PT臨時加入
王子たちの言動に若干の違和感を覚えつつも、とりあえず会話に入ることには成功。
余程気に入ったのか「よし、お前も明日ダンジョン潜るからついてこい。魔剣を山分けだぞ!」と誘われてしまった。
……返事する前に風呂からあがって行ったんだけど、これいかなきゃダメ?
というか、分かったこととしてはまだ魔剣を取りに行く気があるということくらいなものだ。一体何本の魔剣をダンジョンから持っていく気なんだろうか。
約束はしっかりしてないが放置するのもなんか怖いので、俺は翌日ちゃんとダンジョン前に向かった。当然【超変身】で変装済みだ。
王子たちは先にダンジョン前に集まっていた。一応待ち合わせ時間ぴったりだから遅刻と言うわけではないはず。あいつらせっかちだなぁ生き急いでやがるぜ。
「お、来たなウーマ。お前が最後だぞ?」
王子が腕を組んだまま俺を見て言った。ウーマはもちろん俺の偽名である。
王子のそんな軽い挨拶を見て、『影』の冒険者が諦めたようなため息を吐いた。
「王子、彼が先日意気投合したという冒険者ですか?」
「ああ。貴様と同じく傭兵として雇った。仲良くするように」
「……失礼ですが、彼は信用できるので?」
「うむ。昨日話したが、なかなかに気持ちのいい青年でな!」
「……」
あ、『影』の冒険者が呆れてやがる。
「ギルドカードを見せてもらえるか?」
「ああ。これでいいか?」
「Cランクか……ふむ」
このギルドカードは変装用にドルチェさんの協力で用意しておいたものだ。こういうの好きなだけ用意できるってやっぱ権力って強い。対価はポテチとコーラ。
身分証を見せて簡単な信用を得た俺は、王子たちのパーティーに加わりダンジョンに入ることになった。
……というか、なんでギルドカードのチェックという冒険者としても最低限の確認もしないでパーティーに誘ったの? なんなのこの王子達? 疑うという事を知らない素直さんなの?
「ウーマ。お前も俺の指示に従ってもらうが、良いか?」
「俺はパーティーにお邪魔させてもらう立場だから当然だろう……ジャンガリアさんだったか? あんたも大変だな」
「……すまないな、ウチの雇い主が強引に誘ったようで。迷惑を掛ける」
「いいって。こっちはしがないCランクだ。取り分には期待してるよ」
で、俺は剣を使っている(ことになっている)ので前衛として組み込まれた。
「普段はソロで潜ってるから、あまり動きを合わせるのに期待しないでくれよ」
スポーンで生まれたゴブリンをただの鉄の剣でずんばらりんと叩き切る。いくらでも現れるとはいえ仲間殺しなわけだが……まぁスポーンモンスターだしいいよね! ゴーレムを何匹も解体して素材にしてるし今更だ。
「とまぁ、見ての通りよくあるCランクの腕前さ」
「はっはっは、謙遜するなウーマ。その動き、ケンホにも引けを取らないぞ?」
「王子の言う通りだぜ。帰ったら一回手合わせしたいなぁ」
「あんまり面倒なことはしたくないんだがな」
ゴーレムアシストでブレることなく戦っていく俺と、前衛のケンホ。
エントランスエリアを抜け、迷宮エリア。相手がクレイゴーレムになっても俺の役目は変わらない。
「おや? ここは通路ではなかったか?」
「ん? ジャンガリア、教えてなかったのか?」
「ああウーマは知ってたか。……王子、このダンジョンの迷宮は構造が変わるのです。さすが王子が見込んだ冒険者ですね」
「そうか。ウーマは知っていたんだな。ああ、俺が見込んだ男だからな!」
と、そんな一幕もあった。
ジャンガリアこと『影』の冒険者がちゃんと調べてただろうに、その功績はスルーなのかね?
……いや、これは俺には分かる。俺だから分かる! こいつ、俺に功績を押し付けた!
さすがは『影』だ、目立ちたくないと見える。だがそうはいくか! 俺だって目立ちたくないんだ!
「おいおい、俺を持ち上げられても困る。このくらいこの村の冒険者なら誰でも知ってるだろうぜ?」
「だが、ウーマはこの村の冒険者ではないんだろう? いい情報収集力だ」
「この村に友人がいてな、そいつに教えてもらったんだ。それよりも完全によそ者なのにちゃんと知ってるジャンガリアの方が優秀だろ?」
「言われてみればそうだな。よくやったぞジャンガリア」
「……あ、ああ。どうも、王子」
俺が指摘すると素直にジャンガリアが褒められる。少し顔が引きつってるぞ、ちゃんと笑えよジャンガリア。
迷路も抜け、螺旋階段エリアまでやってきた。以前ジャンガリアがつけた印は当然消えている。ダンジョンは放置しているアイテムを吸収する性質がある(と言うことになっている)ので、消えていて当然だ。
「む、一昨日つけた印が消えてるな。誰か覚えてるか?」
「……一応覚えてますが、変わってる可能性もありますね。またケンホ殿に命綱つけて先行してもらいましょうか」
「ジャンガリア。私が一応覚えてますので、私が行きましょうか」
「おっ、さすが次期宰相のクルシュ。記憶力が良いな。頼む」
「お任せください王子。では早速――」
「一応命綱は付けておきましょうね、クルシュ殿」
と、ジャンガリアがクルシュに命綱を付けた。クルシュが行ってくれるようだ。やる気に満ちてるなぁこいつら。
俺に命綱つけて、とか言われなくて少しホッとしたのはここだけの話だ。どこにトラップがあるかは把握してるが、把握してないかのようにわざと引っかからないといけないからな。
「ウーマはこの先は行ったことがあるのか?」
「一応ありますよ王子」
「ほほう。この螺旋階段を一人で降りられたんですか。どのように?」
「ものすごく急いで下りた。かなりキツかったな、階段の板が落ちた時は、自分が落ちる前に次の段に引っかかるから、気合で」
「おお、奇遇だな! 俺も似たように降りたぞ! ウーマは俺とも気が合うと見える」
「ははは、光栄だ?」
王子の質問、ここぞと食い付いてきたジャンガリア。そして回答に同意するケンホ。
ちなみに俺の回答は先日のケンホを参考に答えたから似てるのは当然だね。
そして俺を加えた王子のパーティーは、無事に螺旋階段エリアを突破した。
特に罠の場所を入れ替えてもいなかったので当然と言えば当然だね。……さーて、次は倉庫エリアだー。





































