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レイドダンジョンバトル(6)


 10番コアのダンジョン、50階層にあるボス部屋の扉。


『どうする? ハク様達を待つ? それとも行っちゃうかい?』

『そうね、折角1番乗りしたんだし! ここまできたら行っちゃいましょう!』

『お、行くのか! ボスを消耗させられれば、ハク様からの報酬が期待できるもんな!』


 先輩方はやる気満々のようだ。


「なぁ先輩方。そのまえに現状の戦力を確認しておかないか? 例えばキノコ先輩の植物戦士(ソルジャープラント)、在庫はどのくらいで?」

『ん? そうだな、100体くらいかな。別に使い切っちゃってもいいよ、どうせハク様が補填してくれるからね』


 そういってマイコニドの先輩がキノコ頭をぽふんと揺らす。ぱらぱらと種が数粒落ちてきた。

 植物戦士(ソルジャープラント)は、ゴーレムで言えばアイアン程度の強さを持った量産できるマイコニド先輩の主戦力だ。種状態で持ち運びできるのが利点だ。


「吸血鬼先輩と犬先輩は?」

『こっちは見ての通りよ。レッサーヴァンパイアが30体。ちょっと消耗しすぎたかしらね』

『犬言うなし。まぁ犬なんだけどさ……こっちも見ての通り、シャドウウルフ10、フレイムウルフ20、セイントウルフ10ってとこだね』


 それぞれ単体でアイアンゴーレムより少し強い戦力だ。

 犬先輩の方はアンデッドという事は事前に分かっていて用意した有利な属性だから、アンデッド相手にはもう1段上に相当する。


 で、こちらは(ジャイアント)テストールが1体、ネズミファンネルが適宜と。


『で、どうするゴーレム後輩?』

『ていうかなんで後輩が仕切ってるのかしら。まぁいいんだけど』

『正直俺は多くの仲間を率いて戦うのに向いてないからな。任せられるのは助かる』


 そう言って俺(ゴーレムアバター君)を見る先輩方。判断は俺に任された。

 さて、俺の判断は突撃か待機か――



「よし、ハク様に指示を仰ごう!」



 A.さらに上司(ハクさん)へ丸投げ!


 そう言うと、先輩方は『えぇー』という目をこちらに向けてくる。


「なんだよ、勝手に突撃して怒られるよりはいいだろ。折角連絡がすぐ取れる状況なんだし」

『まあ、そうなんだけどね。期待の新人がビシッと決めてくれるものかと』

『私としては後輩に率いられるよりはハク様の指示って方がいいけど、拍子抜けね』

『妥当な判断だと思うよ、いいんじゃないか?』


 これが一番(気が)楽だと思います。

 仮にそれで自分で考えろ、って言われたらこちらに委任した上司の責任。

 行けと言われてこのメンバーで突撃して全滅しても上司の責任。

 仮に勝ったら上司の判断と俺達の功績だ……だってハクさん一番上だから俺達を評価せざるを得ないし。


 これが通じるあたり、この派閥はすっごくホワイトだと思うよ。ハクさんなだけに。




 というわけで、ハクさんにお問い合わせしてみたところ、『各フロアを制圧するのにしばらく時間がかかります。合流まで待ってもいいですし、先に挑んでも構いません。挑む場合は情報を共有してください』という回答を得られた。

 倒せなくても情報が功績になるそうだ。ちゃんと評価してくれる上司で嬉しいね。


『で、改めてどうする? 僕としてはここもゴーレム後輩のネズミに偵察してもらうのがいいと思うんだけど』

『奇遇ねキノコの。丁度私もそう思ってたわ! 道中と同じ感じね』

『一番使い捨てやすい駒だからな。頼めるか、後輩?』

「あいよ。そのためのネズミだ、任せてくれ先輩方」


 俺はボス部屋の扉を小さく開ける。そして、先鋒としてネズミを数匹送り込んだ。


 部屋の中は広い神殿のような空間だった。白い石畳の床に、パルテノン神殿のような縦溝の入った柱。正面は数段高くなって神殿の入口のよう。ただし、その扉は閉まっている。それと、壁には引き出しらしきものが並んでいる。中に何かがあるのだろうのは間違いない。

