イベント閑話・クリスマスのやつ
(丁度クリスマスなのでイベント更新です。
尚、前回のクリスマスSSは2015年12月の活動報告となっております)
部屋でのんびりゴロゴロしているとソトが飛び込んできた。
「パパ、大変です! 一大事です! ビッグニュースです!」
「ん? どうしたソト」
「クリスマスですよ、クリスマス!」
「……そういやもう冬だもんなぁ」
確かに、日本に居た頃であればクリスマスの時期である。
……一体どこでクリスマスなんて覚えてきたんだろうか。
「ワタルに聞きました!」
「あいつか。……ちなみにクリスマス、なんて言ってた?」
「ニホンでは他宗教な偉人の誕生日を、日を跨いでお祝いするイベントらしいですね! なんとも妙な事をする話だなって思いました」
うん、まぁ、そう言われてみればそうだね。こっちで言えば俺たちが突然魔国の大魔王様の誕生日をお祝いするような話だもんな。
しかしそれのどこがビッグニュースで一大事なんだろうか?
「そして、クリスマスといえばぁ……?」
ぢぃー、と上目遣いでソトが俺を見てくる。
そういう風に尋ねられても正解が分からないぞ?
「クリスマスツリーかな」
「んん! 惜しい! ほらあれです、生き物です!」
「い、生き物?……トナカイか?」
「もうちょい後ろ!」
「……サンタかな?」
「そう! 良い子が靴下を捧げるとプレゼントをくれる生き物、サンタクロースですね!」
「ちょっとまて、サンタを『生き物』と表現するのはまだいいとして、ワタルがそう言ってたのか???」
だとしたら娘に何を教えてんだと殴り込みに行くのもやぶさかではないぞ?
「いえ、これはニクおねーちゃんから聞きました」
「ンン゛ッ! あー、うん、そういやそんなこと冗談で教えた事もあった気がするなぁ」
そう言って靴下を回収しようとしたことがあったのだ。
今考えると大分、その、アレだけども!
ロクコに睨まれたおかげで翌年からクリスマス廃止になってたわけだけど!
「というわけで、サンタクロースをやろうかと思いまして。まずは本物のサンタクロースを捕獲して、なり替わろうかと!」
「まてまてまて」
俺は思わずソトを止める。……プレゼント、貰う側じゃなくてあげる側か。
いや、この場合は靴下を捧げられる方をやりたいんだろうけど……うん、俺の子だなぁ。
「……ソト。お前は良い子側だからおとなしくプレゼントを受け取る方にしておきなさい」
「何日和ったことを言ってるんですかパパ! 私は自分が良い子だなんてこれっぽっちも思ってませんし、欲しい物は自力で勝ち取るべきなんですよ! むしろゴレーヌ村の靴下たちを守るために立ち上がらなきゃ!」
「サンタさんには俺からソトにもプレゼントあげるよう頼んでおくから、お願い大人しくして!?」
「む? サンタクロースって交渉ができるんですか?」
「……できるし、別に靴下は奪われたりしないぞ。うん。それじゃあ今年はサンタに来てもらうとするかぁ。ロクコにも話しておかなきゃな!」
かくして、今年は数年ぶりにクリスマスが開催される運びとなった。
* * *
久しぶりにクリスマスをということで、『サンタさんへの手紙』という体で皆から欲しい物を教えてもらうことに成功した。
「ねぇケーマ。サンタさんへの手紙なのに私たちが見てもいいの?」
「ま、日本の場合はサンタを親が代行するからな。異教の偉人に丸投げするわけにもいかないし、そもそもここは地球じゃないからな」
「それもそうね」
というわけで早速手紙を開けて欲しい物を見て行こう。
まずはニクだな。このゴレーヌ村最強戦力の犬耳奴隷幼女にして、俺の抱き枕で、メイドで、ソトのマスターでもある……うん。肩書が多い。苦労してそうだなぁ。
「仕込みナイフ付きブーツ、と。暗器かぁ。素材は少しいいやつ使おう」
「ケーマが作ればいいやつね。むしろなんでサンタへの手紙に書いたのかしら、ケーマに言えば普通に作ってくれるでしょうに?」
「……まぁ、ニクは俺がサンタと繋がりがあると知ってるからな。前回捕縛されたし」
「そう言えばそうだったわね。遠慮したのかしら」
次。イチカ。我がダンジョンの常識枠、食道楽とギャンブル癖で奴隷落ちしたダメ人間でもある。でも常識枠。
「イチカはどうせカレーパンでしょ……」
「おいおい、まぁその通りだったけど」
「だけど、靴下にカレーパン入れるのは衛生的じゃないわよ?」
「カレーパン引換チケット入れておくか。スロットとか言われなくてよかったよ、あれは作るの面倒くさいんだ」
「スロットだと中身の銅貨自分で用意しないといけないって分かってるからじゃないかしら」
在り得る話だ。
それじゃ、幹部、魔物娘3人の欲しいものを見て行こう。
オフトン教聖女でもある吸血鬼レイ、宿の食堂で料理を担当するメイド長キヌエさん、魔道具研究者の魔女見習いネルネ。
さて、この3人の欲しい物は……?
