VS10番コア
「……まさかこんな落とし穴があるとはなぁ」
俺は早速10番コアの配下ダンジョンを一つ攻略した。そこで、一つ落とし穴があった。
いや、ダンジョン自体は非常に簡単だった。
ただの迷路にただのモンスター、罠なんかもそんななくて矢が飛んでくる程度。特筆すべきはアンデッドっぽいって事以外何もないダンジョン。
ネズミを先行させたらあっという間に踏破してしまった。そもそも毛布でダメージ食らわないし、【エレメンタルバースト】でボスもサクサク突破できた。
尚、今は【人化】して攻略している。リビングアーマー姿より動きやすいんだよな。歩いてガシャンガシャンうるさくないし。
では落とし穴と言うのは何かというと。
「まさか、『憑依』状態でダンジョンコアを破壊しても勇者スキルのレベルが上がるとは……」
勇者でもある俺は、ダンジョンコアを破壊すると勇者スキルを取得するかレベルが上がる。
ただし、魂に刻まれた勇者スキルを急成長させてしまうと、ダンジョン破壊の本能が植え付けられて『神の尖兵』と化してしまうらしい。そうならない為には年に2、3個が限度だとか。
今回の敵はアンデッドっぽいけどダンジョンコアには変わりなく、レベルアップに有効だったようだ。……まぁダミーコアでもレベル上がるもんな。まったく、下手に殺せない敵だったとはなんという落とし穴だ。
『このまま全部破壊したらレベル15アップしちゃうのかしら』
「そんなことしたら魂の汚染が進んで光神の尖兵になっちゃうだろ」
こんなこともあろうかと少しは余裕をもってたんだけど、さすがに15個は多すぎる。
……次は破壊前に『憑依』を解除してみるけど、もし『ダンジョンの者が壊したからマスターの俺がレベルアップ』みたいな判定だったらもう手が出せないぞ。
と、そう考えていた時ソトから声がかかった。
『あ、パパ。それなら私がなんとかしますよ』
「ん? ソトの【ちょい複製】もレベル上がるのか?」
『あー、上がればまともな勇者スキルになるかもですね。……ですが、壊さなくてもダンジョンコアを私の【収納】ダンジョンにしまっちゃえば勝利ですよ』
「おいおい、それってダンジョンコアを【収納】に仕舞うようなもん……そうか、できるのか」
確かに、考えたらソトが産まれる前は【収納】に入れっぱなしのコアだった。
つまり、ダンジョンコアの本体は【収納】に仕舞えてしまえるのである。
『へぇ、良いアイディアねソト。それなら多分敵のダンジョンは機能不全になるわ。コアとダンジョンが切り離されるわけだから当然ね』
「神属性があるから、ダンジョンコア自体は動けるが……それだけか。大したことはできない。せいぜい中で動けないモンスターを出すくらいか?」
『はい。私のダンジョン内ならDPを補給される心配もありません。牢屋にでも仕舞っておけば大丈夫です』
となれば、後々時間をおいて余裕があるときに壊せばいいということだ。
……まったく本当に便利だな【収納】ダンジョン。
「あ。ダンジョンバトルのゲートはどうなる? 出しっぱなしにならないか?」
『普通に私達の勝利でしょう。だって、相手のコア本体にタッチすれば普通のダンジョンバトルとしては勝利ですし。なんなら一通り終わってから闇神に片付けてもらえばいいわけですよね?』
……おう、娘が賢い。
『名案ねソト。というわけでケーマ、さっさとそのダンジョンも攻略しちゃいなさい!』
「そうだな。ニク、道はどっちだ?」
『はいご主人様。次のカドを左です――まってください、敵、10番コアがあらわれました。ボス部屋で待ち構えているようです』
10番コアが。流石に配下のダンジョンを1つ片付けられて、阻止しにきたか。
とはいえ、今の俺は最強の『神の毛布』装備だし。臆する必要はこれっぽっちもない。
「……仕留めるか?」
ダンジョンコア破壊によるレベルアップは、あと1個がギリギリのラインだ。俺が仕留めるなら、もうこのタイミングしかない。
もっとも、10番コアともなればハクさんや大魔王と同レベルの最上位。今がダンジョンバトル中で全力を傾けられない点を除いても、倒せるかどうかは怪しい。
