【超変身Lv7】
(だんぼるのコミカライズが更新されてました!
https://comic-gardo.com/episode/316190246929592575
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ページ↓の表紙&リンクの一覧を更新しといたぞ! )
そういえばなのだが、今の俺の勇者スキル【超変身】はLv7なのである。
10番コアとのダンジョンバトルの最中、うっかり上がってしまったのだ。もうしばらくはアップさせる余裕がない。
「しかし、割と最初からとんでもなかったけどLv7ともなると……ヤバいなぁ」
ゴゴゴゴ、と自分の中で力が蠢いている気になる。気のせいかもしれないけど。
で、【超変身】Lv7の効果は以下の通り。
・24時間中にLv回(Lv7なら7回)、思い描いたモノに変身することができる
・Lv1効果:実在する何かの姿に変身できる
・Lv2効果:変身したモノの能力を一部模倣できる
・Lv3効果:72時間に1回、変身した状態で死亡しても変身を解除して復活
・Lv4効果:過去に実在していたものに変身できる。
・Lv5効果:変身後の制限緩和。固有の能力が一部使えるようになる。
・Lv6効果:変身中に変身前のスキル使用可能。
・Lv7効果:変身後のスキルを全て使用可能。
……変身後のスキル、すべて使用可能! というとんでもない能力になっているのだ。
が、こいつにはふたつ欠点がある。
ひとつは勇者スキル――【超幸運】等は対象外であるということ。
まぁこれは当然だ。習得で魂が汚染されてしまう危険のある勇者スキル。これを使えるようになるのがノーリスクなはずがない、一気に汚染が進む可能性すらある。むしろ使えないで良かったまである。
で、もう一つ。変身後、自分がどういうスキルを習得しているのかが一切通知されたりしないという点だ。
つまり、変身後の相手が使えるスキルを知っていなければ結局使えない。しかもLv5の時同様、経験まではコピーされないため、変身しても劣化コピーにしかならないのだ。
よほど相手がスキルを使いこなせていないなら別ではあるけど。
もっとも、その欠点2つがあってもやはり強い事には変わりない。さすがは勇者スキルのLv7と言えよう。
「でもなぁ……やばいんだよなぁ、上限値的に……」
先にも述べたが、勇者スキルは、取得すると魂を光神方面に汚染する、とかなんとかで、1年間でLv3アップが限度という話を以前レオナから聞いたことがある。
本当にそれが正しい情報であるかは分からないのであるが、ソトに吸われたり習得したりを繰り返してのこの現状、もしかして非常にヤバいのではないかと思わざるを得ない状況なのだ。
「かといって、勇者スキルと魂に詳しい人なんて居ないし、診断してもらう事もできやしないんだよなぁ」
こればっかりはメールで光神に聞いてみるわけにもいかない。だって光神側に汚染されるということは、光神にとっては都合の良い事だろう?
ならちゃんと教えてくれないで『全く問題ないし、レオナの言ってた事はデタラメだよ! さっさとLv上げたらいいじゃないか』とか言われてもおかしくない。
それが真実かどうかは、実際手遅れになって初めて分かる事なのだ。
まぁ、それを言ってしまったら、そもそもレオナが本当のことを言っていた保証もないわけなんだが……こっちはなんか本当だという謎の確信がある。
多分勇者スキルでLvが上がったときにそれを実感してるんだと思う。
「うーん、なんにせよ、しばらくは……1年は勇者レベルを上げない方が良いな。でも、勇者スキルの練習はしておいた方が良いか」
というわけで、俺は闘技場エリアへと向かった。あの場所なら秘密も守れて体を動かすのに最適だからな。
* * *
運動に付き合うべく、ニクが同行してくれた。
「ご主人様。それで、何に【超変身】するんですか?」
「そうだな、まずは身近な仲間に変身してみるか」
分かりやすさを考えると、まずは特徴的な能力を持ってるレイがいいだろう。
なにせ1日に7回も変身できるようになっているんだ、適当にやってもお釣りがくる。俺は【超変身】を発動した。
「どうだニク? 何かおかしい所はあるかな」
「おお、すごいですご主人様。ニオイもちゃんとレイですね」
くんくんと鼻をこすりつけるようにして匂いを嗅いでくるニク。
「ていっ」
「あたっ」
ぺしっと額を叩くと、ニクは軽く痛がった。……んん?
