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ドラーグ村訪問

(ちょっと長くなっちゃったので遅れました(当社比))

 会談の約束はすぐ取りつけられた。ひとっ走り冒険者に手紙を届けさせたところ、二つ返事でOKがもらえたそうな。

 ただし場所はあちら側、ドラーグ村でやることになった。もちろん問題ない。


「なぜこちらが出向かなければならないのです? まったく村長は甘い。もっと毅然(きぜん)とした態度をとっていただかないと」

「おいおい、ウォズマが村長に求める事はそうなんだろうが、あまり慣れない事をしてボロが出てもしょうがないだろ? そこはもういっそ諦めてくれ」

「……まぁ、ケーマ村長はお優しいですからな。仕方ありませんか」


 納得してくれたようで何よりだ。お飾りの村長だとボロが出たら困るもんな。なにより気が疲れるから納得してくれてよかった。


「ですが、村長は一応ドラゴン退治の英雄でもあります。偉そうにしていてください」

「わかったわかった。敬語とか使わないようにすればいいか? ……まぁ、会談といっても特に話すことも無いしな。今回は親睦を深める程度だ」

「それと今後のドラーグ村の展望について聞いておいてください」

「分かった。……って、ウォズマも来るんじゃないのか?」

「私が行く必要がありますか?」


 確かに無いかもしれない。特に何か決めるわけじゃなくて親睦を深めるだけだからな。


  *


 というわけで、ツィーア山貫通トンネルにやってきた。お供はイチカとニクだ。


 移動手段は徒歩だ。設置で行けば早いけど、アリバイは大切だよね。

 途中、パヴェーラ側からやってきた商人の馬車とすれ違う。洞窟の道は馬車が余裕をもってすれ違えるほどの広さにしているので、わざわざ壁に貼り付いたり徐行運転してもらったりという必要は無い。


 しばらく歩いていると、トンネルの真ん中あたりに料金所がある。

 ここでは高速道路の料金所の如くさらに横幅が広くなっており、いくつかの部屋が並んでいる。ここはちょっと作るのに苦労したので、折角だし詳しく解説しておこう。



 それぞれの部屋は3枚の壁によって区切られている。この壁には水晶玉が埋め込まれており、これに手を触れると壁が上にスライドして通れるようになる仕組みだ。

 壁は入口、真ん中、出口の3枚。

 ただし、もちろん両側から同時には通れない。片方が作動した時点で反対側がロックされて入れなくなるのだ。


 この部屋のひとつに入って真ん中の水晶玉に触れると、入口の壁が閉まり、部屋内の重量に応じて請求が発生する。(払えない場合は入口の壁を開けて帰ることができる)

 そして金を払ったら真ん中の扉が開き、通れるようになる。

 出口側の壁を開けようとすると、真ん中の壁が閉じてから出口の壁が開く。

 中の人なり馬車なりが出て行ったら出口の壁は閉じて元通り。


 いやぁ、何回かバージョンアップも重ねて今の形になったけど、中々苦労した。

 苦労の甲斐もあってか、今のところは事故は発生していない。

 別に壁に押しつぶされて事故死しても良いんだぜ? DPになるし荷物も回収して『欲望の洞窟』宝箱の中身に有効利用させてもらうからさ。

 尚、重量で料金を判別するため【収納】持ちが強いのは仕方ない。ゴーレムで頑張って作ったこの仕組みでは【収納】の中までは覗けないからな。



 で、荷物を持ってない3人くらいなら銅貨10枚くらい。

 ここでもアリバイ作りのため、ちゃんと金を払って通る。洞窟に払った通行料は俺の懐に戻ってくるので出費は実質0だけど、一応ね。


 そんなこんなで通行料を払った後、パヴェーラ側に向かって歩いている最中にイチカが「はぁぁあぁ」と盛大なため息を吐いた。


「はぁ……気が重いなぁ」

「ん? どうしたイチカ」

「いや、あっち側ってパヴェーラの領主の息子の村やろ? ってことは、村人もパヴェーラから連れてきた奴っちゅー可能性が高い。したら、昔のウチのこと知っとる奴らもおるかもしれへんやん……今のトコまだ会っとらんけど」


 なるほど、昔の奴隷になる前のイチカを……

 それで気が重くなるとか一体どんな悪さをしてたんだ。


「ちょっと食い物関係で色々。そん時についた二つ名が『食欲魔人』や」

「なるほど」


 きっと色々したんだろうな、とそう思える実感がその一言に詰まっていた。


「……そうだ、仮面でもつけて顔隠すか?」

「お、ええなソレ。こんな身綺麗な格好してて仮面もつけて黙っとったら、さすがにウチとは分からんやろ」

「そんじゃちょっとまって。……【クリエイトゴーレム】。ほい」

「早っ! まぁいつもの事やったな、あんがと」


 石から作った、灰色ののっぺりした仮面をイチカに渡す。

 ついでに革紐もくっつけておいた。イチカは仮面をかぽっと被って留める。


「多少視界は悪いが問題ないな。息も問題ない感じかなー」


 口も隠す仮面なのでこもった声になる。声の感じも変わるなら多少は喋っても問題なさそうだ。

 ……というかメイド服に仮面って似合わないな。せめて目元だけなら良かったか。


「……ご主人様。わたしも欲しいです」

「しょうがないな。ほら」


 ニクにもあげると、早速顔につけていた。反省を生かし、こちらは目元だけにした。

 でもメイド服な仮面が2人もいるとさすがになんかこう、何だろう。すれ違う人のぎょっとした視線を感じる。

 俺もナリキン仮面つけて顔隠そうかな……今回は村長としての訪問だからダメか。



「っと、そろそろ出口だぞ」

「ほなウチ黙るわ。なんか問題あったりしたら肩叩くからよろしく」

「あいよ」


 いよいよドラーグ村に到着だ。

 ツィーア山貫通大トンネルを抜けると、そこは雪国、ではなく白い建物がいくつも立っていた。港町であるパヴェーラにおいてよくある家と同じ、地球のヨーロッパというかエーゲ海っぽい白く四角い建物である。漆喰かもしれない。

