破壊活動をしよう!
聖王国にある謎施設。あそこをハクさんの依頼を受け破壊工作をすることにした。
さーて、どうやって破壊するかな。方法はいくらでもある。
特に、ナリキンに『憑依』して行けば色々できる。
ナリキンは俺の外用ボディとして作っただけあって、ほぼ俺が行くに等しいスペックになる。保有魔力の差はあるが、それだってマナポーションをガブ飲みすればいいだけだ。
【エレメンタルバースト】に必要な魔法は覚えさせているから、俺が『憑依』すれば撃てるようになったりもする。
そして【クリエイトゴーレム】も覚えさせてるので、鍵なんかもチョチョイのチョイで意味がない。
だが、大事なのはここが手札の切り時かどうかだ。
確かにナリキンで活動すれば破壊工作は可能だろうが、ナリキンが聖王国にいられなくなる可能性も多大に出てくる。
ナリキンを使い捨てる気はないので、そこが結構厄介な点だ。とりあえず仮面でもつけて顔を隠すのは確定だな。
「ケーマ、良い手があるわよ」
「ん? なんだロクコ?」
「犯行後にナリキンの顔を変えてしまえばいいのよ!」
ダンジョンの強化機能で『人化』を行っているナリキンだが、その顔は平均的帝国成人男性の顔。それを『人化』の調整で別の顔に変えてしまえばいい。という提案だった。
つまり、指名手配された犯罪者が整形して顔を変え逃げる、みたいな。いやまぁまさにその通りの事をしようとしているわけだし、確かに有効なんだろうけど。
「できるのか? そんな事」
「できるわよ。ナリキンの顔をいつケーマのにしてやろうかと虎視眈々と機会を窺ってた私に隙は無いわ。1回500DPもあればいけるわよ」
そんな機会を窺ってたのかお前は……まぁ、つまり色々確かめ済みってわけだな。
ダンジョン機能は本人の認識によって制限解除される機能もある。出来るんじゃないかと思ったら実際できた、という機能だろう。
「つまり、普通に犯行時に顔変えておけばいいと」
「……えー、ずっとケーマの顔にしましょうよ」
「まぁこれまで情報収集してた今の顔とすっぱり切り離して、次の町からキレイな状態で、というのはアリだな。検討しておこう」
犯行にあたって顔を変え、犯行後にさらに顔を変えれば万全だろう。合わせて1000DP、今の俺たちには軽い出費だ。
「仮に死んだら――まぁそん時はDPで復活できるから、むしろそっちの方が捕まるより手っ取り早い。復活に掛かるDPはそこそこ重そうだけど」
あとどこで復活するのかも少し気になる所だけど、どこでも問題ない。たとえ死体置き場で復活したとしてもソトの【収納】ダンジョンで回収できるだろう。
「ま、捕まったらロクファで助けに行ってあげるわ」
「そうだな。天使がバックについててあの施設を襲えと言われたんだから、むしろ宗教的にも正義がこちらにあると言い張れるかもしれん」
「私の夫に何してるのよーって乗り込んでいってあげるわ!」
……まぁ、ナリキンとロクファは夫婦設定だからね。
「テロリストが天使の夫とか言われたらどう反応するか見てみたい気もするよ」
「ふふっ、確かに。光神教の連中がどんな顔するかしらね? わざと捕まっても良いわよ」
「さすがにわざとは捕まらないぞ」
そういえば一昔前のゲームによくある勇者とかも、少人数で敵の頭を殺しに行くあたり相手からしてみればテロリストとか暗殺者の類だよなぁ。
「じゃ、顔を変えてひと暴れしてくる」
「はーい、行ってらっしゃい」
かくして、「ナリキンに『憑依』して暴れる作戦」が決行されることになった。
*
クロマクの、隠し通路がある小屋までやってきた。時刻は夜中。人気はしないが、念のためネズミを通気口から先行させて人がいないことを確認しつつ、そっと扉に手を伸ばす。
鍵がかかっていたが、【クリエイトゴーレム】を無詠唱して鍵に魔力を流し込み、ゴーレム化。そして、自分から開いてもらう。物理的な鍵はこれで一発という、我ながらひどいスキルだ。
そうして入った先にあるのは床下収納のような下り階段の入り口だが、今日は木の板で作られた蓋が掛かっている。丁寧に鎖と鍵までかけられていた。先日は誰かが使って開けっ放しになっていた状態だったのだろうか?
とはいえ、ネズミならともかく俺には普通の蓋だ。鎖だって【クリエイトゴーレム】でゴーレム化、ぶちっと外すだけ。
うーん、よく考えたらこれ、オリハルコンの鎖とかがかけられてても突破できちゃうんだよな。俺ってばダンジョンマスターじゃなかったら世界的怪盗にでもなれそうだ。
『ネズミに【クリエイトゴーレム】覚えさせておいたらとんでもない事ができそうじゃない?』
「ん、ロクコか?」
『ええ。ハク姉様に渡す記録映像を録画しておこうと思って、ロクファに『憑依』して見させてもらってるわよ。もちろん、編集するけど』
「……提出映像は、俺もチェックする。今のトコ、トイにも見せてないよな?」
『もちろんよ。というか、ロクファだけだとトイにも見せかねないから私が『憑依』してるんだからね』
ならいい。【クリエイトゴーレム】は切り札だからしっかり編集でカットしてもらわないとな。
『どう暴れてくれるか、楽しみにしてるわ!』
「楽しみって、娯楽じゃないんだけどなぁ。……ま、いいか」
マナポーションを一本くいっと飲むと、薬液は胃にたまらずスッと身体にとけるように消え、マナが回復していく。
さっきロクコが言ってたネズミに【クリエイトゴーレム】だけど、ナリキンでこれだし、魔力保有量がさらに少ないネズミじゃ余程鍛えないと【クリエイトゴーレム】をまともに使えないだろうな。
さて、この後の予定としては、黒い球の破壊は後回しにして、先に動力源となってる神具を確保する。しかる後に巨大魔道具を壊し、最後に黒い球を破壊するようにする。
理由としては、あの黒い球がダンジョンコアなら、壊した途端に崩落して施設が全部埋まるという可能性があるからだ。巨大魔道具はしっかり壊しておかないと、掘り返すだけでまたすぐ使えるようになってしまうだろうし。
……というか、一応通路は整備されて補強もあるようだけど、もし崩落となると地上も大変なことになりそうだ。できるだけなんとかしたいところではあるけれど、ダンジョンにとって敵の国だし、どこまで配慮する必要があるのかって話だよなぁ。
あんまり無関係な人が巻き込まれないように、光神にでも祈っておくか。
(前回に引き続きのおしらせ。
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9月30日まで!
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だんぼるのLINEスタンプとかってありなのかな。コミック版とかなら行ける気がする。
というわけで、あとがきのお知らせでした)