はじめてのDP輸送
そんなこんなでロクコの指導の結果、ソトがDP受け渡しを覚えた。
早速ナリキン達に1000DPを渡しに行ってもらおうと思う。あらかじめその旨をナリキン達には伝えてあり、宿の部屋で待機してもらっていた。
一応、ナリキン達の視界はこの『欲望の洞窟』からでもモニター機能でチェックできるので、あっちの様子もばっちり観察できる寸法だ。
「ソトはちゃんとできるかしら?」
「まぁ、いけるだろう」
俺とロクコ、ついでにソトのマスターのニクでお使いを見守る。
「ご主人様。ソト様は無事ナリキン達の下へ移動できたようです」
「……この距離をタイムラグなしで行き来できるとか、本当にチート性能だなソトは」
世界各地に【収納】を覚えさせたモンスターを送り込んでおくだけで、ソトを介したネットワークが出来上がってしまう。ヤバイ。明らかにヤバイ。
輸送・移動の手段としてはこれ以上ないものが出来上がってしまう。線路を敷くような工事すら不要で。
……そのうち作っておくべきだとは思うけれど、どうにせよこの『欲望の洞窟』がピンチになったら終わりなところがあるのであまり急いで作る意味もない。今はソトのお使いを見守ろう。
『いえーい、パパ、ママ、ニクおねーちゃん。みてるー? これからDPを受け渡ししまーす』
ナリキンに向かってピースサインと笑顔を向け、それからロクファの手をぎゅっと握る。両手でしっかり、にぎにぎさわさわ……さわさわ要る? え、汗を誘発させて密着度を高める技術? 意外にもちゃんとした理由があったわ、へー。
……そんなわけで、ロクファはくすぐったそうにモジモジしているが、問題なくDPを受け渡せたようだ。
『できたっ!』
『は、はい……ちゃんと頂けていますね。ありがとうございました、ソト様』
『じゃあ今日のところは帰るねっ』
そしてソトは再びナリキンの【収納】を経由して戻ってくる。移動は一瞬。俺の【収納】からぽこっと帰ってきた。
「ただいま! みんな、どうだった?」
「バッチリだ。よくできたな」
「さすが私の娘ね」
「えっへん!」
俺とロクコが頭を撫でると、ソトは自慢げに胸を張った。
「ニクおねーちゃんも褒めてください!」
「よくやりました」
「じゃあ尻尾モフモフしていいですか?」
ちらっと俺に許可を出していいかを目で確認するニク。まぁ好きにして。
「どうぞ」
「わーい!! はぁー、お姉ちゃんをマスターに選んだ甲斐がありました」
ニクが許可するや否やニクの尻尾に顔をうずめてモフモフくんかくんかするソト。我が娘ながら、どうにも変態的である。もっと自制するように教育すべきか……?
おっと、その前にナリキンに指示を出しておこう。
「ナリキン。先程渡したDPで蜘蛛等の虫を召喚し、町に放って情報収集をさせておけ。……流石に一度に放つと怪しすぎるから、明日町を散歩しながら適当な箇所で一匹ずつ放つ感じでいい」
『かしこまりました』
うん、これで良し。
というか、『欲望の洞窟』から国外くらいの距離にいるモンスターに対して『通信』が使えるとは……もっと早く気付けばよかった。俺はモニターを切る。
と、ここでロクコがメニューを見て、あちゃぁ、と顔をしかめた。
「あー、ケーマ。今のモニターと通信で300DP減ってたわ」
「え?」
……遠距離過ぎて通信費がかかっていたのか、DPがガリガリと減っていたらしい。
村での随時DP生産と合わせてのマイナスなので実際には300DPよりも多く消費していることになる。
……もしかして『憑依』の時も減ったりしてたんだろうか? だとすると、聖王国への調査はナリキン達に任せっぱなしで、連絡は最小限にした方がいいかもしれない。
「ちょっとトランに『憑依』するから確認してくれ」
「ええ。見ておくわ」
そんな感じで少し調べたところ、『憑依』の時は開始と終了の時にちょびっと減るくらいらしい。
……うーん、つまり遠距離で映像や音声をやり取りするのはDP消費する。随時だと消費しっぱなしになる。
そんで、『憑依』は魂的なものの行き来の分だけ、って感じか。
期せずして、『憑依』は最適手段だったらしい。
そういや元々『憑依してはどうか』っていうのはトイの提案だったな。……もしかしたらレオナから誘導されていたか、あるいはレオナの研究成果を意図せず真似てたか。
「なるほど! ニクおねーちゃんも遠出する時は『憑依』がお勧めですね!」
「ですね。……ソト様、今度コボルトを召喚してみましょう」
「コボルト! お姉ちゃんっぽくていいですね!」
そういえばニクもマスターになったからモンスターに憑依ができるんだった。
……ん? となると、ニクの戦闘センスを余すところなく活用できるようになったということ……なのでは?
「ニクが量産モンスターに『憑依』して突撃し放題……?」
これ、地味にすごい強化なのでは? 筋力の不足はなんならゴーレムアシストで補助できるし。
俺みたいにコントローラーを介してモンスターを操作する方が戦えるならともかく、ニクは実際に敵に突っ込んで戦う方が強いもん。それを本人が死ぬことなく、『憑依』したモンスターが死んでもお代わりして戦えるとなると……うん。
「……ケーマ、とりあえずソトのダンジョンにコボルトスポーンでも設置しとく?」
「そうだな。ソトにDP分けてやってくれロクコ」
「はーい」
お代わりし放題のモンスタースポーン、しかも【収納】を経由して神出鬼没。
うーん、凶悪性能すぎる。
(だんぼる14巻がノミネートされている、
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