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ドラーグ村へ二度目の訪問(2)

(なぁに水曜日中だ、問題ない。

 しいていえばかなり急いで書いたから完成度がちょっとアレだってことくらいか)


 次は、セツナとハーヴィの戦いだ。


「ところでシキナちゃん、なんでさっき元の場所に戻ってたの? いちいち戻るのって大変じゃない?」

「……その方がカッコいいからでありますよ……!」

「なるほど、そりゃ大事」

「せやな」

「理想は移動したのが分からないほど素早くであります……」


 シキナに聞きつつ、ぴょーんぴょーんと準備運動に跳ねるセツナ。たゆーんたゆーんと大きな胸も上下に揺れる。……ハーヴィは紳士的にも目をそらした。明らかな隙であるが、まだ開始前なのでセツナは特に殴りかかったりしなかった。


「じゃ、やろっか」

「……目のやり場に困るんやけど」

「『たいそうふく』っていう異世界の運動着だよ、いいでしょ。良く伸びて動きやすいんだ」

「目のやり場に困るんやけどなー」


 かといって、油断せず本気を出すとシドに約束した以上、ハーヴィは桃色な思いを振り払ってセツナを正面に睨む。


 両手に木剣を持つハーヴィに対し、セツナは無手である。

 正確には模擬戦用のグローブを付けている。


「さっきのって、こんな感じかな?」

「ひょっ」


 音もなく、土埃も立たせず、セツナはすっとハーヴィの懐に潜り込んでいた。ハーヴィはセツナの両拳をクロスした木剣の腹で受け、同時に後ろに飛び退く。


「くぅ、重いな! 獣人の膂力(りょりょく)は半端ないわぁ」

「女の子に重いだなんて失礼だなー、なんて」


 今度は距離をとったハーヴィから2か所同時の突き。先ほどシキナを沈めた一撃だ。

 しかしこれを、セツナは剣先を手の甲で弾き、的確に内側に入り込む。


「そいっ!」

「のあっ!?」


 そして腰に抱き着くようにタックルし、押し倒した。腰あたりに柔らかい感触があたって思わず硬直してしまい、ハーヴィは受け身をとれず木剣を手放してしまう。


「~~ッ!」

「とうっ」


 さらにセツナはハーヴィの上に(またが)り、がっしりとふとももで体を挟みマウントポジションをとった。


「ちょ、わっ」

「あれ、綺麗にカウンター決まったね? これボクの勝ち?」

「……」


 拳を顔面の前につきつけられ、ハーヴィは黙る。セツナはにっこりと笑った。


「まいったわ。せめて剣放してなかったらいけたんやけど」

「その時は手を踏んづけてたかな?」

「嬢ちゃんえっぐいな!?」


 こうして、セツナ対ハーヴィの戦いはセツナの勝利に終わった。


「動きが鈍かったね。やっぱり疲れてた?」

「……敗因は男としての本能っちゅーやっちゃ。はよどいて、ケツさわるで?」

「あー。……もっかいやる?」

「次は負けへんからな!」


  *


 と、俺はそんな模擬戦の様子を見ていたモニターを閉じた。

 うん、1勝1敗、良い感じだな。ニク入れたら2勝1敗だけども。

 模擬戦を通じて仲が深まった、ようにも感じる。仲良きことは美しき(かな)


「ご主人様、そろそろ仕上げます、か?」

「おっと。そうだな、魔道具の方の儀式ももういい頃合いだ。あとは定期的に魔石を捧げてもらえば温泉が出続ける、ということで」


 そう、魔道具の運用には本来魔石が欠かせない物。ただし『水源』はダンジョン設備なので特に魔石が要らないのだ。

 そのあたりをごまかすため、週1くらいで魔石を捧げてもらうことにしようと思う。そしてそれをこちらでこっそり回収すれば、レンタル料に加えて魔石ももらえることになる。

 DP貰いつつ宿代をもらうために宿を建てたのと似たようなもんだな。こうして報酬を二重取りできるから村長兼ダンジョンマスターはウハウハでたまりませんなぁ……まぁ村のDP量に比べて多分微々たるもんだけど。魔剣ゴーレムブレードとかの材料にさせてもらおう。


