帰宅。
ハクさんの解呪及び話し合いも終わり、ゴレーヌ村に帰宅した。
……頬をつねってみる。痛い。うーん、多分夢ではないな?
「? 何してるの、帰るなり頬つまんで」
「ああ、うん。夢かどうかを確かめる儀式みたいなもんだ」
夢の中でも頬つねったら痛いけど、夢の中で夢かどうかを疑ったら夢だとわかるくらいには睡眠のプロだぞ俺は。なにせオフトン教式のお祈りをほぼ毎日してるしな。
「で、夢じゃないって分かった?」
「あー……本当にハクさん、俺とロクコの仲を認めてたんだなぁ……って」
「じゃなきゃ姉様、条件付きでもキスしていいとか言う訳ないでしょ」
私ずっとそう言ってたじゃないの。と唇を尖らせるロクコ。
……いわれてみればそうかもしれない。それがハクさんに100回キスしたら俺に1回していいという『それハクさんがロクコにキスされたいだけだろ』なレートの話でもだ。
「で、ケーマ。婚約式はいつにする? 姉様はいつでもいいって言ってたけど」
「適当な日時言ったら、他人の予定があっても上から潰しそうだな……空いてる時間を調べてもらうか」
「調べてもらうわ。なるべく早くね」
ロクコは間近の空いてる日にする気満々のようだ。
正直、婚約することに否やはない。無いはずなのだが……なんだろう、何故か気が進まない。
おそらく、まだハクさんが認めてくれていた点について実感がわいていないのだろう。
「とりあえず、結婚式のためにもダンジョン上公園を完成させないとね!」
「あれ、結婚式はオフトン教教会でやればいいんじゃないか?」
「それはそれ、これはこれ! いいじゃない、どうせオフトン教に神様はいないんだから」
確かに。神様のいない教会で、誰に何を誓えというのやら。
特に俺は教祖だし……レイあたりに誓うとか?
「いっそソトにでも誓う? 私たちの子供だし」
「子供に誓う結婚かぁ。子はかすがい、ってことかな……」
でも案外悪くない案だ。ソトも亜神で神様なわけだし。いっそオフトン教の神様に就任してもらってもいいかもしれない。
* * *
さて、そんなわけでロクコが色々手配しに行って、俺は俺で自分の部屋に戻った。
「どれどれ……っと」
俺はハクさんから受け取った『神の下着』を調べてみることにした。
箱に入っていた『神の下着』は女性ものの黒くセクシーな下着だったが、俺が手にした時点で男性物の下着に変わった。
パジャマ等と同様に外見はお好みで変わるということなのだろう。
……変化前はハクさんかクロウェさんの下着の外見だったということだろうか。いや、深く考えるのはやめよう。
「というか、上下2パーツだったのが1パーツになったんだが……どうなってんだこれ。いや、そこは深く考えても仕方ないところか」
効果については、ハクさん曰く『百年早い』とのことだったから実際に使うのはともかくとして……特にこれと思って効果を使わなければ、発動されないだろう。『神の掛布団』と同様に。
間違って使わないように使い方はお父様の方に聞いておこう。
じゃ、とりあえず履いてみるか。ゴソゴソ……
……うん、新品の下着を履いてるかのようなスッキリ感。さすが神の下着、付け心地は最高だな。
「って、さっそくお父様から返事が来てる。……ああうん、そうか」
下着の固有能力としては、夜の生活における魅了効果というか。ハクさんが口を濁したのもさもありなんという能力。
あと装備状態のまま脱ぐというか、消すこともできるらしい。
ステルス装備ができるのはその、本当に強いかもしれないんだけど……どういう用途で作られた機能かというのを考えると微妙な気持ちになる。
脱がずに脱げるってね、うん。
「それと清潔効果――【浄化】はあるけど、常時発動みたいな感じのもあるのか」
下着は衛生関係の衣類だ。他の『神の寝具』シリーズも汚れに強いわけだが、下着は特に強い効果を持たせているらしい。
で。
「デフォルト形態は女性向け下着、と……ん?」
少し引っかかった。『神の寝具』って創造神のために作られた装備だよね?
……ということは、創造神は女性なのかな。
ふーむ。世界の産みの母、か。
「ご主人様。失礼します。お掃除に来ました」
「ん? ニクか。あ、ちょっとまて」
下着姿だったので、『神のパジャマ』――ジャージを着てから呼び寄せた。
とりあえず、『神の下着』の調査はこのくらいで十分かな。
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