犬と犬
(ちょっと歯医者でテンション下がって昨日のうちに執筆できませんでしたが、日曜日中に間に合ったので問題ありませんね?)
ニクは不機嫌そうな尻尾でトイを睨む。
「ご主人様。だれですかこの犬」
「ああ。レオナの元配下で」
「ごきげんよう。私は貴女の姉妹、トイです」
「……わたしの姉妹?」
優雅なカーテシーと笑顔で挨拶するトイに、いつもの無表情のままぺこりと小さく頭を下げるニク。
「わたしの姉妹とは? どこかで見たような顔ですが」
「あら。鏡を見たことないのかしら? ほら、よく見て御覧なさい。私の顔、あなたにそっくりなのよ? ロクコ様も見間違える程なのだから」
「? 似ていますか? ロクコ様」
「え? 凄いよく似てるわよ。分身したみたいに」
こてりと首をかしげるニクに、ロクコが頷く。実際、ニクとトイの顔は瓜二つ。双子といっても違和感がない。……トイはあと2、3人はいるらしいから四つ子、五つ子くらいになるのだろうか。
とはいえ、その浮かべる表情はさっぱり違う。片や無表情で可愛らしい俺の抱き枕、片や笑顔で厭らしいレオナの駒だ。
「……それで、トイはどうしてご主人様のお部屋に? ご主人様達を起こしにきたのですか?」
あ、そうか。俺達はずっと寝てたってことになってるんだよな。ちゃんと説明する必要があるな。
……なんて説明したもんかな。俺がそう思案しかけたところで、トイが任せろと言わんばかりにニコリと笑った。
「私が説明いたしましょう。――この無能に」
「無能? ……聞き捨てなりませんね」
ぴくり、とニクの耳が動く。
「自分の主人が偽物と入れ替えられていたのにも気づかない愚かな犬には、無能という言葉すら生ぬるいのでは?」
「……偽物と……?」
「ええ。ケーマ様とロクコ様はダイード国に拉致されており、ここには肉人形が代わりに置かれていたのです。ああなんということ! 飼い主が見知らぬ土地で苦労しているのに駄犬はそんなことも知らず、のうのうと肉人形のお世話をして満足していたのです! 滑稽ですね! ちゃんちゃらおかしいというやつですね! 耳と尻尾を切り落として詫びるべきでは? あはははは!」
そしてトイは説明しながら思いっきりニクを煽った。
「そ……そうだったのですか、ご主人様!?」
「あー、まぁ、そうだな。ダイード国まで召喚されて、今さっき帰ってきたところだ」
「な、なんてこと……わたしが、ご主人様を見誤った……?」
愕然とするニク。
「まぁ私達のこと拉致したの、トイなんだけどね」
「あぁんロクコ様。そこはもう少し後に言いとうございましたのに。ネタバレが早すぎますよ?」
「……頭が追い付きません。つまり……えっと……どういうことですか?」
ニクのしっぽの先がぐるぐると円を描く。混乱してるな、無理もない。
「要するに、トイは俺達を拉致した犯人で、ニクはレオナが作った肉人形に騙されてて、なんやかんやあって、ハクさんにトイの面倒をここで見るよう言われたんだ」
「……えーっと。つまり……つまり?」
「細かいことは気にしなくていい。今大事なのはトイの面倒を見ることになった、ってことだ。詳しい経緯は面倒だから他の連中も集めてまとめて説明しよう」
「なるほど、わかりました」
尻尾が納得したようにすとんと落ち着く。いや、細かいことは気にしないと割り切ったのかな。
「ではこいつはお客さまですね?」
「いいえ駄犬、私はケーマ様の道具としてここに来たのでございます。うふふ。役立たずな無駄飯喰らいの駄犬と違い、私は役に立ちますよ? 反論は認めません。私が実行した拉致に気付くことなく肉人形を甲斐甲斐しくお世話していた時点で、私の方が上と証明済みなのですから」
「ぐ……し、しかしその肉人形? はあなたが作ったものではないでしょう」
「まぁそうですけれど」
ふふん、と胸を張りニクを見下すトイ。
だがニクはその視線に反論するようにぐっと見返す。
「お客さまでないのであれば、わたしの後輩、ということになるのですね」
「後輩? まぁ良いでしょう。無能な先輩を下に敷くのも一興」
「わたしのほうが上です」
「あら。駄犬のくせに、姉に勝てるとでも?」
「わたしのほうが姉です」
ばちり、と2人の間に火花が散った。
「ご主人様、ロクコ様。失礼します。この新入りに立場を分からせねばなりません」
「ケーマ様。ロクコ様。この身の程知らずに世間の広さを教えて差し上げますね」
「あ、うん」
「こちらです、ついてきなさい」
「ええ、案内なさい。ところでその可愛いメイド服、私にも支給してもらえるのかしら? 剥ぎ取って奪うべきかしら」
「できるものかと」
「ほざけ、ですかね? うふふ」
と、ニクとトイは牽制し合いながら部屋を出て行った。……よく分からんが、上下関係は大事なのだろう。犬獣人だし。
しかしトイはどう扱ったもんか。少なくとも【クリエイトゴーレム】関係のアレコレは見せたくないから、ハクさんからの食客――ドルチェさんと同様に取り扱うべきだろうか。
……かといって教会に住まわせるのも問題だ。なにせサキュバス達がいる。レオナ由来のサキュバス達とトイをセットにして置いておきたくない。
「レイ達が住んでる寮を増築して、トイの部屋を作るかなぁ。そんでバイト扱い」
「そうね。それが妥当だと思うわ」
ロクコの同意も取れたし、サクッと増築するとしよう。
「ところで、トイは実際どのくらい強いのかしら」
「レオナが完成品って言うくらいだからなぁ……少なくとも魔法関連の実力はかなりのものなんじゃないか?」
「魔術研究所所長とかやってたくらいだものね」
ちょうどニクがトイと上下関係をきっちりつけるというなら、実力を測る物差しに丁度いいのかもしれない。
「模擬戦するならダンジョンの闘技場で思いっきりやってもらうのが良いかな」
「ふむ。……どっちが勝つか賭けない? 負けた方が勝った方のお願いをひとつ聞くの」
「……難しいところだな。まぁいいけど。無茶な要求は無しだぞ」
「ええ。……じゃ、私はトイが勝つ方に賭けるわ!」
「なら俺はニクだな」
ふっ。ばかめロクコ。ダイード国で厄介だった印象が先行しているようだが、敵キャラは仲間になると弱くなる法則を知らんのか。これは勝ったな、風呂入ってこよう。
……いや、法則は冗談だけど、実際ニクにはトイにないオリハルコンサポーターも付いているし、ウチの最高戦力がそうホイホイ負けたりなんかしないって俺は信じてる。
と、廊下を走る足音。見ればイチカがやってきていた。
「ご主人様ぁ! 起きたんやて? あとなんかニク先輩分裂しとったんやけど!?」
あー、これまた事情説明しないとダメだな。
(敵キャラを仲間にしたりカードゲームにおける敵のデッキとか完コピした場合って、性能が変わっていなかったとしても使い勝手の悪さとかが見えてきて弱く感じるんですよね。
あ、それと13巻の各店舗の特典まとめが出ました。
http://blog.over-lap.co.jp/tokuten_danboru13/
一応活動報告にもリンク貼っときますね)






































