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ダンジョンコアの集会

(寝過ごした。ロスタイムロスタイム……)

 光が収まると、ミカンとロクコは大きな室内にいた。

 舞踏会が開かれるような豪奢な造りだ。今年の会場は『城』という設定なのだろう。


 ただし、ドラゴンが自由に飛んで移動しても尚余裕があるほどの広さをもった部屋、そしてそれがある城など、この集会の会場以外には聞いたこともない。

 探せばどこかのコアが作っているかもしれないけど。


 そこにいる面子は相変わらずの混沌具合。目につくところを言えば、ドラゴン、ペガサス、ユニコーン。オーガに大蛇、大蛙、大ナメクジ……あとは人化していたりしていなかったりも様々で。

 それにしてもやはり龍王こと5番コアは目立つ。自身の大きさもだが、今回はその食べてる肉も半端なくデカい。あの龍王と同じくらいの大きさの『マンガ肉』とか、いったい何の動物の肉だというのか……


 とりあえずロクコは、早速目立たないように端っこに行こうと決めた。前回は屋外だったが今回は屋内。つまり壁があるのだ。

 壁は心を落ち着かせてくれる。すみっここそ至高。


「端っこに行くわよ629番」

「や、ボク友達いるし、あいさつ回りしてくるきゅよー」


 端っこに行こうとするロクコに対し、友達のコアのところに顔を出そうとするミカン、だったが、振り向いたところでピタリと固まった。


「……って、そういえば派閥変わったんだったきゅよぉ……」


 しゅん、としょぼくれるミカン。

 よりにもよって『裏切者』と名高いハクの派閥に入ってしまった。これでは今まで友達だったコアたちも、ミカンから離れていくだろう。思わずたしったしっと足踏みする。


「こーなったら、ロクコ、ハクさまの派閥のコアを紹介してほしいっきゅよ!」

「……ごめん、私も知らないの」

「えっ」

「どうもみんなハク姉さまの派閥というのは内緒にしてるから……だからミカンも今まで通り友達と会ってきたら? 内緒にして」


 それなら確かに友達に挨拶に行ける、が、しかし――


「それって実質スパイってことじゃないきゅか?」


 ――正体を隠して他の派閥に潜む。それは内通者(スパイ)ということだ。

 なるほど、だからハクは『裏切者』と呼ばれているのか……とミカンは一人で納得した。


「友達にそんなことできねーっきゅよ……つーか、誰がハクさまの派閥か分からないとか、厄介極まりないきゅね」

「言われてみればそうね。さすがハク姉さま」


 うんうんと自慢げに頷くロクコ。

 ちなみに、ロクコが目立つことによって他のコアはより隠れやすくなっている。

 ロクコは隠しようがないとはいえ、可愛い妹すら『駒』にするとは……その非情さがランキング10位以内に入る秘訣ということなのだろうか。と、ミカンは思った。


「じゃあミカンもハク姉さまの派閥だーって言うのはどうよ? その上で友達に会いに行くならスパイじゃないでしょ」

「おー。ロクコ、頭いいっきゅね。そうっきゅよ、ボクらの友情は派閥が変わったくらいで崩れたりしねーっきゅよ! ……たぶん」

「不安ね」

「……嫌われたら慰めてほしいっきゅよー」

「上手に慰める自信無いからやっぱりやめたら?」

「おうぅ……不安しかねぇきゅよ……」


 実際、ミカンの友人は気が弱い奴が多いので、『裏切者』の派閥になった、と言ったら驚いて逃げかねない。

 むしろ、その友人は大体が獣王派閥なのだ。……派閥を変えた時点でミカンは『敵』となるわけで。そうなるとさすがに友人を続けるのは難しいだろう。


「い、いちおう! 事情を説明すれば……分かってくれるきゅよぉ……たぶん!」

「事情を分かってくれたうえで、もう話しかけないでくれって言われたらどうする?」

「んきゅあああ……ろ、ロクコの意地悪ぅ。このちいさな胸が張り裂けそうっきゅよ」

「まぁいいじゃないの。私は壁際に行ってるから、ミカンはさっさと友達のとこ行ってきなさい」

「う、うん……」


 ミカンはぴょこぴょことロクコから離れて行った。

 ……ロクコがその様子を窺っていると、112番コアことイッテツがのそりとやってきた。


「よォ、ロクコ。久しぶりだなァ……何ィ見てんだァ?」

「あら112番。いやその、アレよ」

「んン? ……ウサギだなァ。知り合いかァ?」

「ええ。まぁ色々あって」


 ミカンは、友人のコア……子供の背丈くらいある大きなリスと、猫を相手に話をしている。そして、その友人たちはミカンが何か言ったのを皮切りに微妙な顔(動物なので分かりにくいが)になり、静かに離れて行った。

