お持ち帰り調査+
(16巻執筆中なのでスローテンポ隔週更新継続中です)
あまりにも小さい施設で、これ以上に部屋はなかった。
隠し部屋があるかもしれないので、ネズミ達はそのままこの施設に潜ませておくことにしよう。俺達はハーメルン1の操作をナリキン達に返し、調査・通信を終了した。
さて、それじゃあこちらであの施設にあった魔道具の調査を行おう。以前に果樹園の魔道具を解析したのと同じように。
「じゃ、ケーマ、また【超変身】でお願いね!」
「わかった。しかしあれは流石にデカいよなぁ……いけるか?」
「やってみれば分かる、とはいえ、迂闊にやって潰されちゃったら困るわね。闘技場エリアなら広さも足りるかしら? 私はネルネを呼んでおくわ」
と、ロクコに闘技場エリアへと送られる。全然人が来ないからいいけど、一応手前の通路とかに見張りは置いておこう。
とりあえずは、あの真ん中にあった部屋が心臓部っぽいし、あの中に入っていた神具も気になるし、そこから調べていこう。というわけで、【超変身】……一応変身できたみたいだが、成功したのかな?
「ただいま参りましたー……おー、でっかいですねー?」
「あら? こんな形だったっけ?……ああ。下、見えてなかった部分が増えてるのね」
なんと。あの地下にあった施設の、さらに下にあったのか……そんなデカい魔道具を作るとは、凄いな? ともかく、ネルネに解析を任せることにした。……俺は解体されるまま身を任せるだけだけどな!
「マスターを解体する背徳感にハマってしまいそうですー……」
妙な性癖を開花させるのはやめてほしいな?
*
……そしてネルネの調査、1日経過。
「私の理解できる範疇を越えていますねー。大きすぎて、どこから手を付けたらいいのかわかりませんしー……とても複雑すぎてー、どうしてもっていうなら数年単位かけて解析する感じになりそうですー」
というわけで、匙を投げた。
基本的にお手上げだということだった。流石に俺も年単位でネルネに身体をバラさせるほど暇じゃないし、ネルネにも元々の仕事がある。解析は諦めた方がよさそうだ。
「ちなみにー、動力炉と思われる場所ですがー、こちらは空っぽでしたー」
そして神具がセットされていたはずの場所だが、ここは空だったそうだ。おそらく神具と魔道具は別枠と判定されたのだろう。残念。……潜ませっぱなしのネズミに、どうにか確認してもらっておくか。
「ケーマ。姉様に報告する内容、どうする?」
「……あくまで可能性ということを念頭に置いたうえで、妙なダンジョンコアや施設があったことを伝えるべきだろうな」
「あー、それならー、マスターが【超変身】で実物になって見せたら早いんじゃないでしょうかー? ハク様に【超変身】は知られているのですよねー?」
……なるほど、それは名案である。ハクさんなら何か分かるかもしれないし。
「え、ケーマあの気持ち悪い黒ダンジョンコアになるの? 大丈夫? 汚染とかされない?」
「……『神の目覚まし』をロクコに預けておこうか」
「それなら安心ね」
「もし汚染とかの解除に失敗したらお父様にクレーム入れといてくれ」
きっとアフターケアしてくれるさ、何せこの目覚ましはお父様の自信作だもの。
「それはそうとー、丁度いい機会なのでマスターに聞いてほしいのですがー……私としては他にも気になることがありましてー」
「ん? なんだネルネ」
「ソト様にマスターの変身したのを食べさせたらー、【ちょい複製】できるのでしょうかー?」
……うん? 親を食べさせようとか随分と猟奇的な事を考えるねネルネ。
「ほらー、マスターが【超変身】するじゃないですかー。大きい魔道具になるじゃないですかー。死なないレベルにその一部を剥いでー、それをソト様に食べていただくー、的なー? 魔道具が複製されるかー、マスターの一部が複製されるかー……どきどきわくわくー?」
「……どうなんだろ。勇者スキルと、勇者スキルモドキとが変な反応を起こすかもしれないけども」
俺の身体の一部が複製されるとかだとホラーっぽいな。
「それにー、ソト様にポーションやスキルスクロールを【ちょい複製】してもらったらそれは使い物になるのかー、とかー?」
「……確かに、スクロールが複製して使えるなら凄い便利よね。一つのスクロールでみんながスキルを習得できるわ。調べさせて損はないと思うわよケーマ」
「チートにも程があるな。わかった、そのあたりソトと調べてみてくれ」
「わーいー、ありがとうございますマスター!」
というわけで、ソトの能力についても調査を進めることになった。
……尚、協力してもらうにあたりソトが報酬を要求。ネルネの靴下で手を打つことになった。
「……父親に似たわね!」
「まちがいなくマスターの娘ですねー」
うーん、不本意な風評被害を広められている気がするが、何か言っても無駄な気がする。実害があるわけでもないし反論しないでおこう。
「早速手付に履いていた靴下を渡しましたがー……顔うずめてくんかくんかしてましたー……はふ、さすがに少し恥ずかしかったですよー」
「あら、ネルネにも羞恥心なんてものがあったの? てっきり魔法の事となれば靴下くらいいくらでもーとか言いそうなのに」
「そりゃまー、必要とあらば魔法の為なら肉を抉ったり血を捧げたりもしますけどー。ソト様ってば私の靴下を嗅いで『風魔法のニオイがする』とか『これはもはや回復魔法です』とか『次は水魔法で濡らして乾燥させたらいいのでは?』とか言って褒めてきてー……ドキドキしてしまいましたー。これが恋ー?」
そう言って、ネルネは頬に手を当てて恥じらった。
なんてこった。ワタル、このままだとソトにネルネを寝取られるぞ。っていうか誉め言葉なのそれ?
尚、ソトのスクロールやポーションは普通に使用でき、【ちょい複製】のリミットである1時間後になっても効果が消えたりはしないようであった。おそらくではあるが、このスキル自体が元々『一度摂取したポーションなどクールタイムありで使い放題にする』といった感じの存在なのではないか、と思われる。
……まぁしばらくの間、ソトのおやつがスキルスクロールになりそうかな。
( 先週あたりにコミカライズの更新がありました! リンクは活動報告かこのページ下の方にて。)
(あ、それと以前書いたメシマズ無双オンラインがコミカライズ化しました。
https://www.123hon.com/polca/web-comic/msmz/
ちょっと編集さん、ちゃんといつ公開するかとか言っといてよね!?)