が、倒せずとも俺の方で10番コアの注意を引き付ければ、ダンジョンバトル側でハクさんが10番コアのダンジョンを攻略できる可能性がかなり上がるだろう。
「よし、仕留められれば仕留める方向で。ロクコ、ハクさんに10番コアと戦闘を行うと連絡入れといてくれ」
『! 分かったわ、頑張ってねケーマ! 無事帰ってきたらご褒美に凄く良いことしてあげるから!』
凄く良い事ってなんだ……? いや、そもそも俺の本体マスタールームで横になってるし、万一何かあってもナリキンは復活させられるし。無事に帰れることは確定だろうに。
まぁいいか。とにかく10番コア相手にどこまでやれるかだ。
俺は、ニク操るネズミの案内でダンジョンのボス部屋――10番コアの元へと向かった。
* * *
土むき出しの巨大な空洞。そこに法衣と宝石で身を飾った老人、10番コアが待ち構えていた。10番コアは俺の姿をみると、獲物を見つけた肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべる。
「……クククッ、よく来たな。貴様の名前を聞いてやろう、名乗るが良い」
「そうだな。じゃあ獅子堂レオナだ」
「ハッ! ふざけるなよ貴様、明らかに嘘ではないか!」
目を赤く光らせつつ10番コアが威嚇の魔力を放つ。『神の毛布』に守られているのでビリビリと空気が震える感覚しか伝わってこない。
「当たり前だろう? 誰が馬鹿正直に名前を言うんだよ。呪われたらどうする」
「ふん、最低限の心構えはできているか。まぁよい、跪け――【ギガグラヴィティ】!」
10番コアが錫杖を掲げて魔法を放つと、黒い波動が水平な輪となって広がった。魔法名からしてダンジョンで使っていた重力攻撃【メガグラヴィティ】、その上位版だろう。が、俺にはなんの影響も感じられない。
「何かしたか? とうっ!」
反撃として【エレメンタルバースト】を10番コアに向けて放つ。白い光の奔流がバシュンッと10番コアに迫り――
「やはりそのマントは防御系、神の装備か。ククク」
10番コアのすぐ手前で光が二つに割け、10番コアを避けて後ろの壁へぶつかった。
……効かないのかぁー。うん、俺のメイン攻撃だったんだが。
そして、俺がマントに変えて装備してる『神の毛布』を見て不敵に笑う10番コア。……もしかして、睡らせる以外にこの毛布の絶対防御を突破する方法があるのか? 念の為【気絶耐性Lv9】が有効にしてあることを確認しておく。うん、これは大丈夫だ。
「おい貴様。神を殺す方法を知ってるか?」
「神を……ああ、聞いたことあるけど? 確か、信仰だか権能を奪う、だっけか?」
「ハハハ! そうだな、それは確かにそうだ。が、それだけではない。力ずくで殺す方法だ。例えば貴様のマント、恐らく神級の防護がかかっているだろう。……だがな」
そう言って、10番コアは錫杖を高く掲げる。
「超魔法発動――【エンチャントルート:D】……神であれば、神を殺せるのだ!! 【Fグラヴィティ】!!」
直後、俺の身体が地面に強烈に押さえつけられる感覚。重い、重すぎる。立っていられず跪く。腕がもげそうな重さに、手を地面につく。
「がっ……な、ん……っ」
「カハハハ!! そうだ、その姿勢であればこの余の前に居るに相応しい。だが、まだ喋れるか、よほどそのマントは優秀な装備のようだ」
顔も上げられず、倒れ込まないのに必死な俺に、10番コアは歓喜の感情を隠さずそう言った。
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〆切は9月25日(日)まで。だんぼる、最終巻が出たのでこれが最後のチャンスです。
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タイトル:
絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで
著者名(レーベル名):
鬼影スパナ(オーバーラップ文庫)
実のところ10人から1位として投票されるとそれだけでかなり上位に行ける計算なので、一人当たりの割合がかなりある模様。ルールを守って有効票な投票をお願いします!)