「レイがおいしい血で、キヌエが掃除する場所。ネルネは上級魔法のスクロールみたいだけど」
「ネルネが一番高いな。ここぞと遠慮しないできたか。……血はDPで輸血用パックでも出すか。美味しいとか分からんけど、靴下の中に入れとくのは保存状態悪くなりそうだからこれも引換券だな」
「キヌエの掃除する場所、ってのはどうするの?」
「……神棚でも作るか、こう、オフトン教の祭壇ってことで」
「オフトン教の祭壇はいくつあってもいいものね。むしろ各部屋に作ればこっちの分のお願いも叶えられるんじゃない?」
と、ロクコが手にしているのはキヌエさんの部下、シルキーズの3人のお手紙だった。
「ハンナ、ナコル、ピオ。全員キヌエに干渉されないでやり放題の仕事(家事)って書かれてるわ」
「キヌエさん、そんなに仕事奪ってくのか……」
「シルキーとしての腕前が上がってて、仕事の効率や質も上がってるのよねキヌエ」
その分仕事を奪われていくらしい。……一人が担当する仕事が多すぎると、代わりの人材がいなくて休めなくなって困るし、何かあった時に大穴になるから困るんだけど。
それを考えたらマメに掃除しなくても支障のない神棚を増やしておくのはアリか。粗末にしたところで怒る神様がオフトン教にはいないわけだしな。
「これも引換券ね……靴下に入らないプレゼントばかりねぇ」
「そうだなー、ネルネのスクロールくらいじゃないか? 奮発してやろう」
「ワタルのプレゼントと被らないと良いわね」
「……ワタルのプレゼント見てからどれにするかを決めるか」
さて、そしていよいよソトの手紙だけど。
「少し開けるのが怖いなぁ」
「さっさと開けなさい、私たちの娘でしょ。多分サキュマちゃんの靴下とかよ」
「それはそれで嫌なんだが……えーっと?」
『サンタさんへ。ため込んだ靴下全部ください! さもなくば……』
うーん、強欲だなぁ! さもなくば、なんだってんだよ。臭わせんな。
「どうするこれ?」
「多分下手な靴下だとダメそうね。なんかこう、特別感のあるレア靴下で納得させましょ」
「うーん、キヌエさんの靴下……とか?」
「身内感が強いし、調達するのにキヌエの協力を得ないといけないのがネックね。もっとこう、ゴレーヌ村の外で調達したいわ」
と言われても、ゴレーヌ村の他に靴下貰うアテなんてないぞ。
「ナリキンとロクファに頼んで、聖王国で調達してもらう?」
「……いや、ここはテンさんに頼むか。『白の秘め事』管理人、ハクさんとこのシルキーの靴下なら割とレアそうな感じがあるだろ」
「なるほど。私からも姉様に頼んでおけば間違いないわね。いっそ、四天王靴下詰め合わせとか?」
「それはクリスマスプレゼントには贅沢すぎるなぁ」
むしろ俺が欲し……いやなんでもない。
ともあれ、これで全部だな。教会のシスター見習いミチルとかツィーア領主の娘マイオドールの手紙もあったが、これはそれぞれの保護者にそっと転送したのでそちらで対応してもらおう。
……ん?
「ロクコ。なんでお前の手紙もあるんだ?」
「決まってるじゃない。私もケーマからプレゼント欲しいもの」
「ま、プレゼントを配置できるのもロクコあってのことだからいいけどな。で、なになに……」
手紙には、簡潔にこう書かれていた。
『ケーマへ。ちゅーして?』
「……」
「わぁ、ケーマ顔真っ赤。で、プレゼントは?」
「……クリスマスにな、うん」
「ん……期待してるわね?」
かくして、クリスマスには各々プレゼントを貰えて、それぞれ喜んだという。
……ロクコも含む。
(新作、『あとはご自由にどうぞ。~神様が本気出してラスボス倒したので私はただスローライフする~』が今のとこストックあるので毎日更新中です。
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(カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16817330650606750225)
だんぼるとの関連性についてはノーコメントです)