『色欲』の見直し
(前回ラスト、ちょっとだけ修正。このまま進めても良いものか、と追加しました)
ロクコが大海原を見に行っているうちに、計画を練り直す。
ダンジョンの改修について、重大な問題があることが分かった。……ダンジョンの評判や状態がロクコに影響するという可能性だ。
「七つの大罪、というテーマで作ろうと思ってたけど、それを踏まえてしまうと……まぁ、ロクコにあまり良くない気はするよなぁ……とはいえ」
とはいえ、大罪ギミック自体はあったところであまり影響はないだろう。殺す系のトラップではなくあくまでも足止め。わざわざこちらから名前を出さなければ大罪の罠だなんて広まることもないだろうし。
ただ、今の『色欲』だけはどうにかひっこめた方がよさそうだ。俺の理性が持たなくなる可能性が高い。そして『色欲』以外のギミックを用意してバランスをとる。よし、これだな。
村長邸で案を考えていると、ネルネが俺にお茶を出してくれた。
「でー、どのようにするおつもりでしょうかー、マスター?」
「んー。『色欲』については……サキュバス連中には悪いが、サキュバス村を解体してオフトン教教会に全員引っ越しかな」
ただ今の教会では地下牢スペースにまで布団を敷かないと入りきらない。
あ、そうだ、ドラーグ村の方にもオフトン教教会を作らせてもらおう。そうしよう。
「ちょっとお隣の村長に手紙書くか」
「かしこまりましたー、代筆ですねー」
ネルネに口頭で書く内容を伝えて、ドラーグ村にオフトン教教会を建てたい旨を書いてもらった。よし。あ、一応副村長のウォズマにも一言言わないとな。俺、お飾りの村長だし。
手紙はオフトン教のことだから教祖ってことでシドに届けてもらおう。
「それにしてもー、他のダンジョンコアの方もー、影響を受けるんですかー?」
「んー、どうだろうな。トイの言い方だとそう感じるけど、ハクさん辺りは『白の女神』とか言われてるわけだし」
神の子供だからダンジョンの影響を受けるとしたら、ちゃんと神として崇め奉られる存在になったらそっちが優先されるとか、影響を受けなくなるって可能性もあるな。ハクさんに確認しといた方が良いかもしれない。トイの言っていたことに信憑性はあるが、真実とも限らないしな。
*
で、帰ってきたメールがこちら。
『初耳です、意識したこともありませんでした。ダンジョンマスターが影響することは知られていますが、その要因にも考えられます。そして、混沌勢の研究成果であれば信憑性の高い話です。ケーマさんの考察もあり得る話かと。今後もこのような情報があれば共有してください』
……ハクさんも初耳なのか。本当かどうかは分からないけど、ハクさん最初期のコアだから、少なくとも自分がそうであるかを意識せずに成長したのは間違いないだろう。
ついでに追伸で『ロクコちゃんのダンジョンで変な噂を立てないように』とあったので、やはりサキュバス村は解体した方が良いだろう。
幸い、シドからもドラーグ村にオフトン教教会を建てる許可を貰えたし。土地と大工も用意してくれるらしい。太っ腹だなぁ、何よりも俺が働かなくていいのが良い。建築魔法を使いこなすナリキンは今旅行中だからお言葉に甘えておこう。
ついでに『パヴェーラにも作ろうか?』とあったけど、そこまでは手が回りそうにないのでやめておく。シスターの数は十分かもしれないけど。
そして、一番の問題になりそうなサキュバス村との話し合いだが、
『と、いうわけで一方的に決めちまって悪いが、ここは解散することにした』
「わかりました」
と、黒い伝言ゴーレム越しにサキュバス代表のスイラに伝えたところ、あっさり了承された。
『いや、俺が言っといてなんだが……良いのか?』
「ダンジョンの事には協力する約束でしょう? それにドラーグ村に住処を作っていただけるなら何の問題もありません」
『……この村に思い入れとかは?』
「少しはありますけど、この所冒険者の訪問が増えていましたからね」
『む? 餌が自主的に入ってきてくれて嬉しい所じゃないのか?』
「それぞれ1度ならともかく、何度も来る人間が居ますので。あまり宜しくないかと」
なんでも、「サキュバスに【魅了】されているから通っているんだ」ということで、人を食い物にする脅威と思われるらしい。歓楽街に潜む場合でもサキュバスとバレるとそう言われて排斥されるそうな。主に同業者から。
『……実際、【魅了】してるのか?』
「その、吸精行為の際は、まぁ。サキュバスなので自然と。……で、ですが可能な限り解除して放り出してますよ? 本当です、神に誓って!」
その神って混沌神だよね。とは思うけど、確固として安全を証明する手がないのが事実か。言いぶりからして魅了が残存しててもおかしくなさそうだし。
『なるほど、サキュバスが厄介なわけだ……』
あとオフトン教が地味に支持されているのも、サキュバスシスター達によって自然と【魅了】され、通常より高く好意を持たれているからかもしれない。さもなくばこんな適当な宗教、誰も信じやしないって。ハハハ。
「それで、今すぐ出ればいいのですか?」
『あ、いや、まだ引っ越し先ができてないからな。もうしばらくは居てくれ。そんで、もし誰かが来たら「もうここには居られないので旅立つ」とでも噂を流してくれ』
「わかりました」
そんで、サキュバス村の跡地に『色欲』のギミックでも置いたら良いだろう。予定になかったからどういうトラップにするかはこれから考えるけど。
……魅了のエキスパートであるサキュバス達の意見を聞いてみるかな?
『代わりにここに置く、程々の色欲を刺激するギミックに何かいい案は無いかな』
「でしたら、私どもの体液でも使います? 教会においてくださるわけですし、唾液等でよければいくらでも提供しますよ」
『サキュバスの体液にそんなに効果があるのか? ……普通にありそうだな』
「ええ。ありていに言えば媚薬ですね。密閉空間に香りを充満させるだけでもかなりのものですよ、ただ、女性には私レベルでないと効果薄いですが」
スイラはまとめ役なだけあって上位サキュバスなので性別関係なく使えるとのこと。
……なるほど、『色欲』ギミックのメインに取り入れられそうだ。
密室で石像にサキュバスの体液塗っておくだけでも割といい気がするなぁ。思いつかなかったらそうしとくか。
『参考になったよ。体液の協力も頼むことになると思う。何か礼をしようか』
「では、そのギミックで前後不覚に陥った者がいたらこっそり味見などさせていただければと。……安全と機密が確保されてからなら良いですよね?」
……まぁ、出るかどうかは分からんけど、タイミングが合えばいいかな。
(このラノベがすごい2021の投票が始まったとか。
https://questant.jp/q/konorano2021
『絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで』もノミネートされているので、よろしくお願いします。
※注意点について
「作品」は5位までご記入することができます。
同シリーズの重複投票はできません。
特定の作品に対する多重投票は無効となります。
1位=5点 2位=4点 3位=3点 4位=2点 5位=1点 らしいですよ?)





































