混沌の香り
(ちょっとAIきりたんに歌を歌わせて遊んでたらロスタイムりました。
……あとでニコ動にアップしてこよっと)
翌朝、大臣から仕事の内容をまとめた紙がメイドさん経由で送られてきた。
部屋で朝飯のサンドイッチを食べつつ読むことにする。
メイドさんが運んでくれたサンドイッチとは別にDPで出したものだけどな。用意してもらった方は何が入ってるか分かったもんじゃないし。
「ふうん、案外、思ってた以上にはまともな仕事って感じになってるな」
「内容はとんでもないけどね」
書いてあることをまとめると、以下の内容だ。
・勇者は魔王の討伐、もしくは魔王軍と帝国の侵攻阻止を目的として働いてもらう
・勇者が戦果を挙げる毎に褒賞を渡す
・魔王を討伐した場合、勇者が希望するのであれば帰還させる
・勇者はダイード国における伯爵相当の市民権を持つものとする
・勇者にはこの世界についての基礎教育、及び戦闘訓練を行う
・勇者の負傷時は、ダイード国が責任を持って治療にあたる
そういやワタルも伯爵だったっけ? 勇者に渡す爵位の相場なのかなぁ。
「なんにせよ、戦果を求められてるわけか」
……ハークス王子が言ってた『テンセイシャ』の騒動はいいのか? と思わなくもない。
あるいは、勝手に接触してくるだろうか。『テンセイシャ』だし。
ちなみに偵察の結果、この国で使われている地図を見ることができた。俺達の知るラヴェリオ帝国が北にあり、南には魔国。東に山脈を挟んで聖王国。ダイードは海とは接していない内陸国。
やはり世界の壁を越えたのではなく、転移で飛ばされただけのようである。
「で、どうするケーマ。情報は増えたけど」
「逃げても、また召喚されたら呼び出されることになるからな……」
あの部屋の魔法陣の記述を思い返すに、何度やっても俺が周囲を巻き込んで召喚ばれるだろう。同じ魔法陣を使うなら。
「おのれレオナ……」
「それなら私もケーマと一緒に居るとしましょう。……教育や訓練をするってあるし、すぐに命の危険があるわけではなさそうよね」
「度合によるけどな。教育という名前の薬漬けとかシャレにもならん」
当然ながら勇者が死亡した場合の補償は書かれていない。そして、国が勇者を殺さないとも拘束しないとも書かれていないのだ。……まぁ、このあとで色々突っ込んで聞いてみるとしよう。
*
大臣と改めて会談する。
場所は城の応接室。一見豪華だが硬いソファーを挟んで俺は大臣に書類の内容について質問した。
「この仕事内容の書類では、ダイード国が勇者をどのように扱うかが書かれていないのだが。伯爵相当の市民権、というのは、国王の命令を全て自前でなんとかしてこなせ、といった形になったりしないか?」
「無論、そのようなことはありませんぞ。あまりにも当たり前すぎて書き洩らしただけでございますとも。それに勇者様への王命はここに書かれている戦働きのみ。可能な限り支援しますぞ。他に活躍できることがあるのであればしていただいて構いませぬ」
「市民権があるということは、俺が何もしてないのにダイード国から拘束されたり、監禁されたり、無実の罪を押し付けられたりはしないだろうか。とても不安だ」
「……勇者様が罪を犯せば罰則は適用させていただきますが、そのために常識についての教育も行う予定ですからな。何もしていないのに捕縛したりはしませんとも」
「ぶっちゃけて言うと魔王や帝国との戦争における傭兵ってことでいいのかな?」
「……ご慧眼でございますな。確かにそのような見方も真実と言えるでしょう。が、この戦いは我らに正義があるのです。それは間違いない事ゆえ」
「教育や訓練はどのようなものを?」
「教育では我が国の常識や簡単な法律、歴史。訓練では我が国の兵が一般的に行う訓練に加え、魔法スキルの習得等を行う予定ですぞ。また、勇者様には特殊な力が備わっているとの言い伝えもありますゆえ、その力がどういうものか探って頂くこともございましょう」
なるほど、聞けば聞く程ちゃんと対応してくれる気がある、ように感じる。まぁ、言ってることを守るという保証が一切ないんで簡単に信じるわけにもいかないが。
これについては仕方ない。じゃあどう保証すれば信じるのか、と言われても何も思いつかないもんな。何言われても信じられないし。
大臣の方も、信じさせるには実際にやるまで無駄だと分かっているかもしれない。
で、ここで俺は他の質問に紛れて聞いておかなければならない事を聞くことにした。
「魔法スキル、ということは……国に仕えている魔法使いの偉い人とかも居るんですかね? 魔法省長官とか、魔法研究所所長? みたいな?」
「魔術研究所所長、というのがおりますな」
「ほほう……会ってみたいな。何て名前の人です?」
「是非是非。勇者様を呼び出した魔法陣もティンダロス所長が書き上げたものでございますれば」
ティンダロス所長。
確か、王子が言っていた名前はトイ・ティンダロスだったか。これは。
その後もいくつか確認を行い、俺は質問を終えた。
「……わかりました、丁寧に色々教えてくれてありがとうございます」
「いえいえ。……勇者様、昨日よりだいぶ丸くなられましたな? 我々としてはまた何か衝突があるものかと身構えておりましたが」
「ああ、それは単に眠かったからイライラしてただけですよ」
準備が何もない状況で召喚され、警戒しまくっていたというのもあるが……
逆に言うと、睡眠を邪魔したり、眠れない程の仕事や訓練を押し付けたら何をするか分からないぞ、と釘を刺しておく。
「ほぉ。そうでしたか。そういえばあの後すぐに朝まで寝られたとのことでしたな。……寝る直前に召喚してしまったと……それは申し訳ない」
「分かって頂けたなら何よりです」
と、ここで大臣は「そうそう」とある物を胸元から取り出した。
ペンダント状に紐を付けた、穴の開いた円盤だ。それはまるで――
「我が国ではオフトン教という宗教を信仰しておりましてな。休息を大事にする宗教なのです。これはその聖印ですな。……いかがです? 勇者様方も入信されてみては」
――まさに、オフトン教の聖印だった。
(書籍化作業がヤバくなりそうなので、もしかしたら来週更新ないかもです。
尚、書下ろし率は既にヤバくなることが決定していますので、13巻もお楽しみに?
コミカライズ3巻もよろしくね!)





































