ご褒美
(ロスタイムではあるが水曜更新である。異論はないね?)
『おめでとう、629番の勝利だよ』
ダンジョンコアにタッチしたところで、『父』からの一言があった。
「んきゅ!? ぱ、パパっきゅか!?」
『あれ、629番は気付いてなかったのかい? ケーマ君は気付いてたよね?』
「ええまぁ」
ダンジョンコアの集会で色々とまとまったダンジョンバトル。『父』が関与しててもおかしくない。極めつけは貴賓席の存在だ。
ダンジョンバトルを鑑賞するための席など誰が用意するのか。ハクさんの派閥と魔王派閥との対立という図式であれば、去年の三つ巴ダンジョンバトルのときのように俺の後ろにハクさん、564番コアの後ろに大魔王6番コアが控える形で良かったはずだ。
仲の悪い2人を貴賓席という一室に押し込める時点で違和感がある。それ以上の存在が関与してることは明白なんだよな。
「あー、それでハクさまから通信あった時にパパによろしくーなんて言ってたっきゅか」
「なんだ、気付いてなかったのか?」
「私は気付いてたわよ?」
『あら、じゃあ私も気付いてたわ』
本当かよ。
『まぁとにかくお疲れ様! っと、666番はマスタールームに戻せばいいかな?』
『ええ、お願いしま――す、と、ただいまロクコ」
「おかえりアイディ。お疲れ様」
ぱちーん、とハイタッチを交わすロクコとアイディ。
「ボクもー!」
「はいはい、しかたないわねー」
ぽふ、とミカンがロクコの手にぽふっとタッチした。もふい。
『おやおや、3人ともだいぶ仲良くなったみたいだね』
「父上。私とロクコは仇敵、仲が良くて当然でしてよ。まぁ、ミカンとも敵手になっていいと思いますけど」
「んきゅう! アイディと敵対するのは勘弁きゅよぉ……あ、でもボクもうハクさまの派閥だから魔王派閥のアイディとは……敵? な、なかよくしたいっきゅよ!」
『はっはっは。そうだねぇ。おっと、それじゃあ今回勝利者へのご褒美のひとつということで、ミカンとアイディの名前を、僕の権限に及ぶ限り公認しよう』
名前の公認、といわれて、アイディとミカンはびくっと驚いた顔をした。
「ありがとうございます父上。ロクコと同じく名前の公認だなんて、すごく嬉しいわ」
「んきゅ! やったっきゅよ! ボクの名前がパパに認められるだなんて夢みたいっきゅよ!」
うん、やっぱりよく分からないご褒美だ。喜んでるからいいけど。
『ふふふ、まぁこれはあくまで副賞さ。今回のダンジョンバトルもだいぶ楽しませてもらったからね、その勝者にはちゃんとご褒美を上げようじゃないか。564番もまだ気絶してるし、先にご褒美タイムといこうか』
「あ、もらえるんですかご褒美。ならできれば神の寝具の持ってない奴が欲しい所ですね」
『お、ケーマ君さすがだねぇ。僕に注文をつけるだなんて』
「けけけケーマ!? 父様に何言ってんのよ!? 恐れ多いでしょ!?」
ロクコが慌てるが、そんなに慌てるようなことだろうか。お前のとーちゃんだろ?
『掛布団はもう持ってる、でいいよね。ロクコへのご褒美と合わせてどれか2つ、ってところかな。敷布団、枕は所在を確認してるけど所持してない、か。ふむ、ならこれも候補にいれて……』
2つも貰えるのか! こりゃ嬉しい誤算だ。というか俺が敷布団と枕の所在を確認してるのをどうして『父』が知ってるんだろう。頭の中身覗かれた? それとも所在確認したらそういう称号や実績的な何かが付くんだろうか。せめて後者であってほしい。
『敷布団、枕、ナイトキャップ、毛布、パジャマ、目覚まし時計……おっと、目覚まし時計は除外されたんだった。最後の一つは下着だね。さ、どれが欲しいか言ってごらん?』
「……悩ましいところですね」
やべぇ、自分で選んでいいとなったら悩まし過ぎる。ある意味一番欲しいのは枕と敷布団だ。だって掛布団と枕と敷布団があれば、もはや1セットと言って過言ではない。
しかしこの2つはマイオドールと残念エルフが持っているということを知っている。つまり、『父』の言う通り所在は判明しているわけだ。
そうなればナイトキャップから下着までのどれかにすべきだろう。
「お、おススメは?」
『そうだねぇ。毛布と……目覚まし時計かなぁ』
毛布はともかく目覚まし時計は除外されたといってたのに?
