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閑話:レイの部下

(久々の水曜更新である。どれくらいぶりだろうか?)


 レイは悩んでいた。

 マスターであるケーマに任された召喚する『妖精』のカスタムについてだ。

 自分の初めての部下。そうしてDPカタログのカスタム項目とにらめっこしていると、そこに『分化』という項目を見つけた。


 『分化』。それは1匹の妖精が、ぽんっと分かれる能力だ。まるでスライムみたいに。


 その分だけ知能も下がるが、分け過ぎなければ簡単な命令くらいは守れるだろう。いざとなれば合体して1体の妖精になればいい。……全額突っ込めば、そこらのニンゲンより優秀になるにちがいない。


「逆に、4万5000DPを1匹にまとめるなら付与する能力も節約できる……! これぞマスターのお好み、エコ! スクロール代も1匹分で済む!」


 とりあえず『魔法の才能』を付けておこう……あと『分化』。『分化』が前提ならある程度の大きさも欲しい……あ、やば。5万DPになってしまった。削れる項目は……うーん、どれも捨てられなさそうだ。

 伸縮率とかいう謎の項目もあるが、分からない所は手を付けない方が良いだろう。下手に手を付けて役立たずになっても困る。なにせ『攻撃力0』という呪いのような特性をもった自分(レイ)という実例が居るのだから。


「……まぁ5000DP程度なら私の貯蓄でカバーすればいいでしょう」


 5000DP分、欲しかったスクロールを我慢すればいいだけの話だ。レイは受け取った4万5000DPに貯蓄の5000DPを加え、5万DPで『妖精』を召喚した。


「っと、出ましたね」


 そこにはレイに向かって頭を下げる妖精――人間の少女くらいの大きさがある、大きな妖精が居た。

 紫紺の髪に、玉虫色の不思議な目。なんとなく魔法が得意そうだな、とレイは思う。


「あなたが私の主人ですか?」

「いえ、私はあなたの上司で、レイと言います。早速ですが、『分化』を見せてもらえますか」

「上司……はい、レイ様。分かりました」


 妖精は、ぱっと2つに分かれた。


「「これで良いですか?」」

「……色が違いますね?」


 片方は青色の髪に、片方は赤色の髪になる妖精。大きさは、先程より小さくなっている。


「「要素を分けたので」」

「なるほど。もっと分けられますか?」

「「はい」」


 そうして、ぽんぽんと分かれていく妖精。

 その数、2の4の8の……16。ここまでくると、羽が生えた光の玉の妖精と、羽の無いただの小人な妖精とかいうのにもなっている。


「このくらいが限度です。これ以上分けると戻れなくなるかもしれません」


 代表の1匹がそう言う。


「なるほど分かりました。では戻ってください」


 レイの言葉で今度はくっ付いていく妖精。すぐに元の1匹に戻った。


「とりあえず、貴方にはダンジョンの手伝いをしてもらいます。さしあたり、呼び名を付けましょう。正式な命名はマスターがなされるでしょうから、仮です」


 レイも最初は「アルファ」という仮の名前で呼ばれたものだ。と懐かしむ。


「……なんという名前にしましょう。うーん……」


 まず思いついたのは「エコ」。なにせ節約のために『分化』を覚えさせたのだから。

 でも自身の「アルファ」をつけて、仮名の継承というのもいいのではないか。

 ……いや、勝手にマスターが付けた仮名をそのまま使うわけにもいかない。ここは自身の名前から一音、「レ」をとって……


 あ、ダンジョンを影から支えるということで「(ファントム)」なんてのもいいかもしれない。あと、大きさから言って「妖精(クイーン)(・オブ・)女王(フェアリー)」というのもありか。ん? でもキヌエよりは小さいか。

 可愛らしいし、「クリス」というのはどうだろう。意味は知らないが、ニンゲンでたまにそういう名前があるらしい。……ニンゲンより優れてるわけだし、「ティア」を付けてみるか。「クリスティア」……うーん、しっくりこない。


 家族を意味する「ファルミ」に、仲間を意味する「ミナーゼ」を被せて「ファルミナーゼ」……んんん、かっこよすぎか?


 トロルくらいは倒せる実力は付けて欲しいし、「トロル殺し(キラー)」というのも……

 いや、ダンジョン運営にあたって力自体はそれほどでもない。最悪ゴブリンより上の立場であればいいから、「立派な(ホブ)ゴブ」……いや妖精だった。あれ、ゴブリンも妖精の一種だったっけ?


 妖精らしく夜とか月とかにちなんだものはどうだろう。たしか三日月型の剣に「メッザルーナ」というのがあった。……可愛くないかな。じゃあ音楽。ポンポン分かれるし、5重奏を意味する「クインテット」なんてのもいいかも……いやむしろ「細胞分裂(セル・ディビジョン)」という感じか。オフトン教教会の本棚で見た。


 だめだ、可愛くない方向になってきた。

 かわいい物、かわいい物……赤ちゃん? そういえば村に「ネテロ」ってのがいましたね。んー、まぁいいか。ニンゲンだし。

 そうだ逆に悪魔の名前なんてどうだろう、可愛さが引き立つかもしれない。「パルゼッセ」「ドリアーノ」……「ドレアーノ」だったっけか? 微妙。うろ覚え。


 あ、「ポルカ」なんてのもいいかも。特に意味はないけど。



 ……まぁこれだけあればどれかしら良いと思うでしょう。本人に決めてもらえばいいか。どうせ仮の名だし。


「これから言う名前で、好きなのを選びなさい」

「はい」

「……『エコ』『レ・アルファ』『ファントム』『クイーン・オブ・フェアリー』『クリスティア』『ファルミナーゼ』『トロルキラー』『ホブ・ゴブ』『メッザルーナ』『クインテット』『セル・ディビジョン』『ネテロ』『パルゼッセ』『ドリアーノ』『ドレアーノ』『ポルカ』……さ、どうします? 仮の名前なのでどれでもいいですよ」

「では全部で」

「え?」

「全部で」


 聞き間違いではなかったようだ。


「そうなるとあなたの仮の名前は『エコ・レ・アルファ・ファントム・クイーン・オブ・フェアリー・クリスティア・ファルミナーゼ・トロルキラー・ホブ・ゴブ・メッザルーナ・クインテット・セル・ディビジョン・ネテロ・パルゼッセ・ドリアーノ・ドレアーノ・ポルカ』ということになりますが」

「はい」

「……長くないですか?」

「折角レイ様に考えて頂いた名前、使わなきゃもったいないですよ。どれも良い名前ですし」

「エコ・レ・アルファ・(中略)・ポルカ……! くっ、良いこと言いますね」

「はい。私はエコ・レ・(中略)・ポルカです、レイ様!」

「エコ・(中略)・ポルカ……!」

「はい! 私はエコ・(中略)・ポルカです!」

「エコ(中略)カ!」

「はい! エ(中略)カですよ! レイ様!」

「よーし、マスターに『分化』をお披露目する練習をしましょう、エ(後略)!」

「はい! (全略)はレイ様の部下ですから! お任せあれ!」


 こうして名前を呼び合って『分化』を練習している間に朝になってしまった。



 結局ケーマからは「長い」と怒られてしまったので、最終的には最初と最後、それからレイからの1文字ずつを残して「エレカ」となりましたとさ。



(尚、分化を解除すると記憶も共有できて、分化した上で交代で休息をとったりもできるという管理人として超優秀な子)


(25日に発売だと、そろそろ本屋に並んでる頃かな?

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