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鍛冶の町コーキー 2

(未成年の飲酒は、日本では違法です。お酒を飲ませる方も罰せられます)

 で、早速近くの酒場から酒とツマミを持ち込んでの酒盛りになる。

 ドワーフの里は伊達ではない。そこらから酒の入った小樽のようなジョッキを持ったドワーフが現れてはゴゾーと乾杯をかわす。

 で、俺の他、ロクコやイチカ、ニクもしっかり巻き込まれていた。


「ご主人様ー、あれ、飲んどらんの? ほれ飲みぃや、な?」

「おいイチカ注ぐな。お前、だいぶ酔ってるな」

「そらドワーフの里やもん、酒飲まないで何飲めっちゅーねん?」


 うん、ジュース飲んでろよ。奴隷なのにフリーダムだよなイチカ。まぁいいけど。


「というかさすがゴゾーの地元。酒飲みだらけだな」

「がははは、おう、どんどん飲んでいいぞ?」

「ちょっと俺病気らしいからやめとくわ。なぁロクコ」


 と、隣にいるロクコに目をやると、ロクコはくぴくぴとジョッキを開けていた。


「ぷはぁ……にがぁい……やっぱジュースの方が美味しいと思うのよねぇ……」

「おまっ、ちょ、誰だロクコに酒飲ましたやつ!?」

「自分であります!」

「シキナてめぇか! 子供に酒飲ますな!」


 ひらひらとテーブルの向こう側で手を振るシキナを軽く睨む。


「ふぇ? ロクコ殿はハク様と同じくハイエルフで、見た目通りの年齢ではないのでは?」

「そもそもエルフとは耳の形が違うだろ、どうしてそこ間違えるんだ」

「それはそういう魔道具とかがあるに決まってるであります。自分も下に生えちゃうくらいなので、耳くらいなんとでもなるでありますよ、多分!」

「下ネタ禁止な? 残念エルフ……ひょぅ!?」


 酔っぱらっているシキナに説教をしていると、テーブルの下からもぞりと触れる感触があった。びくっと震えて椅子を引くと、ぽやりとした表情で顔を赤くしたニクがいた。

 あらためて俺の足に(すが)りつくニク。


「に、クロ? なにしてるんだ?」

「……ご主人様のにおい……」

「酔ってるな!? おい、誰だクロに酒飲ませたやつ!」

「ふぁ? これジュースじゃなかったの? あはははー」

「ロクコお前かぁああ!」


 危うく人前でニクと言うところだった。くそっ、なんということだ。正気な奴は居ないのか!?

 避難できる場所は……


「ケーマ君、こっちこっち!」


 受付嬢のアニータさん! 合法ロリおばちゃん! これで勝つる!

 俺はロクコと足にしがみついていたニクを抱えてアニータさんのところへ退避した。


「大丈夫? ケーマ君、その子たちも」

「助かりました……水貰えますか?」

「はいどうぞ……ってあらやだこれお酒だったわ。水はこっちね、こっち」


 酒もとい水を受け取り、ロクコとニクに飲ませる。俺がコップを口に近づけると、2人はそれぞれコップの端にはむっと噛みつくようにしてくぴくぴと水を飲む……なごむ。思わず撫でたくなるな。両手が塞がってなかったら撫でてたところだ。


「うぇぁ、ケーマぁ、ケーマ……んー……」

「ご主人様ぁ……おにく……すぅ……」


 そして寝落ちた。この幼女ズ息ぴったりである。

 俺は2人を休ませるべく、宿へ向かうことにした……が、そういえばまだ宿を決めてなかったように思える。


「おーい、ワタル。宿はどうする? ロクコとクロを休ませたいんだが」

「あ、宿ならゴゾーさんの実家のとなりが宿屋らしいのでそこで」

「なるほど。ゴゾー、実家はどこだ」

「お? ああ、嬢ちゃんたち潰れちまったのか。家ならすぐそこだ。おーい、ちょっと抜けるぞ。ケーマ達を案内してくらぁ」


 酒宴を抜けてきたゴゾーに案内され、ロクコとニクを担いだ俺は宿へ向かった。

 ……さっきはとっさだったけど、これゴーレムアシストなかったら絶対腰がやばいよな。幼女とはいえ2人ともなれば結構な重さである。


「そういえばゴゾーの実家は何やってるところなんだ? カンタラの実家は鍛冶屋なんだろ?」

「うちは採掘専門の冒険者してるな」


 採掘専門、ということはここの近くにも金属の塊のゴーレムが出るんだろうか?


