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564番の攻撃

  #Side 564番コア


『……では、始めいッ!』


 6番コア様の合図により、ゲートが展開された。


「進軍である!」


 564番コアは早速厳選した20匹のスケルトンと10匹のガーゴイル、そして3匹のサキュバスを送り込む。

 あのウサギ相手にはこれでもオーバーキルだと思うが、なにせ666番コアが参戦している。この布陣であればスケルトンが足止めをしている間にガーゴイルが魔法でダメージを与え、サキュバスが魅了――は、さすがに666番コアには通じないので、魅了の代わりに武器で突き刺すだけだ。


 が、ゲートの向こう側にはモンスターがいなかった。ウサギの1匹すら。


「む? これはどうしたことだ……俺様に恐れをなしたか?」


 とはいえ564番コアはまだダンジョン――屋敷型ダンジョンの自部屋から出ていない。

 モニター越しにモンスターの視界を使って敵を探す。通路になっており、罠を警戒しつつ先に進ませる。


「む、上り階段……か。この先にいるのか?」


 666番コアの襲撃を警戒しつつガーゴイルに先行させる。

 と、そこは開けた部屋であった。空はあるが外ではない。『草原』の環境部屋に小屋、そしてニンゲンたち。


「む? 人間牧場――!?」


 直後、先行していたガーゴイルがニンゲンの一撃により破壊された。

 訓練されたかのような動き。いや、実際訓練したのだろう。この日のために。


「クカカッ! 629番め、あのウサギがまさか人間牧場を抱えていたかッ!? いや、いや、こいつらはニンゲンの冒険者か! 上質な奴を揃えたものだと褒めてやろう!」


 しかしこんなもの、サキュバスにかかれば簡単に堕ちる。そして、寝返らせることができる。敵はこちらの情報を知らないと564番コアは判断した。


「ガーゴイルの追加だ、さらに20……いや40向かわせろ! サキュバスがすぐ到着しては面白くない、ゆっくり向かえ! ククク、大魔王様が見ておられるからな。600番台にも見せ場を作ってやらないとなぁ……俺様はなんて優しいんだ」


 ガーゴイルを処理できて喜んでいる所にサキュバス達を差し込めば、その喜びは一気に絶望に変わることだろう。……その光景を6番コアに捧げられる、そう思うと自然と口端が緩む。

 しかし666番コアはどこへ行ったのか――


「564番さま、侵入者アリです」

「ぬ?」


 ガーゴイル40体を送り込んだ直後、それをすり抜けるようにして564番コアのダンジョンに侵入者が入ってきた。モニターを開く。

 666番コア。紅い髪に紅いドレスを身にまとった少女が、悠々と庭先に開かれたゲートをくぐり、屋敷に向かって歩いてきていた。その手に持つは写し身の魔剣。


「来たか、666番! 俺様の庭へ単身乗り込んでくるとはいい度胸だ、歓迎してやれ!」


 564番コアの配下、スケルトンやゴーストといった悪魔に近しい存在が666番コアを取り囲む。が、鎧袖一触。歩きながら剣を振るうだけで、アイディはまるで水を払うかのように薙ぎ払う。

 剣術と言うのもおこがましい、ただ邪魔なゴミをどかすような動き。実際666番コアにとってはそうなのだろう。


「くっくっく、雑魚では話にならんか。サキュバスサモン隊、ガーゴイルを出せ!」


 万一にでもやられないよう、サキュバスサモン隊は564番コアのダンジョンから【サモンガーゴイル】を行い、ガーゴイルを送り込む。

 ちなみにガーゴイルを呼び出すDPとマナポーションでは、マナポーションの方が安上がりだ。なので、サキュバス達に【サモンガーゴイル】を覚えさせて使わせることで長期的に見れば得になる。

 スクロール代を回収するのには結構な年月がかかるが――これは564番コアが長年の経験で気付いたこと。564番コアの秘匿情報(のつもりだが計算すれば誰でも分かる事)であり、その結実であった。


 しかしガーゴイルでも666番コア相手にはろくな足止めにはならないであろう。魔王流剣術の師範代ともなれば、そのくらいの実力がある。

 ただ、無呼吸・無補給で疲労しない身体になるのが師範代から先へ至る道である。故に、まだ師範代の666番コアは『疲労する』。それが弱点だ。まとめて処分されるスケルトンより、1体1体対応しなければならないガーゴイルの方が疲労させられる。


「くくく。歓迎をその身に受け、疲れ切ったところをこの俺様が相手してやろう。卑怯とは言うまいな。待ち受ける――これが魔王流の強者よ!」


 尚、さらに真の強者は戦いの前に敵を回復させるが、564番コアにはそれをするほどの余裕はない。同じ師範代級の564番コアと666番コア。その差は何かがあれば簡単に埋まってしまうのだ。

