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『欲望の洞窟』視察 1

(あけまして寝落ちしたのでロスタイムです)


 アイディによる鍛冶場の視察はほぼ一日がかりでじっくりやっていた。

 何をそんなに見るものがあるのか俺にも分からんのだが、多分カンタラに色々教えてたからそういうので時間がかかっていたのだろう。


「……あのロクコの指輪、見事よね」

「ああ、あのルビーの中に金属指輪が入ってる? 確かにあれは凄いけど、作り方がさっぱりなんだよな」

「あなたが作ったわけではないの?」

「あれはダンジョン産だってケーマ殿が言ってたよ」

「へぇ……ここではオリハルコンの加工はやってないの?」

「それはドワーフの秘儀だよ? こんなところでやれるわけないじゃないか」

「そう。じゃあどこでやるのかしら」

「……ドワーフの里じゃないかな? コーキーの近くにある……これ以上詳しい場所は知らないな」

「そう、そういう事にしておいてあげるわ」


 そんな会話もあったが、村としてはどう見られても何ら困ることはない。だってあのルビー&オリハルコンの指輪はダンジョン産だから。

 ダンジョン産……素晴らしい言葉だよね。だいたいすべてがこれで片付く。嘘にもならない。


「村長。これはつまり地下人間牧場に技師を囲っているのかしら……?」

「なんのことやら」


 カンタラに聞こえないように俺に耳打ちするアイディ。とりあえず笑顔ですっとぼけておいた。是非深読みしてくれ、裏なんてそんなないから。


「それじゃ、ここはこのくらいにしておきましょうか」

「そうか、鍛冶場はもういいのか?」

「ええ。ここで見るものは、見たわ。次は……そうね、ダンジョンが見たいわ」

「時間が時間だから、明日で良いか?」

「鍛冶場で時間を使いすぎたかしら……仕方ないわね。まだまだ留学期間は有るし、構わないわ」


 そう言ってアイディは宿に帰って行く。

 ……うん、アイディがウチの村で何を学びたいか、というか、ウチのダンジョンを探ろうとしているのがよく分かるな。

 これは下手にロクコに相手をさせられない気がする。いや、昔のロクコならともかく最近のロクコなら十分あしらえるだろうか?


 と、ロクコの方はハクさんの相手してもらってたんだった。そっちはどうだったかな?

 アイディをスイートルームまで見送ったのち、俺はロクコの部屋に向かった。


「おーい、ロクコー」

「ひにゃっ!?」


 部屋の中から変な返事が聞こえた。


「……入って良いかー?」

「ま、ま、待って! ちょっと片付けるから! 姉さま、そっちはよろしくお願いします!」

「はいはい」


 部屋の中からドタバタしてる音が聞こえる。一体ハクさんと何してたんだろうか。

 片付けが済むまで数分待って、「良いわよ、入って」と言われたので入る。


 中に入ると、丸いテーブルでハクさんとロクコがお茶を嗜んでいた。……何を片付けたんだろう。謎だ。


「ふふふ、アイディとの視察、こちらからもロクコちゃんのモニターで見せてもらったわよケーマさん」

「おや、そうでしたか」

「べ、べつにケーマが浮気するんじゃないかって疑ってたわけじゃないのよ? その、アイディはお客様なんだし何かあったら大変かなって!」

「いや、別にやましい事もなにもしてないから。むしろ報告の手間が省けて良いじゃないか」


 あと浮気とか言うもんだからハクさんから冷気が漏れてる。なぜだ……そうか、浮気ってことは付き合ってることが前提ってことになるからか?


「言っときますけど、ロクコに手を出したりとかはしてないですからね?」

「あら、そうなの? ふぅん……?」

「け、ケーマったら、もー。むー、ぅー、は、ハグしなさいよ!」

「何唐突に言ってんだお前は」


 理由もなく殺気漏れてるハクさんの前でハグなんてできるか。


「……ロクコちゃんのお願いを断るというのかしら?」

「えぇぇ……いやその、人前ですから」

「ハク姉さまは身内だからいいの! ね、ハク姉さま」

「……どうぞ?」


 ハクさんがひんやりとした笑みを浮かべてハグを促す。……以前ハグまでは許可するって言ったからにはそう言わざるを得ないのだろう、ハクさんとしては。

 そして俺もハクさんにまでどうぞと言われたらやらざるを得ないってこと、理解してますよね? 不可抗力、そう、これは不可抗力なんですからね? OK?


「では失礼して……」

「んー」


 ロクコが俺に抱き着いてきたので、ハグを返す。……ハクさんのこの凍えるようなオーラが見えないのかロクコには! 何、ロクコには春風にしか感じられないフィルターがかかってるの? 俺は凍死しそうな勢いなんだけど。


「ふぅ……いいことケーマ。私がケーマのパートナーなんだからね? ちゃんと私にかまうように」

「あ、ああ……それはさておきハクさんが見てるからそろそろ離れてくれないか?」

「むー、仕方ないわね。ケーマったら恥ずかしがり屋なんだから」


 すこし不満げな顔をしつつ、ロクコが離れてくれた。

 ハクさんの冷気も少し治まった気がする。


「そういえばケーマさん。明日は666番とダンジョンの視察を約束していましたね」

「ええ。その予定ですが」

「私も同行しても構いませんか?」

「……」


 ハクさんからの申し出。どうしようかな、断る理由も無いけど。


「……姉さまにダンジョン見られるのは少し恥ずかしいです」

「あら、だから良いんじゃ――んんっ、いえいえ、これは大事なことよロクコちゃん。私はAランク冒険者でもあるんだから、しっかり視察して適切な難易度かどうかを判断してあげる」

「やっぱり、さっきの胸の下着みたいに適切じゃないとダメだったりするんですか?」

「ロクコちゃん、ケーマさんがいるんだからそれは」

「……ケーマ、今のは聞かなかったことにして。いい?」

「あーはいはい。聞かなかった聞かなかった」


 何してたのかって、下着の話か。これは男の俺が触れない方が無難な内容だな。

 しかしブラジャーとダンジョンは違うもんだと思うんだが、案外ロクコにとっては同じようなもんなのか。


「まぁ、同行は分かりました。ただし裏側は見せませんからご了承ください」

「ええ、それは仕方ありませんね。それでは何かしら準備も必要でしょうし、明日の昼頃に行くとしましょう。666番にも伝えておきなさい」

「むむむ、これはキヌエに掃除させておかなきゃ」

「普段のまま、ありのままを見せなきゃ意味なくないか?」


 掃除とか面倒だという気もしなくもない。俺がするわけじゃないけど。


「た、多少は綺麗にしておくのが礼儀っていうか、汚い(ダンジョン)をハク姉さまに見られたくないというか?」

「あー……」

「そうそう。いいのよ汚くても……むしろ汚い方がダンジョンとして味があるじゃないの?」

「私が気にするんです! 掃除の指示出してきますっ!」


 そうか。ダンジョン=ロクコだもんな。ロクコにとってはシャワー浴びるようなもんか。綺麗好きだもんな、ロクコ。


 というわけで、ダンジョンコアたちによるダンジョンコアのためのダンジョン見学ツアーが決まった。


(書籍化作業が中々きついことに。ヤバい、今回は楽ができるなんて幻想であった)

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