『自信作だったんだけどね。寝覚めがスッキリ爽快になる一品だったんだよ……はぁ。まさか叩き壊されるとは思わなかったけどね』
「叩き壊されたんですか。……闇神にですか?」
『なんで僕が自分で作ったもの壊さなきゃならないのさ。創造神様に決まってるでしょ』
「あー、なるほど。そうですよね、ええ」
あれ、今さらりと自分が闇神って。あと今、創造神って言った?
『というわけでひとつは目覚まし時計ね。はい決定!』
「えっ」
『あ、じゃあもうひとつは下着にでもする? フンドシ、トランクス、ベビードールとかにもなる男女対応万能下着だよ。目覚まし時計の代わりに7番目にしたやつ』
「え、あの。目覚まし時計じゃなくて他のには」
「ケーマ! ケーーーマッ! さすがに、さすがにそこは従お?! 父様すみませんあとおススメの毛布、毛布をたまわりたいです!」
むぐ、とロクコに押さえつけられた。ぐぬぬ。まぁ仕方あるまい、俺も『父』に逆らう気はない。
『おやそうかい? 何かケーマ君言いたそうだけど』
「……ああいや、一応確認したかっただけで目覚まし時計もらうのに異議があるわけじゃないんで。なにせお父さんのおススメですし」
『そうかいそうかい! それはなによりだ、はっはっは。じゃあケーマ君たちはそれでいいとしてアイディとミカン。それとハクにもご褒美をあげようじゃないか。ケーマ君のリクエストも聞いちゃったし、折角だ。何か欲しいものはあるかい?』
「あら! 何でも宜しいの?」
「んきゅ、いいんきゅか!? さすがパパっきゅよー! すてきー!」
『私にもいただけるのですか。迷いますね……』
と、アイディとミカン、それと通信越しにハクさんが喜ぶ。
「……では、もっとロクコと気楽に話せるようにして欲しいですね。ダンジョンバトルの時の通信、これをもっと普段から使えるようにとか」
「ボクは、マスターが欲しいっきゅよ! ケーマみてーなすげーやつ! ……だめきゅかね?」
『私は……――――――……ですね。宜しくお願いします』
ハクさんの欲しい物については、通信に砂嵐が混じり聞こえなかった。多分意図的なジャミングだろう。
『みんな中々難しいことをここぞとばかりに頼んでくるね……でもお父さん嬉しいよ。うん、任せなさい! ハクのはいいとして……アイディのは2、3日かかるが、メッセージをやり取りするシステムをメニューに組み込もう。あ、ケーマ君。そこの奴隷っ娘をミカンのマスターにするのはアリかい?』
「え、ウチ?」
「無しで」
『だよね。じゃ、別で用意してミカンのコアまで誘導するとしよう。流石に異世界人というわけにはいかないけど、優秀な冒険者をマスターにしてサポートもつけようじゃないか』
と、さくさくと話が進んだ。どうやらミカンもマスターが付くらしい。サポートってのは気になるところだが。
『あ、そうだケーマ君。これはオマケだよ』
そう言って、どん、と俺の目の前に真っ白な玉――ダンジョンコアが落ちてきた。
……そういえば1年空いたし、コア壊しても大丈夫なのか。レオナ曰く、1年開けとかないと光神に汚染がどうの、だったっけ?
『おっと、さすがに今回はオリハルコンの剣なしだから、自分の武器でやってね』
あっはい。そこまで気前良くはないかぁ。
(コミカライズ開始しました。
https://over-lap.co.jp/Form/Product/ProductDetail.aspx?shop=0&pid=ZG0023&vid=&cat=CGS&swrd=
N-Starの方も10話超えたな……)