村にいながら
(0時更新は埋もれるってばっちゃが言ってたのでずらしただけです。嘘です)
トイの暗殺者たちへの事情聴取(拷問)を含む情報収集によって、襲撃元がどこであるかは大体突き止められた。
まぁミーシャとかも少し言ってたけど、やはり聖王国の。それも貴族からの刺客らしい。どうして他国の貴族が俺を暗殺しようとしているかは未だに分からないが。
「聖王国……一度行ってみる必要があるかな……いやでも、最近わりとダンジョンから離れて出かけすぎてる気がする。ここを動きたくない。出歩かずに家の中でゴロゴロしたい」
「ケーマ、わりとゴロゴロしてると思うわよ?」
「……今の所ハクさんから護衛が送られてて安全というのもあるし、行動を起こすのはまだ先で良いと思うんだ」
「やっぱりぐーたらしたいだけじゃないの?」
否定はしない。
と、コンコンと部屋の戸をノックする音が聞こえた。
「ケーマ様。お時間宜しいですか?」
トイだ。
「何か用か?」
「ええ、丁度ケーマ様に良いお話があることを思い出しまして」
「うん、怪しいな? まぁ聞いてやるから入ってきていいぞ」
「ありがとうございます。では失礼して」
そう言ってトイはニッコリと胡散臭い笑顔を浮かべつつ俺の部屋に入ってきた。
「ロクコ様とおくつろぎでしたか、これはこれは……もしや改めた方が宜しい?」
「いや、いいから」
俺とロクコを見てむふりとイヤらしい笑みを浮かべるトイにさっさと話せと促す。
「ええでは。……ケーマ様が聖王国について興味がおありとのことでしたが、この村からも出たくない。ニッチもサッチも行かない状況であると推し量った次第です」
うん、まぁ丁度その話をしてたんだけど聞いてたのか? この部屋俺が寝る都合上結構防音しっかりしてるはずなんだけど。それとも心が読めるのか?
「心など読めませんとも。これは推測でございます。そろそろそういう考えに至る頃合いかと。私は優秀なので主人の心を推し量る事くらい余裕でできるんですよ。駄犬と違って」
ニマリと笑い、尻尾も自慢げに揺らすトイ。……ホントに心読めてるわけじゃないんだよな? 俺達の質問には正直に答えるって約束だもんな? な?
「で、それで。この拠点となる村から外出せずに外出する方法、と言うものがありますが、ご存じですか? 聡明なるケーマ様とロクコ様であればもう既知の事かもしれませんが」
「……外出せずに外出、って矛盾してるなぁ。どういうことだ?」
「簡単でございますとも。他人に【憑依】して出歩けば宜しいのです」
ニコニコと笑みを崩さず言うトイ。
「他人に【憑依】ときたか……その他人の身体で外出するから、俺の身体はこの村で寝こけつつも意識は外へ行ける、と。そういう意味か?」
「ええ! さすがケーマ様、ご推察の通りでございます。適当な、自由意志を奪った健康な身体が望ましいですね。幸いにして、この村の隠し牢にはその候補となるジンケンの無い者共がたんとございますので」
俺を狙った暗殺者の意識を乗っ取って、ということか。
「気色悪いな。何が悲しくて自分の命を狙ってきた奴らの身体を借りなきゃならんのだ」
「無論、そういうこともあろうかと腹案がございます。ケーマ様はダンジョンマスターですので、【人化】のできるモンスターをご用意すれば宜しいかと」
しかも暗殺者を乗っ取るよりも便利なことに、俺がこっちで起きている間をそのモンスターに体を任せることができるときたもんだ。しかもダンジョンの機能による『憑依』が使えて安全。
【人化】はレイ達みたいな人にそっくりなだけのモンスターでは聖王国の国境でバレる可能性があるため必須、とのことだ。
「最初からその案を言えよ」
「暗殺者であれば、彼らの聖王国に入るツテをそのまま使えるというメリットがございましたので。まぁ、気分が悪いのであれば没ですね」
む、それはそれで確かにメリットはあるな……
