、ロクコを見ると何やら手が所在なさげにおろおろと彷徨っている。


「あうあうあう。ケーマどうしましょう、ソトが二人いるわ! 娘が二倍可愛い!?」

「落ち着けロクコ。双子だと思え」

「双子……? 双子って?」

「ニクとトイみたいなやつだ。こっちがソト、時空神のがカリと考えてみろ」

「あー。あー、なるほど……あ。なんか違和感消えた」

「お手数をおかけしますパパ、ママ。私、ちょっと特殊なので」


 ロクコも俺と同じような違和感を感じていたらしい。……ニクももしかしてこの状態なのかな。


「どういうことなんだ?」

「説明が難しいんですが、同一人物が二人いるパラドックスに加え、上級神の力のせいで、私はこの世界にとって異物なんです。上手く呑み込めないと喉でつっかえて吐き気を催す違和感になるって感じですね」


 ハクさんは「信用できる知り合いとは認識できるが、ソトだとは認識できない」という状態になっていて、ニクも「ソトが1.5人いる」みたいな認識になってしまったらしい。ダンジョンマスターとコアとしての繋がりが強い分まだ飲み込み切れず、混乱状態。

 一方で、ソト本人は全く違和感がないようだ。時空神の素質が関係してるとかなんとか。


「この世界の人の身体を依り代にしてるんでギリギリ活動できてます」

「ん? 依り代? じゃあその身体はお前――えっと、カリの体じゃないってことか?」

「はい! 同意の上で一時的に乗っ取りました!」


 ……まぁ同意の上ならいいか。


「あ、パパの知りたい事に答えておきますね。勇者スキルの方は今から1年時間を空ければ確実に大丈夫ですが、半年以内にさらにLv上げちゃうと暴走します。レオナさんの言っていた事は真実なのでお気をつけて」

「え。お、おう」

「具体的には汚染の影響でママに対してDV夫になります。ママはそれはそれで幸せそうでしたがエスカレートしてうっかり殺してしまった世界もあったので一応忠告を」


 それはイヤだな? というか、その場合でも幸せそうなロクコってどういうことなの。DV夫から離れられない妻特有のアレか?


「分かった、DV夫になりたくないから1年は気を付けるよ。……なんとなくカリがどういう存在か掴めてきたな。世界の監視者みたいな?」

「時空神なもんで。世界と言いましたが未来といってもいいかもですね、今潰れましたが」


 存在がタイムパラドックスの塊みたいなやつだな、時空神カリニソト。


「さて、そんな未来をアレコレしてしまう私が、わざわざハクおば様に介入して紹介してもらってきた理由なんですが……」

「あ、単にDV夫にならないように忠告にきただけじゃないんだ?」

「当然ですよ。顔面殴られる度に『私、愛されてる!』って喜んでたママも否定する気はありません。創造神からのお使いです」

「ちょっとまって私そんな感じになるの? 嘘よねカリ?」


 創造神、というと闇神と光神の上に居る存在だ。

 なんでウチの娘がそんな相手からお使い頼まれてるのか……時空神だからなんだろうけど。


 時空神カリニソトはロクコの言葉をスルーしてテーブルの上に缶を置く。茶葉だ。


「『神の寝具』を使って神になる際、このお茶を飲んでおくと創造神とお会いできます。……使うかどうかはパパに任せますが、とりあえず私に預けておきますね」

「はーい、預かっておきますねー」


 茶葉をソトに渡すカリニソト。


「次期創造神になる気が無いなら使ってください」


 んん?


「ちょっとまって。無いならって言った? ある、じゃなくて」

「はい。フツーにこのままいくと次の創造神になるんですよ。詳しく言うと精神汚染があるのでナイショですが――あ、分岐できた。よし。お使いは果たせましたね! それじゃあ私そろそろ帰るんで!」


 突然立ち上がる時空神カリニソト。……詳しく話せと言いたいところだが、詳しく話したら世界の真実を知ったとかいうSAN(正気)値判定なコトになるんだろうか。


「なんとも急だな」

「とびっきりの素体を依り代にしてるんですが、それでもそろそろ活動限界なんですよ。目的を果たした時点で契約が切れかけです」

「なるほど?」


 良く分からないけど、分岐を産むのが目的だったのか。

 ……あまり詳しく推測するとSAN値削れそうだけど、本来世界の中に入れない上級神が直接手出しすることが分岐の条件とかだったのだろう。


「そうだパパ。ママへのプレゼント頑張ってくださいね」

「えっ」


 そして時空神カリニソトが光った。

 光が収まったとき、そこには黒髪赤目、ポニーテールの女――


「あら、ソトちゃんもういいの?……ん? あ、桂馬さんお久しぶり」


 ――ニコッと笑うレオナが居た。


 そうだね、上級神様の依り代が半端な人間に務まるはずないよね。


(上級神が手を出したことにより新たな世界線が生まれました。

 ところでニコニコのだんぼるコミカライズ、8巻の表紙レイに例のタンヤオ並べてた人がいましてね。補正込みで0点と。

 「……こいつ、分かってんな……!」となりました。

 コメント付きのいいところよね!


 確認はこのURLから。現状最新話のやつです → http://nico.ms/mg714205

 コメントつきはいいぞ。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ版 絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 12巻、2025/07/25発売!
(連載ページ→コミックガルド版
だんぼるコミカライズ版11
だんぼるコミカライズ版1 だんぼるコミカライズ版2 だんぼるコミカライズ版3 だんぼるコミカライズ版4 だんぼるコミカライズ版5 だんぼるコミカライズ版6 だんぼるコミカライズ版7 だんぼるコミカライズ版8 だんぼるコミカライズ版9 だんぼるコミカライズ版10 だんぼるコミカライズ版11

【完結】絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 全17巻、発売中!
だんぼる1 だんぼる2 だんぼる3 だんぼる4 だんぼる5 だんぼる6 だんぼる7 だんぼる8 だんぼる9 だんぼる10 だんぼる11 だんぼる12 だんぼる13 だんぼる14 だんぼる15 だんぼる16 だんぼる17

異世界ぬいぐるみ無双、全2巻発売中。こちらもよろしくね。
N-Starの「異世界ぬいぐるみ無双 ~俺のスキルが『人形使い』~」【完結】

「あとはご自由にどうぞ!」の書影です! Ixy先生の書いたカリーナちゃんだぁ!!!
1588.jpg 1657.jpg 1837.jpg

コミカライズ版はこちら! 2巻出るよ!
9784758086806.jpg


新作、コミカライズお嬢様ですわー!!
TsDDXVyH
― 新着の感想 ―
[一言] 色々話が一気に進んだな〜ソトは時空神になるし主人公はまさかの創造神だ やべぇな、ただの一般人だったはずなのに。ていうか創造神に代替わりなんてあるのか?果たして寝てたいだけのケーマは創造神にな…
[一言] 神になって勇者属性が強くなって…… あ、なるほど……光神の従属神みたいな感じになっちゃうのか。 それで闇神の従属神である所のロクコに対してのリアクションが全て攻撃性に寄った感じにってんなら意…
[気になる点] ん?てっきり書籍版の過去だと思ってたけど、実は未来だった? いや、引き継ぎせずにリセットしてやり直した可能性もあるのか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