序盤勝利。かーらーのー?
(水曜日の何時に更新かまでは言っていない…! 故にこれはロスタイムですらないのだ。)
#Sideケーマ
さて、序盤は勝利した。圧勝と言っていい、なんかよく知らんが見事にハマってくれたようだ。
特に魅了対策してなかったがなんか効かなかったし、ワタルがあっさりサキュバスを撃退してくれた。
まさかウサギへの愛で乗り切るとは……かわいいは正義ってやつだな。
いや、高位の冒険者なら対策してるだろうと思ってたが、まさか全員が抵抗できるとは思わなんだ。
弱い奴が暴走してもまぁワタルが居れば何とかなるだろという投げっぱなしな感じだったのだが、上手く行ってくれてよかった。
ワタルが魅了されたら? 大丈夫、その時はフロアが1つ全滅するだけだ。
あるいは、その時はニクにわんこサキュバスになってもらい魅了対決の流れだった。
それとあのワタルが持ってるブレスレットを俺も貰えるらしい。楽しみだ。
「……出番なかったです」
「そうだな。まぁそれはそれで」
「そうよニク。これはこれでケーマの策なんだから」
さて、防衛はそれでいいとして侵攻だ。
……入ってきたモンスターが異様に少ない気がするが、どうやらアイディがガーゴイルの召喚主を狙って殺害しているようだ。あらかじめアイディが言ってた通り少ないというのもあるが。
『さしあたり、目につくところは片付けたわよ。ロクコのマスター』
「あいよ。というか、普通に考えてこういう戦力を供給するような大事な召喚主って安全地帯に置くもんだろ? なんで前に出てきてるんだ? 馬鹿なのか」
『あら。本当の安全地帯なんてどこにもないでしょう。何処に置いとけというの?』
「……それは本気で言ってるのか?」
と、俺は隣にいるウサギ型コアのミカンを見る。ミカンはくしくしと顔をこすって答える。
「……いや、普通にダンジョンコアの中は安全地帯きゅよね?」
「だよな」
よかった、俺達が異常という訳じゃなかったようだ。
『…………ああ、そうね、確かにダンジョンコアの中は安全地帯ね。ロクコたちの戦法なら』
「普通に考えたらこっちが常道だと思うんだが……もしかして魔王派閥の奴はダンジョンコアの中を安全地帯と考えてないのか?」
『ダンジョンコアの亜空間はコレクション置き場と相場が決まっているの』
なるほど、使い道の問題なわけか。
たしかに宝物庫としてはこれ以上ない金庫だろう。許可が無ければだれも入れないからな。
『大切なものは外に置いたりしないものよ? 奪われるから』
「なるほど。さすが魔王派閥……サキュバスは大事なモノにはいらないのかな」
『モンスターは使い捨てる物でしょう?』
つまりコアの中に入れるほどではないと。それで564番コアは普通にサキュバスを置いてたのか。……【サモンガーゴイル】覚えさせてただろうのにもったいない使い方をするヤツだ。
ガーゴイルがどこから出るかをたどられるとコアの位置もバレるからとかも? いや、普通にコア内から空き部屋に『設置』で移動してやればいいだけだ……まぁいいか。
「……ちなみにダンジョンコアがどのあたりにあるかとかの見当はつくか?」
『そうね。多分、ダンジョンの奥……屋敷の一番高い所か、地下室――地下迷宮ね。地下迷宮だと少々厄介よ。500番台の地下迷宮となると、相当な複雑さだと思うから。10層くらいはあるんじゃないかしら』
……?
