お鍋とアイディ、あと留学終了
(確定申告ようやくできた…長かった(´=ω=`))
今日の晩飯は、従業員控室にておこたで鍋である。
なぜ鍋なのか、というと……特に理由は無かった。しいていえばなんとなくだ。おこたでご飯が食べたくなったのだ。
参加者は俺とロクコ、そしてアイディにネルネである。
なぜこの面子かというと……やはり特に理由は無かった。なんか鍋やろうかなと思ってそこにいたので、くらいだろうか。
中身はパヴェーラ産の海のお魚。うむ、ほくほくしてて美味しい。ポン酢にも合うな。
「使われている技術自体は単純なものだけれど……この魔道具は良いわね。携帯コンロ……1枚欲しいわ」
「えへへー、ダンジョンドロップとして採用頂いてますがー、私が作ったんですよー」
「この暖房器具も、1台欲しいわ」
「えへへー、こちらもー、私が作ったんですよー」
「村長、この子欲しいのだけれど?」
ウチの大事な技術者だ、やらんぞ。コンロとコタツは売ってやるから。
「あー、でも誤解の無いよう言いますとー、どちらもアイディアはマスターから頂いたものですからねー?」
「……ロクコ。あなたのマスターが欲しいのだけど」
「あげないわよ、私のだからね」
ロクコが俺の所有権を主張する。……まぁうん、そうだね。ダンジョンマスターだからね。
「ちなみにこのポンズってソースはダンジョン産なのよ」
「ふぅん。鍋に、というか魚を煮たものに合うわね」
ソース、でいいのかな? まぁ醤油もソイソースって言うからいいのかな。
「この鍋の食べ方は良いわね、皆で一つの鍋から取り合うから、毒の心配が少なくて済みそうだし。嗚呼、勿論入れられないという訳ではないわよ? 小皿の方に盛るとかあるもの」
「……魔国じゃこういう食べ方はしないのか?」
「食卓でつつくのは無いわね。野営なら有るかしら? まぁ、魔族には関係無い事だけれど。下僕にちゃんとした食事を用意させるもの」
ちなみに魔族というのは、魔国でいう貴族にあたる。ほとんどはダンジョンコアの事でもあるんだとか。領地=ダンジョン領域って感じらしい。
600番台であるアイディも領地を持っているそうな。まだ『村』を2個しかもってないそうだが……あ、この『村』ってのは人間牧場ね。うん。ロクコは行っちゃだめだよ。
そんなこんなで雑談をしつつ、ついでにコンロとコタツをお買い上げいただいた。
「それにしても、有意義な留学だったわ」
鍋を食べ終えたアイディが、ふぅと息を吐きつつそう言った。
「あれ。もう帰るの?」
「『もう』もなにも、期限一杯よ? むしろ少し滞在し過ぎた感まであるわ」
そうだったかしら、と思い返すロクコ。
……言われてみればアイディが来てからもう1カ月になる。……なんだかんだ、早かったなぁ。
「という訳だから、明日ハク様が迎えに来るし、帰るわね」
「急、というわけでもないのよね。そっか、すっかり忘れてたわ」
「此処の生活、中々悪くなかったわよロクコ。逆にロクコ達が魔国へ来たら存分に歓迎してあげるから、覚悟なさい」
「うん。そうね。……ところでケーマ、私達はいつアイディのとこに遊びに行くの?」
そういえばそこらへんさっぱり聞いてなかったな。
「? 一緒に来るのではないの?」
「え?」
「……んん?」
首をかしげるアイディ。
「ま、すぐ行くにしても数日は準備してから行くだろうな。詳しい日程がどうなるかはハクさんに聞いてみよう。行くまでの間、魔国で迎え入れの準備でもしててくれるとありがたい」
「あらそう。待ってるわねロクコ」
行くなら帝都経由でいいだろう。俺達のダンジョンから帝都までなら『白の砂浜』経由が一番早い。『欲望の洞窟』にとっては部外者のハクさんやアイディには使えない経路だから、仮にアイディの帰国と合わせて行くにしても1日は先回りできるだろう。
「2人、いえ、子犬も闘技大会に出すのだったかしら。なら3人分かしらね?」
「あー……そうだな。イチカも連れて行きたいところだが……」
ニクだけでなくイチカも連れて行きたいところだが、滞在費がその分かかることになる。悩ましいところだ。
「闘技者ならともかく、ただの奴隷なら別に人扱いしなければいいだけでしょう。気にせず連れてきたらいいわ、そのくらいサービスしてあげるから」
「そういうわけにもいかん。ウチの大事な仲間だからな」
「……温いわね。オフトン教らしくお優しい事」
やれやれと言うアイディ。オフトン教の雰囲気も良く分かっているようだ。
ちゃんと留学して色々学んだという事でいいのだろうか、これも。
「ちなみに人扱いしないで連れてったらどうなるの?」
「道具扱いってところね。破損したら弁償するけど、何か余計な事したらロクコ達のせいになるわね」
「色々面倒そうね……どうするケーマ?」
「……連れてくにしても、人扱いしてもらわないと困ることになりそうだな」
「元々、奴隷を人間扱いしてる方が少数派じゃないかしら、帝国では違うの?」
「あー。うん」
言われてみるとそんな気もしなくもない。人間扱いというか、愛玩動物的な扱いしてるのならそこそこありそうだ。
……あれ? ウチもそんな感じか? ニクは特に抱き枕もしてるし……
「よく考えたらニクもケーマの抱き枕だし、物扱いしてると言っても過言ではないと思うわね」
ロクコにまで言われてしまった。
「……私もマスターのために存在してるダンジョンモンスターですからー、抱き枕にしていいですけどー? しますー?」
ネルネ、それは気遣いなんだろうか?
「……そうだ。遊技場でネズミレースできなくなるのは少し寂しいわね」
「あらアイディ、そんなにネズミレースのこと気に入ってた?」
「ええ、魔国に戻ったら作ってみようと思うくらいにはね……ああそうだ。そのために知識がある奴隷を借りれないかしら? 留学で一緒に連れてきてくれてもいいわよ。その分は私が面倒を見てあげる」
「あら。……だそうだけど、ケーマ?」
つまり、ネズミレースに精通してるイチカを連れてきていいと。……どうやらアイディに気を使われたようだ。
「まぁ、それならイチカも連れて行かせてもらおうか。ネズミレースのことはイチカに一通り仕込んであるからな」
「あら嬉しい。期待してるわね」
アイディはクスリと笑った。
尚、翌日ハクさんが迎えに来たが、やっぱり1泊していったので、アイディももう1日滞在することになった。……地味に滞在費を搾り取る罠であった。
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