 ――異世界の勇者なら「回復してくれないとか所詮中ボスか」とでも言うだろうか。


「564番さま。そろそろサキュバス達がニンゲンたちのところにつきますよ」

「おっ、そうか。そいつは見物だな!」


 ガーゴイルたちを撃退し喜んでいるであろうニンゲン共。そこにサキュバス達が現れすべてをひっくり返す様を見るため、564番コアはモニターを切り替えた。



  #Side ワタル


「へぇ、これが『襲撃イベント』ですか」


 帝都で教えてもらったウサギと戯れるだけという変なダンジョン。そこを取り仕切る女冒険者コンビ、レンニューとイチゴに案内されて『ウサギの休憩所』にやってきたワタル。

 ハクから「なかなか面白そうなダンジョンですよ」と言われていて気になっていたところを誘われたので、ホイホイついてきてしまっていたのだ。

 で、ワタルは今回戦闘を見学していた。より正確に言うなら、横取りしないように見ていた。


「そうだよ勇者様。まぁこうして襲撃されるわけだが……参考になったかい?」

「ええまあ。それにしても襲撃イベントって誰が言い始めたんですか?」

「たしかイチゴが言い始めたんじゃなかったか? 襲撃イベントって。まぁ確かに催し物(イベント)っぽいところあるもんなこれ」

「えと、そ、そうでしたっけ? 覚えてないです……私も誰かから聞いた、んですよ?」


 と、まだ怯えるウサギを抱えつつイチゴが言う。ワタルは、それはもしやケーマでは……と、1ヶ月前に「仕事がある」と別れたケーマを思い出す。あり得る。すごく。


「しかし今回のは結構デカかったな……スケルトンとガーゴイルの後、今度はいきなりガーゴイル40体もだなんてね」

「や、やっぱり、中の人の強さが反映されてる、んじゃ、ないでしょうか……っ」

「そうだねぇ。今回勇者様が居るもんね」

「えっ、僕のせいですか? なんかすみません」

「あ、その、ち、違う。勇者様が悪いって言ってるわけじゃなくて、その、勇者様の力があまりにも強大だからそれに影響されているんじゃないかって話なんだ。こっちこそ気を悪くしたなら謝るよ。ごめんなさい」


 と、ワタルは冗談で軽く言ったつもりだったのが、レンニューに本気で頭を下げられてしまった。

 はぁ、とワタルは軽くため息を吐く。するとレンニューはため息に反応してびくっと震えた。これで、一流の冒険者――いや、一流の冒険者だからなのかもしれない。優秀な冒険者というものは、普通は力の差に敏感なものなのだ。


「ど、ドゲザした方が良いか? 脱ぐか?」

「いえいえいえ、しなくていいですって。全然気にしてませんから。ほら、もっとこう気楽に行きましょう。ね?」

「ああ、勇者様の寛大な心に感謝するよ……!」


 やっぱりゴレーヌ村のようにはいかないなぁ、とワタルは思う。あの村と村長のケーマが特殊過ぎるのだろうが。ここのウサギたちはゴレーヌ村を思い出させるほどにぐいぐい「構ってー」とすり寄ってくれたが。今は襲撃で怯えてるけど。


「それで、襲撃イベントはこれで終わりなんですか?」

「いや、この子たちもまだ怯えてるし安全地帯も復活しない。次の波が来ると思っていい。……次は勇者様も参加するかい?」

「ええ、じゃあ少し参加させてもらいますか」

「なんなら全部狩ってもいいから! な、イチゴ!」

「え? え、は、はいっ! むしろガンガン狩っちゃってください!」


 と、どうぞどうぞと最前線に歩かされるワタル。すぐ目の前に襲撃者が入ってくる扉。


 権力でごり押しするみたいでこういうのは好きじゃないが、仕方ない。さっさと片付けてウサギを愛でよう。と、ワタルは剣を抜き、いつでも斬れる体勢をとる。


 そして、ギギギ、と扉が音を立てて開いた。


「あらー?」


 そこから、ネルネ――紐ビキニのような小さな服を着た――が顔を出したので、ワタルはぎょっと目を見開いた。ぬ、脱いだら凄いタイプだったのか……!?


「さ、サキュバスですっ! 敵ですっ!」


 イチゴの叫びにワタルははっとする。こんなところにネルネがいるわけが無かった。そう判断したワタルは即座にフトモモを剣で浅く切り正気を保つ。ネルネの姿が薄れ、本来のサキュバスの姿を確認。ウェストポーチにハクからもらい受けた対魅了のマジックアイテム――強心のブレスレットがあることを思い出し、装備した。

 他の冒険者たちは大丈夫だろうか? ワタルはちらりと様子を窺う。


「ふんっ! ウサギさんの格好をしたところでお前らが敵なのは誤魔化せんわ!」

「バニーガール? ハハッ本物のウサギの方が可愛いに決まってるだろ! 大きさを変えて出直してこい!」

「ぐ、ぐおぉおぉぉ、なんかあの子凄いツボなんだけど!」

「おい、正気を保て! あいつはお前の嫌いな巨乳だ。よく見ろ」

「はっ。おれはしょうきにもどった!」


 ……一部怪しい所があるが、おおむね大丈夫なようだ。

 魅了にマジックアイテム等を使わずに対抗する術は3つ。

 魅了耐性……つまり心を強く持つこと。性欲以上に他のモノに強く惹かれていること。目と耳を塞ぎサキュバスから発せられる情報を遮断すること(触れられたらアウト)。

 この3つのうち、ここにいる冒険者たちは2番目の方法で――ウサギへの愛で魅了を乗り切ったらしい。


「君たち、そんなにウサギ好きなんだ……」

「もちろんでさぁ!」

「俺なんて貯金切り崩してここに通ってますんで」

「もふもふに勝てるわけないだろ!」


 ちなみにイチゴは目をウサ耳で塞いで手で押さえていた。ウサギ獣人ならではの鉄壁防御……あれでどうやって見ているのだろうか、とてとてと歩いて後方へと下がっていく。


「まぁ、とりあえず……敵なんだよね、えい」

「ぎゃーん!?」


 とりあえず、ワタルは目の前のサキュバスをあっさり切り倒した。人間だろうと人型モンスターだろうと敵と判断したら容赦なく倒す。さすが覚悟を決めた勇者は違った。


(そうそう、今月って本業もめっちゃ忙しいんだ。ハハハ

 というわけでまだ週1更新。俺、8巻の書籍化作業が終わったらオキュラスGoでVR足フェチ動画見るんだ……)

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