「なら、トイがその暗殺者に【憑依】して、ケーマと私がダンジョンモンスターに『憑依』すれば問題ないわね。トイがツテで案内してくれれば、より安全に聖王国に入れるじゃないの」
「おお、さすがは100年に1人の才女と名高いロクコ様。複合案を採用されるとは、なんとも素晴らしい発想でございます」
「あら言うじゃない」
ふふん、とロクコがおだてられて自慢げに鼻を鳴らす。
あれ、ロクコも同行するつもり満々なんだ? まぁいいけど。安全は確保できそうだし。俺とロクコが憑依してる間、身体をコアルームで寝かせておけば万全だ。
「ならトイは自分が使う身体を見繕っておきなさい。私とケーマはモンスターを用意するから」
「はい、かしこまりましてございます。では御前失礼をば」
演技がかったお辞儀をし、トイは部屋から出て行った。
「……って、普通に行くことになってない? おいロクコ」
「いいじゃないの。ケーマも行きたかったんでしょ?」
「だからって、トイのアイディアを採用するのはなんか罠に嵌められそうで嫌なんだが」
「使うのはダンジョン機能の『憑依』だから良いじゃない」
ダンジョンから離れたところでは『憑依』できないとかあったりしない? 大丈夫?
と思ったのでとりあえず森で放し飼いしているネズミの1匹に『憑依』し、そのままダンジョン領域の外まで出れるか試してみる――あ、普通にいけた。
さらにダンジョン領域外で『憑依』を解除したあと、再度『憑依』もできた。効果範囲はどれくらいか分からないが、それを確かめる機会にもなりそうだな。
……
オフトン教教会のサキュバス達がいつでもレオナの傀儡になる可能性があるという事に気が付いてしまった。やべぇ……
「……ドルチェの警戒対象に、サキュバス達も入ってると思うから大丈夫よ、多分」
「ああ……まぁ、うん。だよね。ハクさんが気付いてないわけないよね」
一応あとで確認しておこうと心に決めて、俺とロクコは【人化】のできるモンスターを用意することにした。
聖王国は人族至上主義なので、【人化】が解けても人に見えるタイプのモンスターがいいだろう。なるべく人に近い身体の方が【人化】のコストが下がるし。……で、それを踏まえた上で予算は――
「1人30万DPぐらい、ポーンと使っちゃう?」
「……【人化】のコストもあるから、それ踏まえてな?」
かなりの貯蓄があるので贅沢にそのくらい使っても良いかもしれない。なにせ俺とロクコの使う身体だと考えたら、まぁ、アリだろう。
……思えば随分安定して稼げるようになったものだ。貯蓄1000万DPの大台も近い、というか金貨1枚を1万DP換算すれば既に余裕で超えてるけど。ワタルから搾り取ってる分があるし。
俺とロクコはカタログを開き、『憑依』するモンスターの候補を見繕った。
(ケーマ達の『憑依』する対象のモンスターは何になるでしょうか。
感想欄で見事正解した方には「ここ俺の案が採用されたんだぜ」と自慢する権利をプレゼント。
……いやまぁ、はい。つまり未定なんですね! 次回更新までに決めます!)
追記:ラノベニュースオンラインアワード2020年6月刊 だんぼるエントリーのおしらせ
https://ln-news.com/articles/109126
投票受付期間 2020年7月12日(日)~7月28日(火)20:00予定
「2020年6月刊として発売されたライトノベルを対象にした投票アンケートとなります。実際に読んで、面白かった、熱かった、感動した、笑った、萌えた作品についてご投票ください」ってやつです。
※注意※
アンケート項目のすべてに作品を入力する必要はありません。
アンケート項目にて回答タイトルは重複しても構いませんが重複は3つまでとし、それ以上の項目に同一作品を指定すると無効になる場合があります。
教えてもらったのに皆に教えるのをすっかり忘れてt





































