ウォズマの説明
(ロスタイム! (あとで書き直すかも))
「――というわけで、トンネルの向こう側に村ができたのです……」
ウォズマ副村長に呼び出されて、トンネルの向こう側の村について聞く事ができた。
まず、反対側の村はゴレーヌ村とは全く関係のない――というほどでもないが、基本的に別物の村だ。
名前はドラーグ村。なんとなくゴレーヌ村に似せてる気がするが、これの名前の由来はおそらくドラゴンから来てるのではなかろうか。ツィーア山だし。ドラゴン騒動があったばかりだし。
で、ドラーグ村の村長はパヴェーラ領主の息子、シド・パヴェーラというらしい。年齢は10歳くらいで、マイオドールと同い年なんだとか。
……そういや、ニクがマイオドールの婚約者になった経緯ってコイツが関わってたんじゃなかったっけ? よく知らんけど。あれ、そう言えば名前貸しっぱなしだったっけか? なんかくっころ女騎士エルフのシキナが来たりして色々忙しくなって忘れてたような。確認しておかないとな……あ、オフトン教で『神の枕』を借りることになって延長してたんだっけか。
まぁ、少なくともダンジョン的には何の問題もない。なぜなら、ドラーグ村のある領域は既に俺達のダンジョン領域に入っている。故に、あっちが発展すればするほどこちらは儲かるのだ。
レイから何の報告も無かったのは、つまりそれで全く問題なかったからに他ならない。実際問題ない。ダンジョン視点から見てどこにも問題がない以上、レイにとっては「むしろ勝手にやってくれて助かります」というレベルの話なのだ。
そして俺もそう思う。金に困ってるわけでもないから。
「なんでも、あちらも宿屋を作ったらしいです」
「ほぉ、そりゃいいな。ウチの宿の客が減るじゃないか」
わざわざこちらで持て成さなくても勝手にDPを落として行ってくれる。俺達の仕事も減るし、素晴らしいじゃないか。いいぞもっとやれ。
「……? すみません村長。今、『そりゃいいな』と仰いましたか?」
「言ったよ?」
「あの、宿の客が減るとも言いましたよね?」
「仕事が減っていいじゃないか。いい加減手が回らないと思ってたところだったんだ」
そもそも宿を始めたのは俺が寝る場所を作るためというのがデカい。
なので村長邸を建てた以上、ぶっちゃけ宿は用済みと言っても過言ではない。――まぁ、ハクさんが来た時のおもてなし用くらいの用途しかないかな。
「……まぁ、村長は色々手広く事業展開してますからね」
「そうだっけか? あと教祖くらいしかしてないだろ。えーっと、宿の他には?」
はぁ、とウォズマがため息をつきつつ次の点を挙げた。
「畑、商店、酒場と、様々な点でこの村の丸写しに近い状態なのですよ」
「ほぉ、そうなのか。あっちにもダンジョンができたのか?」
さすがにそれは無いだろうと思いつつ聞く。新しいダンジョンができるほどの変化は、流石にダンジョン的に「問題なし」にはならない。
「……いえ、流石にダンジョンは真似できていないようです」
「そうか。……そんならやっぱり何の問題もないんじゃないか? だってウチの村はダンジョンがあるからできた村だぞ」
むしろトンネルの向こう側のドラーグ村ではダンジョンもないのにどうして村を作ったのかとすごく気になるレベルだ。まさかゴレーヌ村への対抗心というわけでもあるまいに。
「丸写しとか真似とかいうからには、教会はあるのかな?」
「……祠がありますね。白の女神様と商業神、鍛冶神、食神を祀っているそうです」
折角だしオフトン教の祠も作ってもらおうかなぁ。……いや、面倒だし止めとこ。どうせこっちの村には元祖オフトン教の教会があるんだし。オフトン教の祠って宿屋ってことにしちゃえばいいや。
「というか、そんなところに村ができたなら行商人も助かるな。トンネルを超えなくても物品をやり取りできるんだ、いい折り返し地点になる。ゴレーヌ村とドラーグ村で積極的に商売したらいいんじゃないか?」
行商人はわざわざ通行料を払って向こう側の村まで行かなくて良いわけだ。
トンネルの通行料はどうにしろ荷物を運ぶ商人が払うわけだし。
「そ、それは……ドラーグ村の連中を喜ばせるだけになるのでは?」
「……え? 何か問題があるか? 敵なわけでもあるまいし」
「敵ではない、と……?」
むしろウォズマはドラーグ村を敵として認識してるのか? その理由が分からないんだが……何かあるのか?
「なんだ、敵として処理した方がいいのか? 治安がむやみやたらに悪いとか?」
「いえ、その、治安は良いです。ドラーグ村の村長はパヴェーラ領主の息子ですから。ええと、村長が敵ではないというのであれば、そこは良いのですが」
「何か言って来てもトンネルの向こう側だからなぁ。トンネルはどっちの物というわけでもないし、何かが獲れるわけでもない。分かりやすい区切りだよな」
ということになっている。実際は俺のダンジョンなのだがそれは秘密だ。
「実は、あちらが村を作った時に宣戦布告――という程ではないのですが、こちらを目の敵にするような発言をされまして」
「へぇ、何て言われたんだ?」
「成り上がりの村長には負けない、と」
……
少し待ったが、ウォズマはそれしか言わなかった。
「それだけ? まぁ、要約して、ってことだろうけど……」
「はい、ですが村長を侮辱された発言は多くの村人が聞いておりましたので」
「そんなにひどい事言ったの?」
「成り上がりとか幼女性愛者とかはまだ許容できたのですが」
許容できたのですが、って幼女性愛者はいいのかよ……
「なんと奴は村長が不真面目で、何も働いてないと……そしてお飾りの軽い神輿であるなどとのたまわったのです!」
……?
……………?
あっ! あー、そうか、分かった。分かったぞ、副村長のウォズマ的には俺がお飾りであると看破されるとマズイわけか。いや、普通に何言ってるか分からなかったぞ。事実だったから。
「まったく、ウォズマは真面目だなぁ」
「いえいえ、ケーマ村長ほどではないですよ」
「ははは、抜かしおる」
しっかし、きっと相当優秀なんだろうな、ドラーグ村の村長は。
少しは媚び売っといた方が良いかな?
「でも宣戦布告、というほどでないにしても近い勢いとなると、嫌がらせでもしてきてるのか? トンネルの出入り口で関所作って税金とったりしてるとか」
「いえ、そういったことは無いようです」
だよな。ウチの村への嫌がらせをするなら、関所だけを作って通行する商人を減らすだけでいい。わざわざ村を作ることはないはずだ。
「……なんで村作ったんだろうな?」
「村長同士で会談でもされてみては?」
「そうだな。じゃあウォズマ。手配してくれ」
というわけで、後日村長同士で会談することとなった。
なのでそれまで俺は旅の疲れを癒すという名目でぐーたらすることにした。……あ、こういうとこ見せてるから看破されるのか。まぁ仕方ないね。
(書籍化作業がやばいの。
締め切りが助走すら付けずに殴りかかってきてるの。
そしてなぜか部屋がきれいになるの。
不思議ね。
あ、そろそろ25日なのでコミカライズ版が更新されるんじゃないかなと。
3話はアレですよ、アレ。詳しく書く時間が無いので下のランキングタグのリンクから見ておさらいしておいてください。
多分3話更新されたら2話見れなくなるタイプなんじゃないかと思うので早めに)