もぐもぐソトちゃん
(ソトちゃん変態すぎると不評なので、来週あたりこの話がお蔵入りになってるかも)
村長邸は俺の部屋にてごろごろと特に何もせず休んでいると、【収納】ダンジョンからソトがぴょこっとやってきた。
「パパ、おやつにスキルスクロール食べるの飽きてきました!」
「来るなとは言わないけど、部屋に入るときはドアから入ってくれよ。あんまり足つかってないと筋肉衰えるぞ?」
「ダンジョンコアだから大丈夫です! あとパパに言われたくないですね?」
うぐ、まぁ俺も結構寝てばっかりでひ弱だけどもね。
「そんなことよりおやつの問題です!」
「……口で食うからじゃないか? ダンジョンで食べたら一瞬だろ。プリンや菓子パンもあるんだから、おやつとしてはそっちを食べればいいじゃないか」
「そうなんですけど、せっかくなら味も見ておきたいじゃないですか」
ソトがどこぞの漫画家みたいなことを言い出した。
そもそもスキルスクロールって味するもんなの? インクとか羊皮紙とかの味?
「火属性はあったかい味、水属性はしっとりした味、みたいなかんじですね。初級より中級の方が味が濃いです。【ライトニングボルト】とかは気持ちピリピリしました」
「属性とかで味が変わるのか……知らなかった」
「あれ書いてるインクに魔石入ってるみたいだし、多分その味かなって」
まぁ普通は食べるものじゃないから当然なんだけど。ソトは特別な魔力的味覚を持っているのかもしれない。
試しに火属性の魔石を出して舐めても、石の味しかしなかった。気持ち人肌な温度っぽかったけど。
「そこで! パパに相談ですが、スキルスクロールをちょーっと変形させてほしいのです!」
「ん? 変形……ってことは、【クリエイトゴーレム】で?」
「はい。それでスクロールを靴下にしてもらえないかなーって」
「うん、靴下が食べたいのは分かったけどさ。……スクロールって靴下にしてもいいもんなのかね?」
「そこも含めての実験です! さらに、それをキヌエさんに1日履いてもらっても大丈夫かをテストしましょう! 一番働き者なので耐久試験にもってこいです!」
「……成功した日には、ソトの複製するスクロールからキヌエさんの足のニオイがするようになるな」
「むしろそれいいじゃないですか! むはー! 最高!!」
目をキラキラさせる我が娘。ダンジョンコアで生態が違うとはいえ、さすがにやりすぎではなかろうか。
でもまぁ……おやつをスキルスクロールにしてる手前、出来る限りは協力するとしよう。
一応、スクロール以外でも(親子のスキンシップを兼ねて)俺のカタログから1日1個好きなおやつ出すぞとは言ってるんだけど、それで高確率で靴下を要求してくるからなソト。食べるんじゃなくて誰かに履かせてから部屋に飾ってるらしいけど。
「将来的には靴下を3日履き続けたらスキル習得、みたいなスクロールを作れたりしないですかね、パパ!」
「できないし、それは足の無い種族やサイズが合わない奴がスキル覚えられなくなるだろ」
「ちぇー。まぁいいです。じゃ、試しにこれで作ってみてください」
というわけでソトが【ちょい複製】して取り出した適当なスキルスクロールを【クリエイトゴーレム】で変形――
……って、駄目だこれ。変形させようと魔力流し込んだ時点で発動して使用済み状態にしてしまった。既に覚えてる【アイスボルト】だったから特に新規習得はしなかった。
「だめだなぁ」
「ぐぬぬ……パパ、何かいい案はありませんか!?」
「じゃあ逆に考えて味変トッピング方式でいこう。スクロールを靴下にするんじゃなく、スクロール+靴下という考えだ。……トッピングというかラッピングかな?」
クリスマスのプレゼントを靴下に突っ込むが如く、靴下にスクロールを突っ込む。これなら靴下もスクロールも食べれる。見た目的にはロールクレープ……うん、何言ってるんだろう俺。
「なるほど! それならキヌエさんの靴下やネルネの靴下、レイちゃんの靴下と気分によって食べ分けられますね! 贅沢だぁ……ふへへ」
「俺としては娘の将来が心配になってきたよ? 自重という言葉を教えておこうか」
「なにいってるんですパパ! 私はまだ生まれてすぐのいわば赤ちゃん! 将来の事なんて考えずいろいろやる時期なんです! ハチミツの靴下をぺろぺろしたいお年頃なんです! ちなみにハチミツの靴下というのは幸せの象徴という意味のオフトン教用語です」
うん、生後一年未満の赤ちゃんにハチミツは猛毒だしそもそも靴下じゃないっていうか……そんなことはどうでもいいんだけど、そもそもそんな用語作った覚えないぞ? 俺教祖だぞ?
「オフトン教聖典の原典に追記しときました! 既にレイちゃんがミサで読み聞かせてますから撤回はできませんよ!」
「いつの間に……!?」
「パパが聖王国でママとイチャコラしたり、ニクお姉ちゃんと夜一つのオフトンで寝たり、ネルネを呼びだして色々と赤裸々なアレコレしてる間に決まってるじゃないですか」
「いや言い方」
ニクの事以外は仕事だからね!? そのニクも抱き枕だけでやましい事もしてないからね!?
「尚、この話を作るにあたり実際レイちゃんの足にハチミツを塗りたくって舐めましたが何か!」
「うらやま、いや何やってんだお前」
「えー、喜んでましたよ? あの白い足に黄金色のハチミツがまた最の高で。パパもママにやってもらったらいいんじゃないですか?」
そして『ハチミツの靴下』は、働かずに寝ながらも人に利益を与えることができる身分を示す用語となったらしい。こうしてオフトン教に一つ変な逸話が生まれた……
「というか、今更なんですけどパパ」
「なんだ娘や」
「私もお姉ちゃんとかを抱き枕にしたいです。いいですよね?」
「……少しでも嫌そうな素振りがあったら大人しく引き下がるように」
「やったぁ! じゃあ今日は早速キヌエさんを抱き枕だー!」
「気付かないふりとかするなよ! 絶対だぞ!」
「はーい!」
そう言ってソトは【収納】ダンジョンへぴょんっと飛び込んだ。
……。
ソトの教育方針について、ロクコと改めて話し合った方が良いよなぁ……(遠い目)
(あ、それと以前書いた『メシマズ無双オンライン ~山盛りデバフを召し上がれ~』がコミカライズ化しました。書籍版なしのいきなりコミカライズです。
コミックポルカ:https://www.123hon.com/polca/web-comic/msmz/
ニコニコ静画版(内容は同じ):https://seiga.nicovideo.jp/comic/54622
前回更新してからコメントで教えてもらったので、改めて告知です)