「ちょっとまって。10層? たったの?」
『たったの? 何を言っているのロクコのマスター。罠や入り組んだ構造を考えれば数日はかかるでしょう。その間にこちらのダンジョンが攻略されてしまえば、敗北なのよ?』
「そうか、階層が浅いからてっきり。数日かかるような広さがあるんだな、それは厄介そうだ」
『え、浅い?』
うん。
なんだろう。俺とアイディの間で情報が食い違っている気がする。
「だって10層って言ったら、浅いだろう。俺が去年作った『白の砂浜』だって10層だぞ」
『…………そういえばそうだったわね? でも、あれは一本道で攻略しやすかったでしょう。私達の作っていたダンジョンくらいの広さはあるわよ――って、そういえば、ロクコ達はあのダンジョン、奥の奥まで攻略、してた、わね。……1日で』
「そうね。楽勝だったわよ」
と、俺の代わりにロクコが答えた。うん、ダンジョン自体は楽に攻略できた。苦労したのはダンジョンコアがそこになく、アイディが持ち運んでいたという点だったが。
『…………ロクコ。相手は10層だけど、何日で攻略できるかしら?』
「ケーマなら……1日よ! たったの10層ならね!」
『それは頼もしいわね。味方であれば』
おーい、さすがに2日かかるかもしれないぞー。5層で1日だったんだから。
「というか、その、あれか。もしかして魔王派閥では『ダンジョン』は重視されてない?」
『……そうね。基本的に屋敷、城という形になるし……地下に伸ばしていくものもあるけど。あと、あまり階層があったら侵入者が来ても戦えないじゃない?』
なるほど。つまり脳筋なんだな。
「とりあえずアイディ。地上の1階は攻略終わったのか?」
『目につく部屋は一通り調べたわ。上下ともに階段を見つけたのは――マップに載ってるかしら?』
「ああ載ってる、おかげさまでな。じゃあ屋敷に火を放ってくれ。あるいはそこらの家具を壊してたき火だな」
『……は?』
「ん?」
『気のせいかしら。今、火を放てと聞こえた気がしたのだけど』
「ああ、言ったけど?」
『……その、ロクコのマスター。正気?』
アイディに頭の心配をされてしまった。
まぁ確かにダンジョンだから燃えないかもしれないけどさ。
「正気だよ。まぁ、単なる嫌がらせだが――煙でいぶせば残ってるサキュバスとかは弱まるだろうし、煙の流れとかで上に通じてるところとか分かりやすくなるだろ? 一方アイディは別段呼吸が要らないし煙に巻かれても目以外の何かで見えるんだから問題ない。いいことずくめじゃないか」
『……ああ、本当に正気なのね。てっきり屋敷を焼き払えとでも言いだすものかと』
「それもある。屋敷を燃やし尽くせばダンジョンコアを探す場所が減って良いよな!」
『やはり変わった発想をするのねロクコのマスター』
こっちからもガーゴイル送って【ファイヤーボール】で手伝わせるとしよう。
これぞ焼き討ち。火計は火の車ってな。さながら気分は諸葛孔明ですぜ。
「あ、ミカン。ミカンは地下探索用にバッタを出してくれ」
「わかったっきゅよ。でもバッタなんてすぐやられちゃうきゅよね? リスとかの方が良くないきゅか?」
「ミカンのカタログで、DP的にはどんなかんじだっけ?」
「どっちも1匹1DPっきゅねぇ」
ほぉーん。ならバッタよりリスの方が良いな。うちも最初にハクさん相手に使ってたのはネズミだったし。
「じゃ、とりあえずリス100匹で」
「100!? そんなに動かしきれないきゅよ!」
「そうか? 仕方ない。ニク、イチカ、手伝ってやれ。ミカンはメニューを可視化して2人にも操作できるように設定しておいてくれ。あとリスは様子を見て順次追加するから」
「わ、わかったきゅよー」
群体の操作はコツがいるからなぁ。ま、ニクとイチカなら上手くやってくれるだろう。
「ケーマケーマ。私は手伝わなくていいの?」
「ロクコは……じゃあリスの残量を見てミカンに適宜追加の指示を出してくれ」
「わかったわ! じゃ、ミカン。早速だけど100匹追加で」
「まだ最初の100匹もだしてないきゅよ!?」
「どうせ必要になるんだから出しときなさいよ」
「ふぉぉおぉ、貯めこんだDPがどんどん減ってくきゅよぉ……」
……まぁ10層あるし、いいか。ロクコに任せよう。
俺はどっしり構えるという体で、ダンジョンバトルを見守ることにした。
(コミカライズの担当絵師さんとビジュアルが発表されました。詳しくはオーバーラップさんの広報室へのリンクを活動報告に貼っときましたのでそちらをどうぞ)