 建ってからまだ日が浅いからか、それとも清掃が行き届いているからかは分からないが、新雪のように真っ白だった。

 そんな家々が、小規模ながら洞窟出口からパヴェーラ方面に向かって左右に並び、大通りのようである。いや、実際大通りなのだろうし、これから発展してもっと人が集まれば大通り以外の何物でもなくなるのだろう。


「区画整理は、ゴレーヌ村よりばっちりできているみたいだな」

「ゴレーヌ村は『欲望の洞窟』ありきやからね。そんでかなり適当に作ってったし」


 とりあえず、約束してた訪問である。迎えに来てる人を探すが、それっぽい人は――居た。2人組で、片方は10歳くらいの子供。多分こいつがパヴェーラ領主の息子とやらだろう。もう片方はフルプレートメイルで性別も分からない。護衛にしては物々し過ぎるような気もする。


「来たか! 貴公がゴレーヌ村の村長だな? ……なんだその妙な従者は」

「そうだ。そっちはドラーグ村の村長で当たってるか?」

「その通りだ。俺こそ、ドラーグ村村長シド・パヴェーラである! ……で、その従者は一体」


 10歳の子供、シドが偉そうに自己紹介した。毅然とした態度ってのはこういう感じなのかな。参考になるわ。


「まぁいい。早速だが決闘を申し込む。受けろ」

「……は?」


 俺は思わず聞き返した。


「聞こえなかったか? 決闘を申し込むと言ったんだ」

「聞こえたが、受ける理由が無いもんでな」


 こいつ、決闘厨か。アイディから決闘を申し込まれたロクコもきっとこんな心境だったに違いない。


「悪いことは言わない、大人しく受けろ」

「よくわからんが、どういう理屈だ。……というか、お前が戦うつもり、じゃないよな?」

「無論、代理人を立てる。俺も鍛えてはいるが、よほどの才が無ければ子供が大人に勝てるものではない。それくらいは認めるだろう?」


 こちらには大人にも余裕で勝つゴレーヌ村最強の幼女が居るけどな。


「で、決闘というからには何かを賭けるんだろう? 何を賭けるつもりだ」

「名誉を。この決闘で勝利した暁には、ドラゴンを倒した貴公に勝ったという名誉が得られる。それこそが俺の望むものだ」

「……なるほど。負けてやろうか?」

「手加減無用! 八百長で勝ったところで話にならん!」


 シドが大声を上げる。ふむ、案外真面目と見える。別に俺は負けたところで何の問題もなさそうだが――あ、まて。ウォズマからドラゴン退治の英雄なんだから偉そうにしてろって言われてたな。英雄が負けるのはまずいか。


「こちらはハーヴィ。俺の部下で、パヴェーラきっての勇士だ。こちらを代理人とする、受けるか?」


 ちらりとマップを確認し、代理人の1日当たりのDPを見る――300DP。ほう、中々の実力者のようだ。イチカじゃ負けるだろうな。ニクでも分からないかもしれない。


「いけるか?」

勇者(アレ)よりは弱そうなので、大丈夫です」


 ニク、頼もしいことを言ってくれるけど、勇者をアレって呼ぶのやめような?


「……じゃ、こちらが勝ったときにはゴレーヌ村とドラーグ村で友誼を深めるとしようじゃないか。というわけでこっちも代理人を立てる。いけ! メイド仮面2号!」

「はい」


 メイド仮面2号ことニクが一歩前に出ると、シドは微妙な顔になった。恐らくハーヴィとやらもフルフェイスの兜の下で顔を(しか)めているだろう。なにせこっちは軽装どころかメイド服で、しかも仮面で、さらにシドのいう大人に勝てないはずの子供なのだから。


「……わざと負けようというのか?」

「お前も部下を出して、こっちも部下を出した。条件は同じさ。……面倒だし開始の合図はそっちでかけてくれ」


 俺がそう言うと、シドはハーヴィに目配せをした。とにもかくにも、決闘は受理された。

 ハーヴィとニクが大通りの真ん中で対峙する。通行の邪魔――ではあるが、その分野次馬がやってくるといっていい。それにシド村長が許可出してるんだから問題は一切ない。


「ハーヴィ、手早く済ませ。ただし殺すな」

「メイド仮面2号、手早く済ませ。うっかり殺すなよ」


 声を掛けられた2人はこくりと頷く。


「では……始めッ!」


 そしてシドの掛け声で、決闘の(まく)が上がった。



(コミカライズ3話更新されました。2話もまだ見れる模様。やったぜ。


 そしてN-Starの方の人形使い、表紙とかできました。Amazonとかで見れます。

 というかAmazonの予約ページで『2018/10/04(木)23:59までにご購入いただくと、

 「Amazonオリジナルブックカバー PDF画像データ配信」の特典が受けられます。』

 とか書いてあったけど、そういうのもあるんだね。4日までって期間が短いところに陰謀を感じる。

 ……とりあえず眠いからひと眠りしてから活動報告も書こう。オヤスミナサイ)

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新作、コミカライズお嬢様ですわー!!
TsDDXVyH
― 新着の感想 ―
[一言] 300DPっていうBランク冒険者クラスか?かなりの実力者だな。生き返りのない聖女くらいの強さか。
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