オリハルコンで遊ぼう
俺はソトに手伝ってもらい、オリハルコン素材の研究を始めることにした。
「というわけで、ソト。オリハルコンの剣を出してくれ」
「えー、私これから靴下食べようと思ってたんですけど!」
「……ニクの靴下をくれてやるから」
「はいどうぞ!」
そんな風にソトにオリハルコンの剣を出してもらった。
こんなやり取りをしなくてもニクから命令してもらえば絶対命令権で出してもらえるだろうが、これも親子のスキンシップというやつだ。うんうん。
ソトに出してもらったオリハルコンの剣は、もちろん実験用だ。
というか、ソトにオリハルコンを出してもらっても実験にしか使えない。逆に言えば、高いオリハルコンを実験には使い放題なのだ。1時間限定で。
さて、今回急にオリハルコンの研究を始めようと考えたのは、頑丈で透明な素材を作れないだろうかという事を考えてだ。
透明で頑丈なガラスがあれば『嫉妬』ギミックに使えるんじゃないか、と。
今のポーションの空き瓶から作るガラスよりも強いガラスができたりしないかなと、頑丈と言えばオリハルコン。なら混ぜてみよう。そんな適当な思い付き、使い放題のオリハルコンでなきゃ試せない。
ついでにオリハルコンの合金についても色々試してみよう。
純正オリハルコンには及ばないとはいえ、オリハルコンよりも安くかなりの性能の金属が手に入るのが魅力だ。配分は地道に研究していく必要がある。オリハルコン使い放題でもなきゃ研究も手が出せないところだ。
さらに言えば、柔らかさ、弾性という点ではオリハルコンを上回ると言ってもいいだろう。硬すぎるのがオリハルコンの欠点でもある。バネなんかはオリハルコンでは作れないもんな。
「そぉれ【クリエイトゴーレム】」
ガラスとオリハルコンを練り練りと混ぜ込む。引き伸ばしたり畳んだり……鍛冶の鍛造では叩いて伸ばした生地を折りたたみ、混ぜていくのだ。
……うーん、手ごねもいいけど効率が悪い。作り終わる前に1時間経ってしまったら意味がない。麺棒でもつかってみるか。しっかりこねてから柔らかいうちにさらに引き伸ばしたり畳んだり……
「あれ、ケーマ何作ってるの、メロンパン?」
「おうロクコ。違うぞ? ガラスとオリハルコンを混ぜたらどうなるかを実験してるんだ」
「……見た目が完全にパン作りよそれ。確かに手元のはパン生地じゃなかったわ」
気持ち的には鍛冶に近いんだけどなぁ。
かくして10分ほどしっかり混ぜたオリハルコンガラスが完成した。
「……うん、オリハルコン色だな」
「不透明ね。虹がかかった金色だわ」
しっかり混ざったけれど。不透明なタイルみたいな感じになってしまった。これで箱を作っても中身は見えないだろう。
「一応、頑丈さとかも調べておくか……」
「魔法耐性もね。頑張れケーマ?」
結果としては、ハンマーで思いっきり殴っても割れず、火であぶっても反対に熱を通さず、電気も通さず、冷やしても大丈夫。そしておもいっきり力を入れても曲がらない。
ただし【エレメンタルショット】ではなぜかバキッと割れ、オリハルコンの剣(研究に使った残り)で斬ったらスパッと切れた。
……まぁ、弱いオリハルコンと言った感じか。ポーションの瓶ガラスは、オリハルコンの水増しには使えるかな。普通にゴーレムブレードでは傷すらつけられず、逆にゴーレムブレードの刃が潰れたくらいだ。
そうこうしているうちに1時間が経過し、オリハルコンが消えた。
「見てケーマ、このガラス、白く曇ってるわ!」
「……曇りガラスかな。触り心地はすりガラス」
「おもしろいわね、これ作るのに使えるんじゃないの?」
「いやぁ、これを作るならガラスにルビーで作ったやすりとかを掛けてやればできるだろうし、むしろやすりを作る要領で最初からこういう形に作ればいい」
「……そこまで細かく作れるなら、そもそも手とか棒でこねる必要ってあった?」
いやまぁ、気分で。
再び靴下と引き換えにソトにオリハルコンの剣を出してもらう。
今度はオリハルコンの網入りガラスにしてみよう。と、これは簡単に作ることができた。
「うん、まぁこれは簡単だったな」
「これだと、ほぼガラスよね?」
「一応、強度が増すかな。全体で見た場合は。あとオリハルコンの網部分はガラスを割っても残るから通れない」
部分部分ではそれぞれガラスであるが、オリハルコンは強固なのだ。
「……それなら、最初からオリハルコンの網を貼っとけば通れないんじゃないかしら?」
「それもそうだ」
風を通さず明かりをという用途ならともかく、通したくない場所に置くだけの場合ならそもそもガラスが要らないか、確かに。
「牢屋でもオリハルコンメッキしておく?」
「……うーん、ならオリハルコンメッキの練習でもするかぁ」
オリハルコンって、一度魔力を通してしまえば他の金属より操作しやすい。というわけで、その後遊んでたら歩いてるゴブリンを一瞬でオリハルコンで固めるという拘束技を覚えてしまった。
名付けて、オリハルコンバインドである。……あんまり薄くコーティングできないから結構量が要るんだけど、これ結構強いんじゃない?
金はめっちゃかかるけどね。
(というわけで修行回(?)です。
ちょっと締め切りあれでそれでアレだから来週また更新ないやもしれぬ)