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川の町ドンサマ(北)

 川の町ドンサマ。ツィーアを発ってから、ミーカンに続いて2個目の大きい町だ。


 ミーカンの時と同様に貴族用の通用門からさくっと入ると、やはり他とあまり見た目の変わらない石レンガの建物が多くある。石レンガの建物ってのは帝国全土でよくみられるそうな。

 あと、ミーカンと違ってツィーアくらいの人口密度だ。

 この町を分岐点にツィーア、帝都、パヴェーラ方面へと道が伸びており、ゴレーヌ村にあるトンネルができるまではパヴェーラからツィーアへ行く安全なルートはここを通るルートくらいしかなかったそうな。


「ところでなんで川の町なんだ?」

「ドンサマは川を挟んで2つに分かれてるんですよ。北ドンサマと南ドンサマがあり、その2つが合わさってドンサマです。2つ合わさった大きさはツィーアよりちょっと小さいくらいですね」

「2つに分かれてるのか。なんか面倒だな」


 ちなみに今入ったのは北ドンサマの北門で、南ドンサマの南門から出て帝都に向かうらしい。間を通る川は渡し舟が出ているとのこと。

 ……橋は架けないのか? モンスターでもいて架けられないとかなのだろうか。


「北と南で何か違いはあるのか?」

「僕らからしてみればそれほど違いは無いです。が、北と南ってのが住人達には大きな違いのようですよ」

「あー、区画ごとでまとまって敵対してたりするのか?」

「それほど険悪な感じではない対立といったところですね。ちなみに冒険者ギルドの支部も北と南にあります、今日は北に挨拶しに行きましょう」


 ちなみに今回も2泊だ。北ドンサマで1泊、川を渡って南ドンサマで1泊で出発にする。

 しっかし挨拶2回しなきゃダメなのか。ワタルに任せよう。


「ねぇイチカ、ここで美味しい食べ物はなにかしら」

「もちろん焼き魚やで。川魚以外には食い物に特に特色が無いからなー」

「よし、早速買ってくるのよ!」

「だめだぞ。ギルドに馬車預けてからな」


 イチカは元々だが、ロクコもだいぶ食べ物に興味があるようだ。

 ダンジョンコアは食べ物を食べなくてもいいって話だったような気もするが、メロンパン大好きな時点で今更か。まぁ娯楽としての面が強いんだろうな。

 ニクも聞き耳を立ててしっぽをパタパタしている。


「あ、今回馬車預けるのは宿の方ですよ。けどとりあえずドンサマへの配達依頼の品を納品しておきますか」

「おう、ガーショ、ギルドまで頼むぜ」


 ちなみにガーショとは御者さんの名前だそうな。ゴゾーはすっかり御者さんと仲良くなったようで名前を呼び合う仲だ。


 で、ギルドについたとたん早速魚を買いに行くイチカとロクコ。ついでに護衛と言うか荷物持ちといわんばかりにシキナも連れて行った。

 ……まぁいいけどさ、今回は荷物多いから手伝ってほしかったけどさ……俺達の分も魚買ってきてくれよ?


 収納に仕舞っていた樽をワタルとゴゾーがかついで冒険者ギルドに入る。

 俺とニク、ロップは木箱だ。……中身何が入ってるんだろ。まぁ気にしても仕方ない。割れ物ではないらしい。

 ここに荷物が多いのはやはり交通の要となっている場所だからなのだろう。


「というわけで、配達依頼です。確認お願いします」

「はい、承りました。お疲れ様ですワタル様」

「明日に南行って、そのあと帝都方面に行きます。配達依頼があれば――」

「ではこちらを――」


 さくっと納品したのちに配達の荷物を受け取る。小箱を1つ受け取り、ワタルは【収納】にそれを仕舞った。


「今回は即受け取るんだな」

「北から南への荷物は少量ですからね。帝都方面への荷物なら南のギルドに置かれているはずですし、これくらいなら【収納】にいれておけば盗まれる心配もありませんから」


 これで、明日はここに顔を出さずに南へ行けますね。とワタルは笑う。

 なるほど。今回は討伐とかの依頼は無しのようだ。まぁ2泊3日だけど真ん中の1日で川を渡る予定が入ってるもんな。


「川、まだ見てないけどそんなデカいのか?」

「水深15m、幅100mくらいですよ。なんなら走って渡れる距離です」


 いや、走って渡れるのはお前くらいだよ。


「……わたしも渡れるでしょうか?」

「無理しなくていいぞ。渡れなくて普通だと思う」

「えー、そんなことないですよね、ロップさん?」

「私は10mが限度だからね。ゴゾーは?」

「俺に川渡りができると思うか? 3mを跳び越すので限界だろ」


 それでもそのくらいは行くんだ……やっぱ冒険者って身体能力凄いもんなのかな。

 ……ニクがどれくらい渡れるかチャレンジしたそうにしっぽがパタパタしてる。


「……溺れそうになったらワタルが助けてくれよ?」

「お、ケーマさんも川渡りしてみたくなりましたか?」

「いや、俺はいいよ。クロの話な」

「いざというときのために自分がどれくらい体動かせるか知っておくのは大事ですよ、ケーマさんもやりましょう!」


 一理あるけど、わざわざ体を動かす気はない。俺もゴゾー以上に川を渡れる気がしないのだから。


 ギルドの外に出ると、丁度ロクコたちも買い物を終えて戻ってきたところだった。


「おつかれケーマ。はい、これ魚」


 はい、と俺をはじめとして他にも配っていく。鮎っぽい川魚の串焼きだ。1匹丸ごと串刺しにして塩を振って焼いたのだろう。


「お、アユじゃねぇか。サンキュー嬢ちゃん。酒に合うよなコレ」

「僕もこれ好きなんですよ。ここはパヴェーラからの行商人がよく来るのもあって塩が結構安いんですよね」


 こっちでもアユっていうのか。……まぁリンゴの時みたいなもんか。物の詳細は違っても名前は似たのが適用されてる的な。よく分からんけど。


「結構大きいな」

「そう? 宿にたまに持ち込まれる魚より小さいじゃない」


 宿に持ち込まれる魚はパヴェーラ産の海の魚だからな。鯛っぽいのやブリっぽいのと比べたらそりゃ小さいだろう。鮎としては大きい方だと思う。


「それにしても、イチカを見ると屋台の連中苦い顔して安く売ってくれたのよね。何かした?」

「まぁ昔ちょっとなー」


 したのか。


「それじゃ、今日の宿に向かいましょう。今日は『北の英雄亭』、北ドンサマの勇者と名高いオルテガさんがやってる宿です。いい宿でした。ちなみに明日は『南の英雄亭』で、オルテガさんの息子が独立して作ったところだそうですよ」

「親子で北と南に分かれてるのか。……なぁ、北と南で対立してるんだよな?」

「喧嘩の勢いで飛び出したんじゃないですかね。よく知らないですが、気になるならオルテガさんに聞いてみたらどうですか?」

「いや、そこまで気になったわけじゃないからいいよ別に」


 なんで旅の人間が旅先で親子喧嘩に介入しなきゃならんのだ。そんな面倒ごとは放置に限る。自分たちでどうにかするだろ。


 主人公じゃあるまいし、「問題があったら何でも首突っ込んで解決していく」なんてするわけないよな。



(ただし主人公である)

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