「あれ、今痛かったですご主人様」
「だよな。……って、そうか。レイの攻撃力0はスキルじゃなくてただの能力値だった」
「ということは、ご主人様の攻撃力が上乗せされている、ということでしょうか?」
そうなると、変身元よりちょっとだけ強くなるということだろうか。
レイに変身したからこそその特異性が使えなくなるという不具合(?)があったが。
「よし、次いってみよう」
「次はだれにしますか?」
「お隣さん、レドラいってみるか? ドラゴンブレスとか吐いてみたい」
「それは楽しそうですね。服はお預かりします」
おっと確かに。服は変身しないもんな。
ということで、一旦服を脱い――変身を解いてから服を脱ぎ、改めてレドラに【超変身】。俺はレッドドラゴンになった。
「巨体になると、逆に周りが小さくなったように感じるなぁ」
「なるほど、そういうものなのですね」
「よし、それじゃあニクは一応避難してもらって……ドラゴンブレス!!」
ふぅううーーーーーー!!! と、誕生日ケーキの蝋燭が吹き消せそうな吐息が出た。
ドラゴンの肺活量なのでケーキ自体が吹き飛ぶかもしれない。
「……どうやって出すんだ、ドラゴンブレス」
「わかりません。ご本人に聞いてみては?」
「そうだな、今度どうやってるか聞いてみるのもいいな。えい、ドラゴンブレスモドキ―」
ブレス、に見せかけてエレメンタルバーストを無詠唱で放ってみる。うん、レドラが使えないであろう魔法をちゃんと使えるな。
「俺が使えないスキルを使えるかのテストもしたいな……あ、そうだ。【人化】っ」
俺は人型のレドラに【人化】した。
ついでに言えば、素っ裸にはならず、服を着た状態である。
「む? 服を着てますね。どういうことでしょうか?」
「種明かしすると、単にこの服がレドラの体の一部ってことだ。普段、レドラも人化した時に服着てただろ? ウロコが服に変化してると思う」
そういう意味では裸と言えなくもない。……今更だが、お隣の奥さんに変身して素っ裸ってのは、ちょっともしかしたら問題かもしれない。
イッテツに言ったら殴られそうだから黙っとこう。
「そういえば、ソト様の【ちょい複製】は再現できるんですか?」
「どうだろ? ちょっとやってみよう」
改めて服を着て、ソトに変身する。……んー、無理そう。【ちょい複製】は普通の勇者スキル同様対象外のようだ。あ、でも石とかを食べたりはできるかもしれない。
「靴下、召し上がってみますか?」
スッ、と流れるように靴下を脱ごうとするニク。
「……いや、変身解除したときに消化できなくて腹壊しそうだからやめとくよ」
「そうですか。残念です」
何が残念なのかは聞かないでおく。
「俺からニクの【収納】を開くのはできるかな? 試していいか?」
「どうぞ」
「じゃあ、えいやっと。お、開くな。へぇー、ソトっていつもこんな感じに人の【収納】を開いたりしてんのか……って、普通に【収納】ダンジョンもひらけるか」
人の服のジッパーを開くように、他人の【収納】を開く。元々自分の【収納】を開くのとそれほど違いはないので、すぐに開けるようになった。
「そうだニク。ちょっとソトを脅かしてやろう。いつもソトには神出鬼没で驚かされてるから、たまには俺達の方からソトの側に顔出してみるぞ」
「それは……とても楽しそうです。わたしもお供します」
ぱたぱたと耳と尻尾をはためかせつつ、ふんすと鼻を鳴らすニク。
ソトも突然隣に人が現れるビックリ感を味わうがいい!
「俺の【収納】のダンジョンとはいえ、一応娘の部屋だ。先にニクが入って、俺が入ってまずそうなら止めてくれ」
「わかりました。ではいきましょう、開いてください」
「よし。【収納】ダンジョン、オープン!」
俺は横を向いて中を見ないようにしつつ、しゅるん、と【収納】を開く。そしてニクが先に覗き込み――
「……え?」
「あっ、え、やっ、ニクお姉ちゃん!? ちゃんとカギ閉めてたはずなのに!!」
「ご主人様、少々お待ちを。部屋で遊んでいたようです」
「ええ!? パパもいるの!? あー! さてはパパの仕業ですね!? えっち! すけべ! 下着を一緒に洗わないでください!」
なんだその罵倒は、思春期の娘か。お父さんちょっと傷つくぞ?
ちなみに靴下を敷き詰めてゴロゴロするという遊びをしていたらしい。何してんのウチの娘。程々にね。