 というわけで保留していた『水源』の設置ボタンを押す。ダンジョンの設備、『柱』である四角いブロックの上からぶわぁと水があふれだした。

 水量としては毎分20リットルなのだが、水道やホースから勢いよく出てくる感じではなく、『水源』を張り付けた上面からまんべんなく水が溢れてきた。まるでブロックをヴェールで覆うかのように温泉が溢れ、湯気を立てつつ台座の下に流れていく。

 出口が細かったら噴水のようになるんだろうけど、流石にデカいか。

 ……あ。【クリエイトゴーレム】で魔石を置く場所作らないと。横に小さい戸を付けてそこに入れてもらえば……いやこれ結構水が邪魔だぞ? 流れる方向を調整しつつ……『水源』の位置を土台ごと動かして……いやむしろ中に埋め込んで……壊さないよう慎重に……なんかマーライオンじみてきたな。装飾もうちょっとこだわって、温泉のライオン風に……? いやまて。ライオンの口から水ってヨダレみたいであんまり印象よくないだろ。設計しなおしだ。とりあえず『水源』は内側にもってって、横穴つけてどばーっと流す感じで……


 ……よし、これでいいだろう!

 結局四角いオブジェで、温泉が四方の横穴と下からどばどば出てくる勢いのない噴水のようになった。

 思いの外時間がかかってしまったが、まぁ儀式に時間がかかったってことで。


「よし、完成だ」

「おつかれさまです、ご主人様」


 かくして温泉の魔道具起動の儀式も終わった。あとは報告して、テントを撤去して帰るだけだ。

 湯気の立つ温泉が水路へ流れていくのはテントの外でも分かったのだろう、俺がテントから出てくると、既に少しざわざわしていた。


 俺が儀式を終えて出てくるのを待っていたのだろうか。すぐ近くに居たシドが、テントから出てきた俺に声をかける。


「ケーマ殿。温泉が出てから随分かかってたようだが、無事終わったのか?」

「ああ、ばっちりだ。というか、温泉が出てからが儀式の本番だったからな。見るか?」

「もう見てもいいのか。なら是非みせてもらおう」


 シドをテントに招き入れ、俺の力作を見せる。

 さあ見るがよい。これぞ温泉の魔道具であるぞ!


「ほほう、あの四角はこのように穴が開いて湯が出る物だったのか。なかなかに(おもむ)き深い」

「ちなみに上のところにスライド式の蓋がついてて、魔石投入口になってるんだ」

「なるほど。ここに魔石を投入すればいいんだな……しかし、思ってた以上に水量があるみたいだが、これは一時的なものなのか?」

「いや、ずっとこの量出ると思うぞ」

「ずっと……というと、1日中か?」

「おう。1日中……何かまずかったか?」


 どことなく渋い表情だったので聞いてみたが、シドは首を横に振った。


「……いや、これだけの量の水を出すとなると維持する魔石も相当かかりそうだと思っただけだ」

「あー……週1くらいでアイアンゴーレム級の魔石1個つかえれば十分動くと思うぞ」


 あんまり維持費高くして払えなくても困るので、無理のない量にしとこう。止めるには止めるで操作しなきゃなんないし、面倒だもんな。


「さ、さすがはダンジョン産の魔道具といったところか。性能が桁違いだ」

「そうだな。ダンジョン産だもんな」

「……この量が一日中出るとなると、2000以上は行きそうだな」

「ん? 2000?」

「ああ。だが水路には問題ない。ダイン殿の忠告を聞いておいて正解だった」


 ダインが何を言ったのかは知らんが、とりあえず問題は無いらしい。いやぁ、良く分からんけど優秀な部下だ。


「まぁ、とにかくこれでこっちの仕事は終わりだ。あとはシド殿に任せたぞ」

「任された。一日でも早く使用料を納められるよう努力しよう」


 俺とシドはぎゅっと固い握手を交わした。よし、魔道具の設置、終了だ。

 サブ目的であるセツナとシキナの模擬戦もこなせたし、取引もこれでおしまい。

 あとは帰って寝るだけだな!


「ところで、ひとつケーマ殿に折り入って話があるのだが……良いか?」


 ……なんだよ。面倒ごとならお断りだぞ?


(尚、ドラーグ村において、1日に必要な水量は1人当たり10リットルもあれば事足ります。これには『浄化』等の生活魔法で、水の使用量がだいぶ節約できるからという理由もあったり)

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