「鉱石の採掘ポイントのあるダンジョンがあるんだ。安定して鉱石が取れるところだが、モンスターも普通に出る。つまり冒険者の仕事場ってことだ」

「へぇー、そういうのもあるのか」


 こっそりDPカタログを見る。どうやら単価の安い金属ならそういう採掘ポイントがあるようだ。採掘ポイントっていうのもダンジョンの設備なのだろう。お宝区分だった。

 安いから採掘ポイントができるのか、採掘ポイントがあるから安いのか。まぁ両方だろうな。

 俺のカタログにないだけかもしれないが、金や銀、ミスリルといった貴金属はモンスターか天然の鉱脈を探さないと無い可能性がある。


「と、ついたぞ」


 『森の蜂蜜亭』。ギルドからほどほどに近く、石造りのしっかりした3階建ての宿だ。となりの同じく石造りの2階建ての家がゴゾーの実家らしい。


「俺とロップは実家の方を使うから、ワタルとシキナとケーマ達の部屋だけとるか。4部屋だな」


 ゴゾーが宿屋の主人に挨拶しにいく。宿の主人はドワーフではなく熊耳の獣人だった。

 さすがお隣なだけあって顔なじみ、久々に顔を合わせたからか話がはずんでいるようだ。……さっさと休ませたいんだけどなぁ。

 しばらく待っているとゴゾーが頭を掻きつつ戻ってきた。


「おーいケーマ。部屋空いてなかったわ。2部屋しか取れなかった」

「なんだと……仕方ないな。じゃあワタルとシキナはゴゾーんちで寝かせてやれよ。宿はウチのパーティーで使うわ」

「……まぁあいつらは今日はあのまま飲み明かす可能性もあるからいいか」


 シキナについてはワタルに任せておけば心配ないだろ……二人とも酔っぱらってそうだけど。なんなら一線超えてもいいぞ、それを口実にワタルに押し付けられるから。

 無事に宿の部屋を確保できたので、どうやら無事ロクコとニクを休ませてやれそうだ。

 ……俺も休むか。

 ロクコ達を寝かせた隣の部屋で、俺はオフトンを広げて横になった。


  *


 目が覚めると、俺は何か柔らかいものを押し付けられていた。


「……」


 温かいそれが割と心地よかったのでそのまま二度寝を……しようとしてふと思った。このぽよぽよと柔らかいものはなんだろうかと。オフトンの感触ではない。顔に当たる感触的に……布に包まれてはいるが、中身は綿とかそういうものではないようだ。

 というかほんのり酒臭い。いや、結構酒臭い。おいまて、これ抱き着かれてないか?


 俺はもぞりと顔を上げた。


「あぅふ……くすぐったいやろぉ……くかー……」


 イチカだった。なんで俺がイチカの抱き枕にされてるんだコレ。

 混乱しそうな頭で(つと)めて冷静に考える。


 ……きっと流れとしてはこうだ。


 1、ゴゾーが宿に俺達を置いてきたことを伝言する。

 2、イチカも休もうと宿に来る。

 3、宿の主人に俺達の部屋に案内される……訂正。俺の部屋に案内される。

 4、酔っ払いイチカ、そのままオフトンIN。

 5、夜が明けて朝に至る。←今ここ。


 何か。俺とイチカが子連れの夫婦にでも見えたってのか?

