光神との邂逅
(新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします)
『神の掛け布団』でどうして光神に会えるのだろうか?
そう思いつつもロクコから掛布団を借りて眠りにつくと、俺は白い空間にやってきていた。
「……いや、夢かこれ――って、おっと」
「やぁ、ケーマ君。久しぶりだね」
そして、そこには俺に向かって手を振る光神がいた。これは夢――いや、夢なんだが、夢じゃない夢ってやつか? ん、ちょっと混乱してきた。
光っていて表情は分からないのだが、多分、笑っていた。眩しい。
「おや? 混乱しているね。掛布団を使うのは初めてだったかい?」
「掛布団、いやまぁ、何度か使ったことあるけれども……」
「ああ、そうか。『使われた側』だったってことだね」
「『使われた側』? どういうことで?」
「掛布団にはね、指定した相手と同衾できる効果があるんだよ。ケーマ君風に言えば抱き枕を指名する機能、かな? でも、それが会えない相手だと夢の世界で会えるだけになるんだよ。丁度いいことにね」
……それで今、光神と会ったという事か。光神に会うと考えて寝たから。
「流石に魂が輪廻に帰った相手だと空想になるけどね。逆に、物理的に会うことが可能な人物なら色んな因果を改変して掛布団に誘える程だ。特定の人と会いたいならほぼ確実に会えるアイテムだよ。そっちの世界では一度使うと1年使えないけど、探し人が居るなら使ってみるといい」
神相手だと断られるかもしれない上に、次使えるのは1年後だけどね、と光神は言う。
そうなると混沌神であるレオナには使えないんだろうな。
……うん? 夢の世界を共有できる、ということは……『神の掛布団』をつかった時に見た夢は、相手も同じ夢を見てる――むしろ相手が本人ということ? だよな? いわゆる夢を介したリモート会議みたいなもんだし。
「おや、自分が同衾された側の記憶が? いや、心当たりかな」
「……」
「あるんだね。ふふふ、君がマスターの闇神の子か。夢の記憶は残すも残さないも、夢だったと思わせるも所有者の自由だ。ただ、効果は確実に発生する。つまり、君が覚えてないならそういうことさ」
「そっすね……」
戻ったら、ロクコに少し問い詰めたいことができたな。主にハクさんとこでダンジョンバトルやった後の時のことだ。2回ともだ。
光神が一人掛けの白いソファを2つ出す。一つに光神が腰かけ、もう一つに座るよう俺を促す。
「さて、まぁ座りなよ。大丈夫、君のトコのダンジョンコアちゃんみたく取って食ったりしないからさ」
「はぁ、それじゃ失礼します」
「君からちゃんと敬語使われるなんて、少し新鮮な気分だよ」
「その節は寝ぼけてたのですみませんでした」
「いや、いいよ。僕もつい勇者スキル封印状態で送っちゃったしお相子だ」
一応謝っておくと、光神はあっさりと許してくれた。……というか、俺のスキルって封印されてたんだ。実際、はじめて番外ダンジョンコアを壊すまで使えなかったけど。
「……勇者スキルを封印、とかそういうのもできるんですね」
「できるさ。僕は勇者の父みたいな存在だよ? 闇神がダンジョンコアの父を名乗ってるようにね。集会なんて面倒なもの開いてないけれど」
勇者にも集会とかあったら、俺もワタルに自分が勇者だってことを隠せないしなぁ。
もし俺も勇者だと認識されたら今以上に鬱陶しくなること請け合いだし、引き続き隠していきたい所存。
「知ってる? あいつマメでね。会場や料理、酒も全部自分で作ってるんだよ。メール機能のように外注すればいいのに」
「メール、光神様にも届くとは思いませんでしたよ」
「闇神が自慢して押し付けてきたんだよ。とてもウザかった」
押し付けたりウザがったりする程に仲が良いのか悪いのか。話を聞いてると悪友くらいの距離感に聞こえてくる。
……てっきり、ダンジョンと勇者って闇神と光神の代理戦争でもしてるのかと思っていたんだけど、違うのか? 聞いてみるか?
「君たちのしていることは、僕らの代理戦争じゃあないよ」
「……声に出てました?」
「夢の中だ、考えた事くらいわかるさ。君に誤解されたくないから言っておくけど、奴は物造りが得意で、創造神様に取り入るのが上手いんだ。腹の立つことにね。だから敵であることには変わりない」
創造神様。やはり、闇神と光神の上には創造神様が鎮座ましましているのか。
「それで、僕らがやっているのはそれぞれ創造神様に頼まれた仕事なのさ。あっちはダンジョンを造り、こっちは勇者で壊す。破壊と創造のバランスがうまく取れれば、世界は順調に発展するという寸法だね。異世界勇者は文化も持ち込むし」
「……俺らは神の下請けでしたか」
「どちらかというと社長と社員みたいな関係かな。君は掛け持ちでどちらにも所属してるから、スパイや工作員みたいな感じだね」
スパイだったか、俺。……どちら側のスパイなんだ?
いやまぁ、所持してる情報を考えるに光神から闇神に送り込んだスパイみたいな感じだけど。
「あ、それで。教皇の正体がダンジョンコアだっていうのはどういうことです?」
「そのまんまの意味だけど。何か理解の難しい事ある?」
「……そいつもスパイってことですか?」
「彼のダンジョンは今の聖王国の領地にあってね。生き延びるためには、権力でダンジョンを隠すのが最適だったのさ。不幸にも、教皇の座は僕への連絡手段があってそれで僕に味方せざるを得なくなった――だったらよかったのかな?」
ここで、光神が肩をすくめる。
「彼は闇神に成り代わることを企んでいて、むしろ積極的に僕に連絡を取って来たんだよね。光神教、聖王国は勇者をサポートするために僕が神託を下して用意したんだけど、僕の力を使うとその分聖王国に勇者が召喚されない制約があるんだ。なのに遠慮なしに使うもんだから、彼のせいで聖王国に勇者が召喚されたのは本当にわずか、片手で数えられるほどさ。僕もいい加減彼にはウンザリしていてね」
「それで、こちらに快く情報をくれるということですか」
「スパイの君にはぴったりだろう? この場合は両陣営の架け橋と言うべきかな」
「できれば闇神様にも光神様にも敵対はしたくないんで、架け橋でお願いします」
「おっけー。で、何を知りたい? 答えてあげよう。僕が知っている事ならね」
……果たして本当のことを答えてくれるかどうか、というのはあるけど、その真偽を判定するのはハクさんに任せて「光神が言っていた」って形で伝えればいいか。
スパイっていうより、伝書鳩だなコレ。まぁいいけど。
「では教皇の正体、かのダンジョンコアは何番コアですか? できれば、何型のコアかも」
「ああ、4番コアとか名乗っていたよ。人型だけど、正体はスライムだと自称していた」
そう言ってから光神は、ふうと息を吐く。
「……ま、嘘だけどね。光神である僕を欺けると思っていたのかな? それに4番コアといえば初代聖女の勇者を奪ったヤツだ。間違えるはずがないんだよ……まったく、忌々しい」
そうして、光神は今度こそ教皇の正体を言う。
「奴の正体は、10番コアとか言う奴で、アンデッド型コアだよ」
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