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ワタルへの報酬

(感想でワタルへの報酬が気になるという話があったので)

 最近見つかった新ダンジョン、『ウサギの休憩所』。


 ここに入り浸っている冒険者たちは、強面だったり目立つ傷があったり筋肉モリモリだったりで『凄み』のある奴らが多い。それこそ、ひと睨みでモンスターが退く程の実力者たちだ。

 そんな彼らがなぜこんな、ウサギだらけのダンジョンに入り浸るのか。それを調査してきてほしいとワタルはハクに依頼され、遊びに、もとい調査に来ていた。


 帝都で情報収集をし、実際に現地に到着したところで調査は一瞬で終わった。

 そこに居たのは、デレデレと締まらない顔でウサギたちに野菜スティックを与えていたり、抱きあげて顔を埋めてもふもふしたりしている強面冒険者たち。ワタルには一目で分かった。彼ら、彼女らは『癒し』を求めて入り浸っているんだなと。

 ワタルに対してもしがらみとか何もなしに、自分に遠慮なく懐いてくるウサギ。それはまるでゴレーヌ村を思い起こさせた。

 可愛い動物というのは異世界でも強い、と。ワタルはそう思った。冒険者を引退したら猫カフェでもやってみようかなと思うくらいに……できればそこにネルネが一緒に居てくれたらなお嬉しい。

 ゴレーヌ村が無かったら間違いなくハマっていたな、帝都に来たら絶対ここには足を運ばなければ。と、半ば手遅れな事を思いつつワタルは一泊していくことにした。


 そこでワタルは例の『襲撃イベント』に巻き込まれることになった。


  * * *


「ふぅ。最後は少し手強かったですね」

「……アークデーモンを歯牙にもかけない……これが勇者ワタル、か……」


 アークデーモンを撃退したところで安全地帯が元に戻り、無事に襲撃イベントが終わったことに安堵する。アークデーモンまで出てくるだなんて、もしワタルが居なければどうなっていたことか。それを考え、レンニューは身震いした。


 ちなみにワタルは大活躍したためか、ウサギにたかられてモフモフされている。何人もの冒険者がそれを羨ましそうに見つめつつ、手元のウサギが「まーお前も頑張った! もふっていいよ!」といわんばかりにすりすりしてくるのを撫でていた。


「あ、あの。ウサギさんたちがこれを持ってきたんですけど……! みんなにって」


 そう言ってイチゴがバスケットいっぱいのポーションを持ってくる。襲撃イベントの報酬だろう。今回は数が多いからかまとめてイチゴに渡したようだ。


「それと、勇者様には特別報酬があるそうですよ? なんでも、王様が来るとかなんとか言ってます」

「王様? ウサギの?」

「はい、ウサギの」


 その時、空――環境部屋の天井に穴が開いて、ひもで吊るされた籠が下りてきた。

 その中には、小さな王冠を頭に乗せた、オレンジ色のウサギがいて――


「んきゅっ! ボクがこいつらの王様っきゅよ!」


 ――その一言に、ウサギたちは顔を向けて「ははぁー」と頭を下げるようにした。


「ウサギが……喋った!」

「すごい! 喋るウサギだなんて! しかもオレンジ色!」


 冒険者たちの反応は、ウサギに倣って頭を下げる者、とりあえず跪く者、呆然と立ったままの者、喋るウサギに感動して目を輝かせる者と様々だ。

 ちなみにワタルはとりあえず空気を読んで跪いていた。


「くるしゅーねーきゅよ。えーと……このたびはありがとうきゅよ! あいつらは、ボクらのことを食べようとする悪い悪魔たちなんきゅよ。それで、特に今日は本気でかかってきてたからな……これで数年は大丈夫だと思うきゅよ!」

「えーと、お役に立てたようで何よりです?」

「うん。特におめーはがんばった! えらい! つよい! だから、ここにウサギの勇者の称号と、ウサミミ飾りを授けるっきゅよ!」


 そう言って、ウサギの王様はウサギ耳のヘアバンドを器用に前足でつかんで持ち上げて、ワタルに差し出した。恭しく受け取り、ワタルはとりあえずそれを、頭に付けた。

 ……ウサギの勇者。はたから聞けば何とも微妙な感じがする称号なのだが、ここに入り浸る連中にとっては歓喜に沸く代物だった。


「凄い、さすが勇者ワタル!」

「ウサギの勇者! ワタル様!」

「いいなぁ! ウサギ勇者いいなぁ! ウサミミいいなぁ!」


 拍手喝采。といっても拍手できるのは冒険者たちだけなのではあるが、ウサギたちも『ウサギの勇者』の誕生に嬉しそうだ。


「ちなみにそのウサミミ飾りは魔道具で、魔力を流すと動くんきゅよ! とびっきりのお礼ってことで、奮発したっきゅよ。ボクらには自前の耳があっていらねーけど、魔道具ならニンゲンの町でお金にもなる……っきゅよね?」


 少し不安げに尋ねる王様。動くだけの魔道具は、さほど高く売れることは無いと思うが……ここでそれを言うほどワタルは空気の読めない男ではなかった。

 あと、ここにいる面子相手ならそれなりに高く売れそうだとも思う。


「ええまぁ……あの、これって知り合いに上げても良いですか? その、好きな人がいまして、その人に似合うんじゃないかなと思いまして……」

「んと、いいきゅよ! 許可する!」

「はは、ありがとうございます」


 ワタルは嬉しそうに笑った。多分、ウサギの王様も。


「それじゃー勇者よ、ありがとっきゅよー!」


 その後、ウサギの王様は籠に乗ったまま天井の穴に戻って行き、王様が消えた時点で穴は閉じた。

 ……上で誰かが巻き上げてるんだろうか。それを想像すると若干シュールである。


「……とりあえず、ネルネさんへのお土産ができたな」

「えと、お、おめでとうございます勇者さま」

「ありがとうございます?」


 天然で動くウサミミを持つ獣人冒険者、イチゴがワタルに話しかけた。


「別途、勇者の証みたいなの作った方が良い、でしょうか?」

「えーと、いや、別に要らないんじゃないかなぁと」


 しかしその後、有志によりウサギ勇者のメダルが作られワタルに贈呈されることとなった。

 ……正直、捨てるわけにもいかないしそれ程場所をとるわけでもないけど、その、困る……! とワタルが思ったのはここだけの話。


(あ、他になんか見たいのあるなら今のウチよ。あと次の日曜更新確率は99%――つまり実質30%ということだ)

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― 新着の感想 ―
[一言] よくよく考えると秒でバラされるのが見えてる件…まさかそこまで仕込み?
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