 ……まぁいいか。ロクコと二人きりで寝てるよりはよっぽどマシな状況だ。

 さてどうしたものか。寝てるところを起こすのは悪いし、しっかりと抱き着かれているので身動きもとれない。


 そうだ、気付かなかったことにして二度寝しよう。


 俺はそんな素敵なアイディアを思いつき、さっきまでの体勢に戻ろうと――まて。それだと俺イチカの胸に顔うずめることになるんだけど、さすがにマズくないか? かといってこの体勢、イチカの顔を見上げるように至近距離なのも結構キツイ。


「あかぁん、もう食べられへんけどこれはウチのぉ……!」

「うわっぷ!?」


 突然むぎゅりと抱きしめられ、俺はイチカの谷間に強制的に顔を埋めさせられた。……酒臭い。けど呼吸は十分できるな。

 イチカの方からしたんだからこれは不可抗力。そもそもイチカは俺の奴隷だからおっぱいに顔を埋めてても何の問題もないんだ。よしOK。二度寝だ。


 と、目を閉じたところで、イチカがもぞもぞと体を動かした。


「ん……あれ、ん……なんや夢かぁ……巨大カレーパン……くぅ、夢なら遠慮しないで噛り付いとけば……ッ」


 おい、このタイミングで起きたのか。どうしよう、起きるか? おっぱいに顔を埋めた状態で? ……ね、寝たふりだ! すべてをやり過ごすにはここは寝過ごすのが一番だ!


「あれ……なんか抱いと……るッ?!」


 イチカがビクンと硬直するのが分かった。そりゃもう、体密着してるし心音もよく聞こえるもの。


「に、ニク先輩……や、ないわなぁ、コレ……ご、ご主人様?」


 黒髪だが俺とニクの髪はそりゃもう違う。イチカもすぐに気付いたようだ。

 さーて寝たふり寝たふり。すやすやすや。俺は寝ているぞ、だから安心して無かったことにするがいい……むしろしてくれ頼む。


「そもそもここどこや……あだだ、昨日飲み過ぎて記憶が飛んどるな……宿屋か? あれ、なんでウチご主人様と……んん?」


 イチカの鼓動が早くなるのが聞こえる。きっと混乱してるのだろう。


「…………はっ!? そうか抱き枕業務! ウチを酔わせてその勢いで!?」


 なんでそうなる!? と、ツッコミたい気持ちを抑えて俺は寝たふりを続ける。ここまで来たらもう全力で寝たふりをし続けるしかないのだ俺は。


「なんやもー。わざわざ酔わせなくても言ってくれればいつでもしたったのに。あ、でもご主人様的にはおっぱい無い方がええんかなぁ?」


 ぽふぽふと照れくさそうに言って俺の頭を撫でるイチカ。違う。そうじゃない。あと俺は足フェチだがおっぱいが嫌いなわけでもない。


「……おっと、下手に動いて寝てるご主人様を起こしちゃアカンのやった。危ない危ない。いやぁニク先輩から聞いといてよかったわー」


 そう言ってイチカは俺の頭を抱えるように、軽く抱きしめた。いやうん、どうしようコレ。


「……それ以上もなぁ、別に噛んだりせぇへんのになー……」


 なんか言ってるが難聴になるべきだろうか。

 とりあえず聞かなかったことにして寝よう。


 ちなみにこの後ニクがやってきてイチカに「ご主人様()を起こさずに抜け出す方法」を伝授して連れて出て行ったので、無事俺は何も気づかなかった。まる。


(滅多にないイチカ回。もみもみ。

 尚、宿屋の主人としてはイチカのことを「ああ、そういう奴隷か」という認識で普通に通しました。


 あと感想の、成人式の姪さんのピーディスクペンダント(穴の開いたコイン的なやつ)に「オフトン教徒になったのか」は草不可避。そして「コレ聖印」とあっさり返す姪さんに大草原不可避。

 言う方も言う方だけど返す方も返す方や。作者冥利に尽きるね。


 そして、累計15万ptと累計1億PVを達成しました。いやっほう、ありがとうございます!)


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新作、コミカライズお嬢様ですわー!!
TsDDXVyH
― 新着の感想 ―
[気になる点] ここでロクコと一緒に寝ないのがなんだかなぁ
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