最後の壁
「リスでもぴょんぴょんアタックは健在きゅよー!」
「組体操からの高高度ジャンプだとぅ!? ぐわーーー!?」
(急いで書いたのであとで直すかもです)
#Side 564番コア
「ぬぁああああ!!!??!?!?!?」
理解不能理解不能理解不能! 全く訳が分からん! 564番コアは叫んだ。
自慢の『知恵の門』(52択問題)はリス2匹だけを針地獄の落とし穴に落とし突破され、四天王たちも散々だった。
『喜のトンデ』。ブラックミノタウロスに擬態し、敵が雑魚だと喜んだところで正体を現すイビルミノタウロス。その怪力で喜色満面に敵を薙ぎ払う悪魔の牛。だが正体を現す間もなくリスを喉に詰まらせて死亡した。
『怒のヒニィール』。怒れる怨霊、バーサクゴーストは壁をもすり抜け、侵入者を決して逃がさず追いかけ回す。が、怒りに身を任せすぎてリスを追いかけボス部屋を明け渡してしまった。
『哀のナツノ』。パーティーをあえて半数だけ魅了し仲間割れさせ、仲間を手に掛けたところで正気に戻し、哀しみを生み出すハイサキュバス。こいつに至っては戦闘を拒否し離反した。
そして四天王最後の壁、『楽のムーシ』。悪魔と吸血鬼を合わせた力を持つデモンヴァンパイアは、その特殊能力でどんな相手にも楽に勝てるはずだった。
だが、リスに窒息させられかけてコウモリに分裂したのはいいが、その直後にリスの波に飲まれた。コウモリは個別に捕まりカジカジされ合体もできない有様。コウモリに分かれることは出来るが、合体し直すことが出来ねば吸血鬼も悪魔もないただのコウモリの群れだったのだ。これはそろそろ死ぬだろう……
「くそ! どいつもこいつもリスごときになんと不甲斐ない……!」
たかが数が多いだけの雑魚に、どうしてこんなことになったのか。
リスの群れを相手にしたとしても、ボス部屋を守り切れば負けないはずだった。それは分かっていたし、そのつもりだった。
「こうなれば、俺様が直々に出るしかあるまい……!」
564番コアは、ぐっとへその下に力を込めて立ち上がる。
本来、10階最後のボス部屋には側近のアークデーモン2体が控えていた。
この2体は、先日までグレートデーモンだったのだが、ここにきてDPをつぎ込んで進化させたものだった。
立ち位置としては四天王を倒して調子に乗ってる侵入者を屠る『両腕』だが――
――ここまできてしまってはもはや誰も信用できない。自分が出るしかない、と、564番コアは思っていた。
「メッタ、ヤタラ! 貴様らは俺様の取り巻きとなれ、俺様がボスとして迎撃するぞ!」
「「ハッ……!」」
赤色のアークデーモン『メッタ』と、黄色のアークデーモン『ヤタラ』を引き連れ、ボス部屋で待つ564番コア。
待つこと数分でムーシがやられ、9階層が突破されたことが分かった。いよいよこの10階層にリス共が入り込んでくる。
もふもふの尻尾を携えた茶色い毛皮に、くりっとした黒い瞳。
一見すると可愛らしいその小動物は、60匹ほどの軍勢となってボス部屋に向かってきている。この数になると、まるで絨毯が移動しているかのよう。
そして、564番コアとそばに控えるアークデーモン2体を見て一瞬動きが止まる。
「今だ! 放てッ!」
「――【ファイアウォール】」
「――【サンダーウォール】」
アークデーモン2体がすかさずそこでウォール系の魔法を発動。設置系で、触れればダメージになるという罠のような魔法。
事前にタイミングを計り詠唱させておいたおかげで、まさに部屋の入口から雪崩れ込むタイミングで道を塞ぐように発動。それだけでなんと20匹は焼き尽くせた。肉の焼ける特有の臭いがボス部屋に広がり、564番コアはにやりと口端を歪めた。
「クハハハ! 挨拶は気に入ってくれたかね!」
2枚の壁が消える前に名乗りを上げる564番コア。
「所詮小動物よ。我が知略をもってすれば雑魚でしかあるまい。……さぁ、蹂躙してやろう!」
「■■■■■、■■■■■、■■■■■■■■――【ファイアピラー】」
「■■■■■、■■■■■、■■■■■■■■――【サンダーピラー】」
アークデーモンが魔法を飛ばす。散って被害を最小限に抑えるリスたちだが、火をまき散らし、電撃をまき散らす柱に1匹ずつ削られていく。
「ハァーッハッハッハ! 手も足も出まい! これが、これこそが本来の実力差なのだ!」
高笑いする564番コア。
確かに、本来リスなどという小動物は相手にならないはずの実力差はあるはずなのだ。
リスの軍団などという奇策があれほどまでにハマった方がおかしいのだ。
「さぁ行けメッタ、ヤタラ。逆侵攻をかけるのだ!!」
「「ハッ!」」
そして、564番コアは与えられた屈辱を晴らすべく、2体のアークデーモンを進行させた。抜け道から、直接外へ。そしてゲートへ向かわせる。
リス程度、俺様独りで大丈夫よ。と、564番コアは不敵に笑った。
「……まったく、ダンスパーティーに遅れちゃったわね」
そこに、666番コアの声。
「ロクコはステップが早すぎるわ。私が追い付く前に殆ど片付けてしまうだなんて――そうね。悪いのは雑魚だったボス達。責めてるわけじゃないわ、むしろ褒めてるのよ? 私が褒めるだなんて滅多にないのだから光栄に思いなさい?」
どうやら、通信をしているようだ。相手の声は564番コアには聞こえないが。
気に入らない。
何が気に入らないといえば、自分を無視している事だ。それこそ戦闘態勢で殺意を飛ばしているにも関わらず、するりと受け流して全く関係のない会話を楽しんでいる。
「余裕だな、666番。ここは俺様を倒さねば進めないというのに」
「あら、逃げていなかったのね564番。ところで、小動物相手にいきがる貴方はとても滑稽だったわ。道化師の才能が有るわよ?」
しゅるり、と写し身の剣を取り出す666番コア。
「ククク、この俺様に敵うと思っているとはそれこそ滑稽なやつめ……両手両足を切り落として便所に飾ってくれるわ!」
「じゃあ私はサクッと殺してあげるから精々抵抗して頂戴な?」
――こうして、決戦が始まった。
尚、アークデーモンについてはダンジョン内でスルーされていたレッサーデーモン達をひきつれて、さりげなく誘導された先、ウサギとのふれあい広場に顔を出し、ワタルになすすべもなくフルボッコされましたとさ。
(新作の方もよろしくとだけ。宣伝宣伝。
そういや8巻、メロブではWebサイン会とかいう企画があるらしいですよ。サインの練習しとこ)