 しょぼくれた空気を背負って、ミカンは戻ってくる。


「だめだったきゅよぉ……」

「ご愁傷様?」

「おう、何か知らんがァ元気だせよォ?」

「うん……って第112番コアさま!? え、えと、元気出すまするきゅよ!?」

「629番、変な口調になってる」

「クカカカ! まァ詳しい事ァ知らねェが、気合いがあれば前には進めるからなァ!」


 そう言って、イッテツはベチベチと尻尾でミカンの頭を撫でた。

 少し重そうに、しかし嬉しそうに受け止めるミカン。


「ん、んきゅ! ありがとうございますっきゅよ!」

「おゥ。んじゃ、俺ァ第5番様に挨拶してくらぁ。また後でなロクコ」

「うん。またね」


 ひらひらと手を振るロクコに見送られ、のっそのっそとイッテツは歩いて行った。

 ミカンはまだ緊張が解けていないのか、ぎこちなくロクコに向き直り、尋ねる。


「な、なんで第112番コアさまが来てるきゅか!? しかも呼び捨てとかっ」

「いや、なんでって……コアの集会だからでしょ?」

「そーじゃねーっきゅよ! なんでロクコと普通に一緒にいたんきゅかぁー! ダンジョンバトルしたって言ってたじゃないきゅか!」


 なんでと言われても、偶然通りすがったのだろうけど……あとダンジョンバトルは関係あるの? と首を傾げるロクコ。


「私、112番のマスターと友達だもの。ケーマも112番と仲いいし、うん、112番とは友達なわけよ」

「うぁー。なんきゅか? ダンジョンバトルしたら友達だとでも言うんきゅか?」

「あー、それは無いわね」


 ロクコは三(すく)みの3馬鹿を頭に思い浮かべて答える。あれはダンジョンバトルしたけど、友達などでは断じて無い。

 親友宣言してるアイディこと666番コアならまだしも……である。


「んぅー、とりあえず獣王派閥のじゃない友達に会ってくるきゅよ。第112番コアさまにも励まされたし!」

「行ってらっしゃい。私は今度こそ隅っこに行ってるから」


 と、ロクコは再びミカンがぴょこぴょこ歩いていくのを見送った。

 今度の友達はローパー……触手? だった。ああいうのとも付き合いがあるのかぁ、と、ミカンの交友関係の広さに感心せざるを得ないロクコ。

 しかも今度は少し引かれたものの、派閥を超えた友情がそこにはあったようでモフモフとにゅるにゅるがひしっと抱き合っていた。


 一見捕食されているようにしか見えないが、美しい? 友情である。たぶん。


「うんうん、よかったわね629番……」


 もう大丈夫だろう、とそこまで見守ったところで今度こそ隅っこへと歩き出すロクコ。

 そこに、コツコツと足音を鳴らして、しかし身体の芯をまったくブレさせずに優雅に歩いてくるコアがいた。


 600番台のコアの中でも特に優秀で、すでに人化を果たしている。赤く長い髪は本人の気質を表しているよう。不敵な笑みを浮かべ、気を抜いたら自身の写し身である魔剣を抜いて切りかかってきそうな空気を漂わせている。


「ロクコ。久しぶり、元気にしてたかしら?」

「あら、アイディ! うん、元気にしてたわよ。アイディこそ元気だった?」

「ええ、勿論」


 666番コア。魔王派閥の寵児――アイディと名乗る、ロクコの数少ない『お友達』だった。


(書籍化作業に入ります。また週一ペースになるかと。また9割は書下ろしかと。9割5分書下ろしの可能性。

 ちなみに今月末にオーバーラップ文庫の5周年イベントだとか。色紙にケーマ描かされました)

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