 ……それにしてもまるで、光神教の建物だ。アンデッドに似つかわしくない神聖さがそこにあった。


 とりあえずは(ジャイアント)テストールでも問題なく戦えそうだが、どんなギミックがあるかが気になるところだな。


 ネズミ達が部屋の中央まで来たところで、入口の扉がバタンと閉じた。

 正面、神殿入口――ボス部屋の出口に、豪奢な法衣に身を包んだジジイが現れる。


「お、10番コアよ。集会で見たことあるわ」

「本当かロクコ」

「じゃなくても、こんな場所に普通のお爺さんは居ないと思うわ?」


 それもそうだ。とりあえずはこのジジイが敵なのには変わりない。


『よくぞ来たな、虫けら共――む? おい、どこにいる?』


 キョロキョロと部屋を見回すジジイ。

 俺と先輩たちは、扉の外でネズミ達の視界を共有していた。


「なぁ、うちのコア曰くアレが10番コアって話なんだけど、どうなの先輩方」

『ああ。間違いないよ、10番コアだ』

『モンスターを自分と同じ姿にしてる可能性はあるけど本人ね』

『それにしてもネズミ相手に閉じ込めての挨拶とかちょっと滑稽だな、ぷぷっ』


 うん、先輩方からも10番コアだという確認がとれた。


「ちょっとケーマ、私の言う事を疑ってたの?」

「そうじゃない。確認は多く取れた方がいいからな」


 ロクコに軽くつねられつつ、ネズミで10番コアを見る。

 ようやくそのネズミの視線に気が付いた10番コア。へけっと首をかしげて見せると、10番コアは手に持っていた錫杖を振り上げて叫んだ。


『なんだこの汚らわしい下等生物は!? おい! さっさと入ってこい!! 扉の前にいるのは分かっているのだぞ!! 闇よ、命を奪え――【ダークショット】!』


 ネズミに向かって闇魔法を放ち消滅させる10番コア。格好つけた挨拶がスカされてさぞご立腹だろう。


『光神教の教皇をしてたって聞いてたけど……様式としては光神教の共同墓地ってところだ。罠も沢山ありそうだな。……たぶんあの引き出し、死体が入ってるね。とっておきのアンデッドが仕込まれてるんじゃないかな?』

『そうね、ニンゲンサイズの死体だと思うわ。それと今の様子を見るに、一度に入らないと多分戦力は分断されるとみていいわね。少数精鋭か、無理矢理にでも一度に入るか……』

『錫杖はアダマンタイト製だった。あの装備はニンゲンに作らせたのか? 魔法を強化する性能もあるけど、近接攻撃にも使えるだろう。油断はできないな』


 ネズミの視界を映したモニター映像を見て、先輩方が分析する。

 さすがの分析力。先輩として伊達ではないところを見せつけてくるじゃないか。


『……どうする? 10番コアの姿を確認しただけでも十分な功績だけど。行くかい?』


 マイコニド先輩がキノコ頭を揺らして問いかけてきた。上司は好きにしろと言っているし、負けたところで別に問題もない。



「このままネズミだけ送り込んで挑発したら、向こうからこっちに来てくれそうじゃないか? ここで待ち構えて迎え撃つってのはどうだ。罠を仕掛けてそうな所に分断されつつ殴り込みに行くよりいいだろ」

『ボスがボス部屋から出るわけには行かないから、何かしらの戦力を送り込んでくるんじゃない? ああ、いや。それも狙いか』

『こっちが戦力の分断を誘うわけね。ボス部屋前だけど、十分戦えるだけの広さはあるし良いと思うわ』

『敵のダンジョンに乗り込んでおきながら敵に攻めさせるっていう発想はなかったな……これがマスターの力ってやつか』


 ダンジョンバトルは何でもアリなのだ。単にボス部屋前に拠点を作って時間稼ぎするだけともいえなくはないけどな。

 というわけで、敵の罠だらけのボス部屋に入らず、敵をつり出す作戦でいこう。

 まぁ、相手が乗ってこなかったらその時はハクさんとの合流を待つだけだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ沸点低そうなのは挑発するに限るよな!
[一言] 相変わらずさらっとえぐいこと言い出してて笑うw
[良い点] ハクさんはワタルやケーマみたいな勇者には結構ブラックな仕事押し付けてるよね 564番四天王の怒のヒニィールを思い出す。 「一度に入らないと多分戦力は分断される」ってことは、中に入れたネズミ…
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