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はちのす

(牛の4つの胃袋の2番目のことではありません)


 今日はワタルが遊びに来ていた。

 いつもの借金の支払い金貨100枚を受け取り、ロクコとネルネを加えて4人で食堂のテーブル席について、Cランク定食を食べつつ会話している。


「そしてその男がですね、筒をこう構えて、僕に突き付けてこう言ったんですよ『ハチの巣にしてやるぜ!』って」


 まるで銃を撃つようなジェスチャーをしつつ、ちらっと俺の方を見るワタル。


「ほうほうそれで?」

「そしてその筒からは本当にハチがビューンって出てきたんですよ! なんと、パラサイトビーという人間に寄生するハチらしくて、本当に『ハチの巣』にするつもりだったらしいんです!」


 再びちらっと俺の方を見るワタル。

 露骨すぎるんだってば。引っかからねぇよ。


「ふぅん。そういうハチがいるんだな」

「寄生とかすごいわねー、で、本当にハチの巣って、本当じゃないハチの巣ってなんかあるの?」

「それでー?」

「……だめかっ! 結構渾身のネタだったんですが!」


 俺達の反応に悔しがるワタル。

 日本人探り、今更俺がその程度で反応するとでも思っているのだろうか。


「……僕の居た世界には銃って言う武器がありまして、筒から弾がでてくるんです。原理は違いますが【ストーンボルト】みたいな感じで。それで敵を攻撃すると穴だらけになるんですよ。で、穴だらけなハチの巣と見立ててそういうセリフが定型句としてあるんです」


 自分で発言した面白話のどこが面白かったのかを解説させられるとか苦行かな?


「……なるほど! その銃ってのも、その筒と同じように構えるのね? それでセリフまでとなると凄い偶然ってわけね!」

「そうなんですよー、いやぁロクコさんは理解早い。助かります」

「……あー、そういうことね。完全に理解したわ」

「ケーマさんは不自然に遅い。まるでロクコさんの反応を待ってから理解したと言ってるようですね?」


 まるでもなにもその通りだ。分かってるじゃないか。


「あのー、その話ってー、どこが面白いのですかー? 筒に魔法陣が仕込んであったとかー?」

「あ、ああ、はい。蜂を加速して打ち出す魔法陣がありましたね」

「加速ですかー! 現物はー?」

「こちらに。どうぞネルネさん」

「ワタルさん大好きー!」


 ワタルはネルネに「筒」を渡す。トリガーを引くと底の方のふたが開いて仕込んだハチが解放される仕組みらしい。鉄製の外見と相まって、確かに銃に見える。

 偶然の一致とはいえ、確かにこれと「ハチの巣にしてやる」ってセリフを合わせたらビックリするよなー。……偶然の一致、だよな? レオナあたりの仕込みじゃないよな?


「面白いギミックの魔道具だな。なんかの参考になるかも」

「魔法陣は筒の底ー、いやー、内側ですねー?……どうやって刻んだんでしょうこの魔法陣ー……? マスター、この魔法陣刻むのってー、どうやったと思いますかー?」

「ん? 刻んでから筒状に丸めたんじゃないか? 金属板でも熱せば曲がるだろ。削り出すよりも楽に作れる」

「なるほどー! それなら超絶技巧がなくても作れますー! 確かに言われてみればつなぎ目らしきところもありますねー」


 ネルネは筒に夢中だ、大好きといったばかりのワタルをすっぱりと放置して。


「……なあワタル、俺が言うのもなんだけど……」

「言わないでください。これはこれで幸せという奴です」

「そうか……頭を撫でるくらいならしてもいいと思うぞ? なぁネルネ?」

「えー? どうぞー?」


 ネルネは筒を見ながら茶髪のてっぺんをワタルに向けて少し傾けた。

 ワタルも「では遠慮なく」と優しく頭を撫でる。ほんわかした。


「……そういえばワタルはネルネが好きなのよね?」

「ぶっ」


 ロクコが唐突に言うと、ワタルは露骨にうろたえた。


「え!? や、え、今それ確認するんですか。本人の前ですよ!?」

「好きなのよね?」

「……す、好きですけど!?」


 お、顔を赤くして言い切った。

 惜しむらくは、ネルネが全く揺らぎもせず筒を調べている所か。


「さっきネルネもワタルの事好きって言ってたし両想いというやつね」

「そ、そうなんでしょうか? だとしたら嬉しいんですが」

「そこで! 今、すごくいいものを造ってるのよ! ちょっとした公園なんだけどね」

「えっ、えっと」

「というわけで少し手伝いなさい。ネルネも喜ぶはずよ、ねっネルネ!」

「はいー、喜びますよー」


 あっ、これネルネも理解してないけどとりあえずロクコに合わせて言ったヤツだな。


「なら手伝います!!」

「……なぁワタル、俺が言うのもなんだけど」

「言わないでください」

「そうか……まぁワタルが良いならいいんだけど」


 そしてワタルはロクコの告白スポット作りの協力を約束させられた。

 主な仕事は未だ森林状態である公園予定地の開拓、野生モンスターの駆除、そして完成後の告白成功事例になることである。


「ロクコさん……これはヤラセというやつでは?」

「大丈夫よワタル、必要なのは『事実』だから。そもそも元々両想いじゃなきゃ告白成功しないわ。大事なのは、そういうパートナー候補がしっかりとパートナーになるための切っ掛け。そのための場所となる公園を造るのよ!」

「……まぁ、そういうことなら」


 尚、事例第一号となるのは俺らしいので他人事ではない。まる。



 あ、ロクコ? ハクさんへの説明と説得は任せるからな?


(コミカライズが更新されました!

 下記リンクか活動報告からどうぞ。


 尚、コミックス5巻は今月25日に発売! 書籍版15巻は来月ですね!)

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新作、コミカライズお嬢様ですわー!!
TsDDXVyH
― 新着の感想 ―
[気になる点] 正直もうワタルに日本人ってこと隠す必要もない気がする
[一言] ネルネはゴーレムに装備させた高圧水鉄砲のことと、後、ナユタの試作鉄砲も知ってるだろうから多分銃のことも知ってると思う。 銃の筒の内側にライフリング状に術式を書き込むってのもある。蜂が死なない…
[一言] 普通に成就しそうではある
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